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第1部 再会と出会いの章

1
馬車が走り出して少し経ってから、沈黙が段々息苦しくなってきて、ユウナは隣にいるレイドへと視線を向けた。
「あのっ……」
「……何ですか?」
「レイドさんは軍の人だったんですね 」
隣に座っているものの、視線は窓の外へ向けているレイドに話し掛ける。
「はい」
「私達と出会った時、傭兵だと言ったのは……」
「その方が近付きやすかったからですよ」
そう答えて、黙り込んでしまう。
それを見て、ユウナは馬車の中には自分達しかいないこと、御者との間には壁があり、会話は聞こえないだろうことを確認し、もう一度口を開いた。
「……あの、敬語外してくれませんか ?なんか話してて違和感があって」
「…………」
「ここには私達だけで、他の人はいません。今だけでもお願いします」
そう続けて頭を下げると、大きな溜息が聞こえてきた。
「……わかった。これでいいか?そのかわり、そっちも敬語を外せ。……城に行けば、お前こそ誰にでも敬語とはいかなくなる」
「……は……、うん」
「それで、何か聞きたいこともあるんじゃないか?」
「……さっきフリーの傭兵だと名乗った方が近付きやすかったと言っていたけど、もしかしてあの時」
「……ああ。どう接触しようか機会を伺っていたからな。あの襲撃はタイミングよかった」
そう言ったレイドは更に言葉を続けた 。
「ユウナが本当の王女ではないかと疑惑があってそれを確かめる為、そしてもしそうだった時の護衛として、俺は派遣されたんだ」
「私が……王女?」
「そうだ。……十四年前、事故に巻き込まれ一時的に行方不明になった第一王女……」
「それが私……?」
レイドは頷く。
「……ああ。最初に気付いたのがセルフィ王女。あの方が自分の力に近い力を感じ、ヴェルス王子にそれを伝えたんだ。王子から王にそれが伝わり、まず派遣されたのが魔法部隊」
「それがティオラさん?」
「そうだ。ティオラがまず本当に素質があるのか調べ、次に力の質を調べた 。その結果、……王族の者達と一致した」
それを聞いて思い出したのは、ジンの家族ではないという言葉と、冷たい態度をとられていたシルファの姿だった 。
2
「騙していたみたいで悪かったな」
ユウナが考えていると、不意に謝罪の言葉が聞こえてきた。
「ううん。騙されたなんて思ってないよ。レイドさんも仕事だったんでしょ
?」
「……ああ」
「……なら、仕方ないよ」
「それでも、お前達に近付く為に身分を偽った。だが」
そこまで言ってレイドは真剣な表情を向けてきた。
「フィアは違うんだ。あいつはフリーの術師なんだ。俺が一人任務につくのを知って、協力してくれただけで、俺がどんな任務を受けたかは今日まで知らなかった」
そう言うレイドに、ユウナは頷いた。
「だから、私は二人のこと、責めるつもりはないよ。助けてもらったのも事実だから。でも、フィアさんに任務の内容を今日話したってことは、本当は話したらいけないことだったんじゃないの?」
「……そうだな。それでも、頼みごとがあったから話すしかなかった」
「頼みごと?」
「ああ。あいつにはこのままギルドにいてもらう。そうすればコウやリリアのことを知ることが出来る。城にいることになるユウナにも教えられるだろ 」
その言葉を聞いて目を丸くする。
それを見て、レイドは小さく笑った。
「気になるだろ?特にコウのことは」
「……うん」
隠しても仕方ないと肯定すると、レイドはもう一度笑ってから窓の外へ視線を向けた。
「……見えてきた。あそこが城だ」
ポツリと呟くように言われ、ユウナも窓の外を見る。
まだ少し距離はあるが、確かに城のような建物が見える。
「……俺が一緒にいられるのは城門までだ。そこからはヴェルス様が案内してくれることになってる」
そう言われて頷いたが、内心は不安でいっぱいだった。
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