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第18章

1
「…………か」
飛影、風夜、封魔と別行動になった者達を見送ってから数時間、舞は中庭で神蘭と月夜が話をしているのに気付いて身を隠した。
(何を話しているんだろう? )
耳を傾けると、二人の話し声が聞こえてくる。
「……なぁ、神蘭が言い合いしていた相手って……」
「封魔のことか? 」
「……ああ。……彼奴、何だか凄く… …恐い…… 」
「……まぁ。確かに朝の態度はあれだったが、普段はあんな奴じゃないよ」
怯えているような声の月夜に、神蘭は苦笑いした。
「普段の彼奴は、仲間想いで部下も大切にしていた。……今日は少し気が立っていたみたいだし、私もつい強く言い返してしまったから」
「……でも、彼奴は……お前を斬ろうと……」
「ん? 」
「……!! 」
月夜がポツリと呟いた言葉に、神蘭は何のことかわからない様子だったが、話を聞いていた舞はハッとして息をのんだ。
「……そうだ!俺はそれを見て……、お前を庇って……」
「ちょ、ちょっと待て!一体何の話だ !? 」
慌てたように神蘭が声を掛ける。
「私を斬ろうとした?誰が? 」
「誰って……それは……」
「待って! 」
そこで舞は隠れていた場所から飛び出した。
「舞!? 」
驚いた様子の神蘭には構わず、月夜を見据える。
「あなた、思い出したの?……ううん 、それよりその話は待って」
「舞?お前まで何言って……」
神蘭が戸惑っているのはわかったが、まだ話を聞かせる訳にはいかない。
月夜が何処まで思い出したのかわからないうえ、神蘭は全く覚えていないらしい今、断片の情報だけ与えて混乱させたくはなかった。
(せめて、風夜達が戻ってくるまでは ……)
「あら?駄目よ」
舞がそう思った時、聞こえてきたのは魔矢の声だった。
2
「ふふ、飛影達が私を探しにいったみたいだけど、灯台下暗しってやつかしら? 」
身構える舞と神蘭にゆったりとした歩調で魔矢は近付いてくる。
彼女が懐に手をやるのが見えて武器でも出してくるのかと思ったが、取り出されたのは紙の束だった。
「これにあなた達の知りたいことが書いてあるわ」
その言葉と共に投げ渡された紙の束を神蘭が拾い上げる。
それを見た彼女は目を見開いた。
「これは……、お父さんの字!? 」
そう言ったかと思うと、神蘭は束を捲り始めた。
少しの間、紙の束を捲っていた神蘭が突然力が抜けたように束を落とす。
「これって……、そんな……」
震えた声を上げる神蘭に、どんなことが書いてあったのか気になり、舞は神蘭の足元にある束を拾う。
(……神界軍上層部についての報告書 ? )
それを読み始めた舞だったが、あるページで捲っていた手を止めた。
(これって……)
そこには月夜のことが書いてある。
(月夜は魔神族のスパイだったって聞いてたけど……、これは……)
読み進めるほど、混乱しそうだった。
神蘭の父が書いたと思われる紙の束には、月夜の両親が魔神族や兵器の研究に関わっていたこと。
その研究を辞め、資料を処分しようとして神界上層部の怒りを買い、消されたこと。
それを知った月夜が魔神族に寝返ったこと。
それ以外にも神界の黒い部分が書き連ねてあった。
どんどん見ていけば、最後のページには嘆願のようなものも書かれている。その先は当時の上司だった封魔ではなく、神子だった天華達になっている。
そして、その一番最後には神蘭へのメッセージがあった。
そこにもその束の存在を封魔含めた軍や、神子以外の上層部には知られないようにと書いてあり、神蘭に全てを託すと書いてあった。
「「思い出した……」」
その時、聞こえてきた声に舞は神蘭と月夜を見る。
「……私、これに書いてあることが本当なのか月夜に確かめたくて……」
「……俺はそれで神蘭が動いているのに気付いて会いに行ったんだ」
「そこで話を聞こうとしたら、確か… …封魔が現れて、……その後の記憶がない」
「……お前はすぐに意識を落とされたからな。……そして、お前がきられそうになったのを、俺は咄嗟に庇った」
「…………」
(これが龍牙達が言っていた時の真相なの? )
二人が交互に言うのを聞いて、舞はそう思う。
それが本当だったとしても、封魔のことは責められないとも思った。
「それでこれからが本題……」
言葉を失っていた舞達に魔矢が言う。
その手にはいつの間にか黒い短剣があった。
「……これをあなた達に渡しておくわ 。これの凄い所はね、死者さえ蘇らせる力を持っている所なの。……どう? 対価は必要だけど、これを使えばもう一度やり直せるのよ」
「そんなもの……! 」
「あなたには必要ないでしょうけど、そっちの二人はどうかしら? 」
声を上げた舞に魔矢は笑う。
そして、何かに気付いて姿を消す。
そのすぐ後、彼女のいた場所に矢と風の刃が降り注いだ。
「舞ちゃん! 」
「おい!今、いたのって! 」
花音と風牙が駆けてきて、声を掛けてくる。
「うん、魔矢がいたよ」
「……封魔達は何をやってるんだ? 」
「現れただけ?他には何もされてない ? 」
聞いてくる花音に頷きながら、舞は神蘭と月夜を見る。
二人は花音と風牙に気付かれないよう 、紙の束と黒い短剣を回収していた。
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