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第1章 時空を操る少女

1
チラシを配った数日後、聖月が店にいると数人の女性が客としてやってきた 。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
訪れた女性達を見る。彼女達には見覚えがあった。
チラシを配っていた日に、一番色々な質問をしてきて、興味がありそうにしていたグループだ。
「皆と話していてね、やっぱり興味があるってことで来てみたの」
「そうなんですか。ちょっとお待ち下さいね」
女性達に椅子に座ってもらい、人数分の紅茶を用意してから、聖月は席についた。
「それでは、今回はどういうご依頼ですか?」
「この間、色々質問したでしょう。それで私達も異世界というのに行ってみたくなったの」
「どんな世界に行きたいか、希望はありますか?」
問い掛けると、女性達は一度視線を交わし合ってから聖月を見てきた。
「希望は特にないです。初めてなのでお任せします」
「初めてでもおすすめの場所とかあります?」
言われて、聖月は近くに置いてあったファイルを開いた。
そこには今までの客が行った場所のデータが挟んである。
それは人気順になっていて、まずは最初のページを見せた。
「なら、此処はどうですか?今まで何人もの人が行っていますし、その分、この世界が安全だということもわかっています。実際、初めての方が行くことが多い世界です」
「それならそこにしようかしら」
「わかりました」
聖月はそれを聞いて何枚かの紙を取り出した。
「じゃあ、次に……。異世界に行くにあたってお願いしたいことがあります 。それを今から話すので、了承していただけるなら其々サインをお願いします」
それに女性達が頷くのを確認して、聖月は口を開いた。
「一つめは異世界へ行った後、別世界から来たということを無闇に話さないこと。二つめは現地の人と必要以上に接しないこと。この二つは自分の身を守ることにもなります。あと、これが一番お願いしたいことなんですが、行った先の物をこちらに持って帰ってくることはやめてください。これらのことを了承していただけるなら、サインして下さい」
そう言うと、女性達は一人ずつサインを始めた。
「ありがとうございます。では、次に 」
最後の一人がサインを終えたのを見て 、聖月は手続きを進めた。
「異世界へ行く日時は決まっていますか?」
「ええ。少し急なのだけど、明日とかでも大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「じゃあ、明日の午前十時にこの五人で」
「わかりました。滞在期間は?」
「明日の夕方五時に」
質問を重ねながら、聖月は書類に記入していく。
それが終わると、聖月は記入した書類を女性達に差し出し、声を掛けた。
「それでは明日十時にお待ちしています」
2
次の日、店の準備をしていると、女性達は約束していた時間の数分前にやってきた。
「今日はよろしくお願いします」
「はい」
そう声を掛けられ、聖月は頷くと女性達を店の外へと誘導した。
「それでは始めますね」
そう声を掛けて、意識を集中し始める 。
今いる世界と行く先の世界が繋がるイメージを浮かべ、力を放出していくと空間が少しずつ混じり合い始めるのを感じた。
(よし、繋がった!)
そう思うと同時に、僅かな浮遊感の後 、足が地に着いた感覚を感じた時には周囲の光景はがらりと変わっていた。
「着きました」
「えっ?もう!?」
「はい、此処が希望されていた世界です」
聖月が答えると、女性達は周囲を興味深そうに見回し始める。
「あっと言う間に着くのね」
「本当、一瞬だったわ」
驚いたように言う女性達に、聖月は小さく笑い、それから声を掛けた。
「私はここで一度戻ります。夕方五時に迎えに来ますので、それまでにはこの場所にいてください」
聖月が言うと、女性達は頷く。
それを確認した聖月は再び意識を集中させた。
再び足が地に着く感覚を感じ、聖月は元の世界へ戻ってきたことを確認し、ほっと息をついた。
一度、店の中へ戻り、次の客が来るのを待ちながら記録等の仕事をしようと踵を返しかけ、足を止める。
誰かの強い視線を感じたのだが、気配は薄い。
だが、聖月が気付いたことが向こうにも伝わったのだろう。
それが殺気へと変わる。
その瞬間、聖月は咄嗟に五メートル程先の場所へと能力を使って飛んだ。
「っ!」
着地まで上手くいかず、尻から地へおちてしまったものの、何とか立ち上がる 。
視線を動かすと、聖月がそれまでいた場所に剣を振り下ろしている青年と目があった。
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