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第19章

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魔矢が現れてから数日、別行動だった飛影達も戻ってきていた。
(風夜達が過去から持ってきた情報と魔矢が持ってきた情報は一緒だった)
その事からも情報操作をして罠にかけようとしている訳ではなかったとわかる。
(一応、先輩達にも話してはおいたけど……)
胸騒ぎがしてくる。
それがなかなか治まらず、舞は風に当たろうと城のテラスに出た。


(このまま、何も起きなければいいんだけど……)
そう思った時、僅かに話し声が聞こえてきて、下を覗くように見る。
城から出て行く三人の人物が見えて、舞は踵を返した。

花音と飛影、風夜にだけ声を掛け、気配を追っていくと三人は森の中にいた 。
(……よかった。まだ何も起きてないみたい)
そう思って息を吐いたが、三人ー神蘭 、封魔、月夜の間には緊迫した空気が流れていた。
「どけ」
「封魔、待って!話を……」
月夜を庇うようにしている神蘭を封魔が睨む。
「庇うのか?……記憶が戻っているならもうこれ以上、生かしておくことは出来ない」
「でも! 」
「邪魔をするなら……」
そう言った封魔が拳を握る。
「あっ……」
舞が思わず声を上げた時には、彼は神蘭にそれを叩きこんでいた。
「あぅ……」
打たれたところを押さえ、神蘭が崩れる。
それを押し退けると、封魔は月夜に近付いた。
「覚悟はいいな? 」
「……相変わらず、敵とみた者には容赦無いな」
そう言って苦笑する月夜に封魔が剣を振り上げる。
その背後で意識は保っていたらしい神蘭が魔矢が残していった黒い短剣を取り出すのが見えた。
「……危ない! 」
「封魔さん! 」
咄嗟に叫んだ舞と花音の声が聞こえたのか封魔は振り返った。
気付きさえすれば、彼は避けるだろう 。
舞はそう思っていたし、神蘭も思っていただろう。
実際、封魔が飛び退こうと足に力を入れたのもわかったが、その前にその足に何か黒い物が纏わり付いたのが見えた。
「ぐっ……! 」
足を封じられ、避けられなかった封魔の腹部に黒い短剣が突き刺さる。
それに動揺した神蘭が短剣から手を離したが、剣はそのまま身体の中へ消えていく。
「ぐあああああっ! 」
絶叫した封魔から溢れた光が月夜へ流れていく。
その瞬間、魔矢の笑い声が響いた。
「あーははは、よかったわね、月夜。これであなたは私から解放されただけではなく、生き返った。そして、私は ……」
絶叫の後、倒れこんだ封魔を見る。
「あなたよりずっと役に立ちそうな〈 人形〉を手に入れた」
「ちっ! 」
「させるかっ! 」
飛影と風夜が飛び出していく。
「……ふふ、遅いわ」
だが、二人が魔矢に到達する前に魔矢の術が発動し、封魔はふらりと立ち上がった。
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「……封魔! 」
「……待て!神蘭……」
声を掛けようとした神蘭を月夜が止める。
「……月夜」
「今の封魔……様は、もう……」
そう言って首を振る月夜に、舞は口を開いた。
「さっきの術は何?一体、何が起きたの?魔矢が操れるのって、亡骸って話じゃなかったの? 」
「……ああ、そうだ。…………ただ、今の術で……」
それに答えたのは飛影で、月夜と封魔を順に見た。
「……その二人の立場は入れ替わった 。……よかったな。術から解放されて生き返って」
そう言って皮肉気に笑う。
「月夜が……生き返った? 」
「待って!二人の立場が入れ替わったって、どういうこと? 」
「……封魔の〈生命〉で月夜は生き返り、失った封魔が術に堕ちたってことだ。……つまり」
「そう……、今からはこの子が私の〈 人形〉よ。……ふふ、気をつけて。力は生きていた時のままだから」
そう言った魔矢が舞達の方を指す。
それと同時に封魔の両手からエネルギー弾が放たれた。
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