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第16章

1
「ピィー、ピイイイイ」
「ん? 」
花音と光輝に薬を飲まされて数日、飛んできた白亜が何か袋を咥えているのに気付いた。
「何を咥えてるの? 」
「ピィ! 」
声を掛けると、それを差し出してきて舞は受け取る。
「……何?これ」
袋を開けてみると、少し大きめの瓶が入っていた。
「これ、どうしたの? 」
「ピィ!ピイイイイ! 」
聞くと何かを伝えるように白亜は鳴いたが、何を伝えたのかはわからない。
とりあえず薬を調べてもらった研究機関へ持っていってみることにした。
「今度はこれを調べるのか? 」
研究機関に行くと、丁度そこに莉鳳の姿があった。
「そうだけど……、何で此処にいるの ? 」
「……人使いの荒い人がいてな。この間の薬の詳細を調べるのに、此処が忙しいから手伝ってこいって言われたんだよ」
溜息をつく姿に誰が言ったのか、想像がついて舞は苦笑する。
「……まぁ、とにかく預かる。優先は俺等が飲まされた薬だから、少しは時間は掛かりそうだけどな」
「うん、宜しく」
そう返すと、舞は白亜が何処からか咥えてきた瓶を莉鳳に渡した。
2
莉鳳に預けた薬の解析が終わったと連絡があったのは、次の日の夕方だった 。
「……思ったより、早かったんだね」
「まぁ、簡易検査をしたら、気になることが出てきてな。……徹夜もして、今まで色々と調べたんだ」
欠伸を噛み殺しながら、莉鳳は手元の機械を操作してモニターに映し出す。
「……? 」
モニターには様々な数値が映し出されているが、それが何を意味しているのかわからず、説明を求めるように彼を見る。
それに短く息をついた後、莉鳳は説明を始めた。
「これは俺達の飲まされた薬と昨日持ってきた瓶の中身の成分を比べたものだ。……この二つを調べた結果、……昨日お前が持ってきたものは、俺達の飲まされた薬の効果を打ち消す成分があることがわかった」
「それって、つまり……」
「これを飲めば、俺達が飲まされた薬の効果は消える」
それを聞いて、舞は表情を明るくしたが、すぐに表情を曇らせた。
「でも、皆の分には足りないんじゃ… …」
「いや、大丈夫だろう」
「どうして? 」
「火焔達が飲まされたのは、あくまでも身体を麻痺させる薬。今では何ともないらしい」
「じゃあ、ただ先輩達が去る時間をつくる為だけに……」
「ってことだろうな」
そう言って、莉鳳は再び溜息をついた 。
「……ただ気になるのは、白亜にこの解毒薬を渡したのは誰なのか」
「……可能性としたら、先輩か光輝? 」
「可能性としたら有りだろうが、難しいだろ。そんなことをしたら、麗玲が何をするかわからない」
莉鳳の言葉は否定出来ない。
まして、二人にとっての大切なものを麗玲は掌中におさめている。
誰か協力者でもいない限りは二人には無理だと思った。
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