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第17章

1
「!? 」
光輝から感じる憎悪のようなものに舞は身体を強張らせる。
(これは……)
向けられているのは自分ではない。
だが、あまりにも強く感じるそれに頭の中で警鐘が鳴る。
(今度は一体何を企んでるの? )
そう思いながら、光輝の憎悪の先を探ろうとしたが、その前に他の操られている兵士達が動き出してしまい無理だった。
「……大丈夫か? 」
背後から掛けられた飛影の声に舞は振り返る。
「まぁ、大丈夫ではあるけど、……結構難しいね」
前半は飛影に返し、後半は独り言のように呟く。
「……まだ慣れていないお前には確かに難しいかもな」
それでも聞こえていたのかそう返してきながら、飛影は向かってきた兵士に当て身をくらわせて意識を奪う。
周りを見てみれば、自分と綾、聖奈以外は襲ってくる兵士達に対して、意識を奪うのを優先しているようだった。
(私達は下がっていた方がいいかも)
そこまで経験がない為、今は一旦下がっていた方がいいかと思い、綾と聖奈にも声を掛けようと二人の方を見る。
そして、口を開こうとした時、何かが倒れるような音がして、視線を動かす 。
その先で倒れている花音の両親とその二人に近付こうとしている光輝の姿を見て、舞は慌てて走り出すとその間に割って入った。
2
「ちょっと!何してるの!? 」
本当に綺羅の術にはまっているのならただ声を掛けても無駄だとは思ったが 、そう言わずにはいられなかった。
「……退け」
「退けって、自分が何をしているのかわかってるの!? 」
「……ああ。もう一度言う。退け」
温度の感じない声で言われ、少し怯んでしまったが、退くことは出来ないと言うように首を横に振る。
「……いいんだよ。……そこをどいてくれ」
その時、背後から聞こえてきた声に肩越しに振り返ると、父の方と視線が合った。
「……あの子に私達がしてきたことを考えれば、こんなことになっても……仕方のないことなんだ」
「……そうね。……これで光輝の気が済むのなら」
「っ……、何言ってるんですか!?今の光輝は……」
「正気ではないのはわかってるよ」
「そう……、だからこそ……、光輝の本当の願いが出ているのかもしれない 」
「っ……! 」
それに言い返そうとした時、舞は衝撃と共に吹き飛ばされた。
3
「……なっ……」
何が起きたのかと思えば、此方へと手を翳している光輝がいた。
「……邪魔するな」
そう言って再び倒れている両親へと攻撃しようとする。
そして、倒れている二人はそんな光輝に動こうとはしない。
「だから、待ってってば……」
身体を起こし、その時に足に走った痛みを無視して、もう一度割り込む。
「ねぇ、本当にこれでいいの?自分の両親を傷付けて、それでいいの!? 」
そこまで言って、今度は倒れている二人を見た。
「あなた達もあなた達だよ!私は事情を知らないけど、光輝の気が済むから 、願いだからって攻撃されて、万が一のことがあったらどうするの!? 」
「そうだよ! 」
駆け寄ってきた綾が声を上げる。
「……三人に何かあったら、花音はどうするの!?弟が両親を手に掛けたとしたら、あの子がどう思うかわかるでしょう? 」
その言葉を聞き、風夜が倒れた時の花音の様子を思い出す。
(風夜であの状態だったんだもの。もし、この三人に何かあれば……)
そう思いながら、如何にかして光輝を正気に戻せないかと考える。
「そんなこと、私の知ったことじゃないよ!その二人ごとやっちゃえ! 」
綺羅の声がして、光輝が一歩踏み出した時、それを遮るように彼の足元から炎が吹き上がった。
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