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第26章

1
城まで戻ってくると、城門のところで風夜が壁に寄り掛かり待っていた。
舞、封魔、麗玲と視線を動かし、彼は目を細める。
「……ついて来い。皆、揃ってる」
最後に封魔が掴んでいる兵士の姿を見て、何か言いたげにはしていたもののそれだけ言って踵を返す。
(……ついて行ったら怒られるかなぁ )
風夜は「皆」と言っていた。
集まっている訳は恐らくというか、確実に自分と封魔の単独行動のせいだろうというのは想像出来た。
風夜に連れられ、謁見の間に入ると一斉に視線を向けられた。
その視線に舞は少し怯んだが、それらはすぐに舞ではなく、封魔……正確には彼が今は引きずっている人物に向けられる。
「何持ってんだ?お前」
「……ああ。こいつは」
言いつつ、封魔はその手で掴まえていた兵士を放り投げ、それから莉鳳へと視線を向けた。
「……少し調べてほしいことがある。そいつをサンプルにやる」
「……わかった」
緋皇をちらりと見て、彼が頷いたのを確認した莉鳳がそう返す。
「ちょっと待って!サンプルって…… 」
「その人、神界軍の兵士じゃ……」
「……違うな。……こいつはもう…… 、かつての俺と同じ、神帝の〈駒〉だよ」
着ていた服を見て、声を上げた聖羅と聖姫にそう言った封魔の目は酷く冷たいものだった。
2
「……それで、お前が此処にいる理由は? 」
冷えた空気の中、緋皇が口を開き、舞の横で顔を俯かせていた麗玲を見る。
「前に現れた時に比べて随分大人しいみたいだが、今度は何を企んでるんだ ? 」
「何も……、企んでなんてないわ。… …私は……、何も手に入れられていなかったんだもの」
のろのろと顔を上げ、麗玲は覇気のない声で返す。
「そういえば、十人衆はあと四人残っていたな。其奴らはどうした? 」
「……わからない。私は逃がされて… …、でも、此処まで追いかけてこられて……」
そう言って、涙を零し、崩れ落ちる。
それを見て、緋皇が次に視線を向けたのは封魔と星蓮だった。
「お前達はどう思う? 」
「……消されてはいないんじゃないかしら?寧ろ、まずは利用すると思うわ 」
「つまり? 」
「……実験に使うってこと。唯一の成功例にして、最高傑作が今になっては全く言うことを聞かなくなってるもの 。……ねぇ、神帝の駒にして私兵〈神の使徒〉の元ゼロナンバーさん」
「……消されたいのか? 」
揶揄うような声で言った星蓮へ鋭い視線を向け、封魔が低い声で返す。
「……神の使徒?それのゼロナンバーって? 」
聞き覚えのない言葉に舞は聞き返す。
それに対して答えたのは封魔で、彼は不機嫌そうに莉鳳へと引き渡した兵士を指した。
「……そいつを含めた神帝が実験で作り出した私兵の集団の総称だ。ゼロナンバーっていうのは」
「数百年前、実験の成功例として封魔に付けられた番号ね。最も適合者がなかなかいなくて、当時の成功例は彼だけだった筈だけど」
「……でも、今、その実験を受けた奴がいるなら、ずっとそれが行われていたってことだろ? 」
そう口を挟んだ飛影に、星蓮が首を横に振る。
「……いえ、それはない筈よ。少なくとも、当時実験に関わっていた研究員達は、封魔が正気を取り戻し、神蘭達が新しく闘神に着任した際の最初の任務で壊滅させられているもの」
その言葉に舞は神蘭達をちらりと見た 。
「……そういえば、そんなことしたか 」
「……まぁ、壊滅させてたのは主に何処かの誰かさん一人で」
「俺達はほぼついて行ってただけというか……」
「……あの場の雰囲気に流されてたというか、寧ろ、必要以上に誰かさんが突っ走らないようにしてた気がするけど」
「俺は当時の研究の責任者と誰かさんの殺し合いと、その後、容赦無く火を放った誰かさんの記憶が強すぎて、研究資料や研究員全員を始末出来てたのかとか確認した覚えがないな」
神蘭、龍牙、白夜、鈴麗、白鬼が言いつつ、封魔へ視線を送り、それを聞いていた光鳳がジロッと封魔を見た。
「お前な……」
「……確かに確認はしなかったけど、あの資料は研究所にしかなかった筈だ 。……全て焼却したと思ってたけどな 」
「討ち漏らしでもいたんじゃないのか
。お前にしては珍しくな」
「…………」
聖波に言われて、封魔が何かを考えるような素振りをする。
「……とにかく其奴を調べれば、同じ実験を行なっているのかわかるんだろう?……莉鳳、どのくらい掛かりそうだ? 」
「まぁ、出来るだけ急ぎますよ」
緋皇の問いに、莉鳳が肩を竦めて答える。
それに莉鳳が頷き、舞達は結果が出るまで待つことになった。
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