第1部 再会と出会いの章
1
「ん……」
「ユウナ、よかった。気がついたのね 」
意識が浮上する感覚の後、目を開けるとリリアがほっとした表情で声を掛けてきた。
「リリアさん?私、何で此処に?」
「……私達が駆けつけた時には、ユウナとコウが倒れてたの。特にコウは酷い火傷を負っていたから、すぐに病院へ運んだんだけど」
その言葉にユウナは寝ていたベッドから起き上がった。
「お兄ちゃんは!?」
「……大丈夫よ。意識はまだないけど 、命に別状はないって」
「会いに行ってもいいですか?」
自分の目でも確認したくて問い掛ける 。
「ええ。でも、その前に」
リリアがそう言い、彼女の後ろにある扉を振り返る。
開かれたその扉から一人の人物が入ってくる。
それは軍服を着たレイドだった。
「レイドさん?」
ギルドで会う時と違う姿に、ユウナは首を傾げる。
そんなユウナの前まできたレイドは膝をついた。
「私はリアフィース王国軍第一師団所属、レイド・スヴィンツ。あなたを迎えに来ました。私と共に城へ来ていただけませんか?」
どういうことかと戸惑ったように、リリアを見ると肩を竦められ、少し寂しげに笑われた。
「……ごめんね。私の悪い予感、悪いタイミングで当たっちゃったみたい」
そう言い、リリアはレイドへと視線を向ける。
「……さっきの約束、守ってよ」
「……ああ」
二人が言ってる内容はわからなかったが、レイドに促され、ユウナは部屋を出た。
2
今までとは服装も態度も違うレイドについて、病院内を歩いていく。
自分を軍属だと言い、城へと来てほしいと伝えてきた彼だったが、外というよりは病院の上の階へと上がっていく 。
彼が立ち止まったのは、一つの病室の前だった。
「……どうぞ」
事務的な声と共に扉を開け、中へと誘導される。
部屋は個室のようで、中央にあるベッドに誰かが寝ているのがわかった。
「!!お兄ちゃん!」
それがコウだと気付いて駆け寄る。
後ろからレイドが近づいてきて、口を開いた。
「もう開いたかもしれないが、治療は終えて命に別状はないそうだ。意識が戻るにはもう少し掛かるだろうという話だが、……悪いがそこまで待ってはいられない」
その言葉にユウナはレイドを見たが、彼は背を向けて扉まで歩いていく。
「……一時間だけ時間がもらえました 。時間になったら、また来ます」
そう言って出て行ったレイドを見送ると、ユウナは眠っているコウへ視線を戻した。
レイドの言葉と行動からこの一時間でコウに別れを告げるように言っているのだとわかった。
近くの椅子に座って、眠っている彼の様子を見る。
与えられた一時間の間に目が覚めるかはわからない。
今はタイムリミットの前に話せることを祈るしかなかった。
3
トントンッ
「っ!!」
目を覚まさないコウの姿を見ていてどの位の時間が経ったのか、扉を叩く音にハッとして時計を見る。
(もう時間!?)
時刻は既にレイドに案内された時間から一時間経過していた。
「入りますよ」
「……はい」
ユウナが返事を返すと、レイドが入室してくる。
彼は近付いてくると、ちらりとコウを見て溜息をついた。
「結局、意識は戻らなかったのか…… 」
「……はい」
呟くように言った言葉に頷く。
それにレイドは少し複雑な表情をしていたが、一瞬後にはその表情を消していた。
「……残念ですが、そろそろお時間です」
言葉遣いすら一兵士のものになったレイドに、ユウナはのろのろと椅子から立ち上がった。
最後にコウの顔をじっと見つめる。
言葉を交わせないのは残念だったが、逆にそれでよかったという気持ちもある。
もし言葉を交わしてしまえば、此処を離れにくくなってしまうかもしれない 。
泣いてしまうかもしれない。
そう思えばよかったかもしれないが、それでも寂しい。
「……行きましょう」
もうこれ以上はとレイドに声を掛けられる。
(……今までありがとう)
別れの言葉も再会の約束も言えなくて 、それだけ心の中で呟くと、レイドと共に部屋を出る。
そのまま病院を出ると、すぐ近くに馬車が用意してあった。
「城まで頼む」
御者に声を掛けたレイドが手を貸してくれて乗り込む。
少しして馬車はゆっくりと走り出した 。
「ん……」
「ユウナ、よかった。気がついたのね 」
意識が浮上する感覚の後、目を開けるとリリアがほっとした表情で声を掛けてきた。
「リリアさん?私、何で此処に?」
「……私達が駆けつけた時には、ユウナとコウが倒れてたの。特にコウは酷い火傷を負っていたから、すぐに病院へ運んだんだけど」
その言葉にユウナは寝ていたベッドから起き上がった。
「お兄ちゃんは!?」
「……大丈夫よ。意識はまだないけど 、命に別状はないって」
「会いに行ってもいいですか?」
自分の目でも確認したくて問い掛ける 。
「ええ。でも、その前に」
リリアがそう言い、彼女の後ろにある扉を振り返る。
開かれたその扉から一人の人物が入ってくる。
それは軍服を着たレイドだった。
「レイドさん?」
ギルドで会う時と違う姿に、ユウナは首を傾げる。
そんなユウナの前まできたレイドは膝をついた。
「私はリアフィース王国軍第一師団所属、レイド・スヴィンツ。あなたを迎えに来ました。私と共に城へ来ていただけませんか?」
どういうことかと戸惑ったように、リリアを見ると肩を竦められ、少し寂しげに笑われた。
「……ごめんね。私の悪い予感、悪いタイミングで当たっちゃったみたい」
そう言い、リリアはレイドへと視線を向ける。
「……さっきの約束、守ってよ」
「……ああ」
二人が言ってる内容はわからなかったが、レイドに促され、ユウナは部屋を出た。
2
今までとは服装も態度も違うレイドについて、病院内を歩いていく。
自分を軍属だと言い、城へと来てほしいと伝えてきた彼だったが、外というよりは病院の上の階へと上がっていく 。
彼が立ち止まったのは、一つの病室の前だった。
「……どうぞ」
事務的な声と共に扉を開け、中へと誘導される。
部屋は個室のようで、中央にあるベッドに誰かが寝ているのがわかった。
「!!お兄ちゃん!」
それがコウだと気付いて駆け寄る。
後ろからレイドが近づいてきて、口を開いた。
「もう開いたかもしれないが、治療は終えて命に別状はないそうだ。意識が戻るにはもう少し掛かるだろうという話だが、……悪いがそこまで待ってはいられない」
その言葉にユウナはレイドを見たが、彼は背を向けて扉まで歩いていく。
「……一時間だけ時間がもらえました 。時間になったら、また来ます」
そう言って出て行ったレイドを見送ると、ユウナは眠っているコウへ視線を戻した。
レイドの言葉と行動からこの一時間でコウに別れを告げるように言っているのだとわかった。
近くの椅子に座って、眠っている彼の様子を見る。
与えられた一時間の間に目が覚めるかはわからない。
今はタイムリミットの前に話せることを祈るしかなかった。
3
トントンッ
「っ!!」
目を覚まさないコウの姿を見ていてどの位の時間が経ったのか、扉を叩く音にハッとして時計を見る。
(もう時間!?)
時刻は既にレイドに案内された時間から一時間経過していた。
「入りますよ」
「……はい」
ユウナが返事を返すと、レイドが入室してくる。
彼は近付いてくると、ちらりとコウを見て溜息をついた。
「結局、意識は戻らなかったのか…… 」
「……はい」
呟くように言った言葉に頷く。
それにレイドは少し複雑な表情をしていたが、一瞬後にはその表情を消していた。
「……残念ですが、そろそろお時間です」
言葉遣いすら一兵士のものになったレイドに、ユウナはのろのろと椅子から立ち上がった。
最後にコウの顔をじっと見つめる。
言葉を交わせないのは残念だったが、逆にそれでよかったという気持ちもある。
もし言葉を交わしてしまえば、此処を離れにくくなってしまうかもしれない 。
泣いてしまうかもしれない。
そう思えばよかったかもしれないが、それでも寂しい。
「……行きましょう」
もうこれ以上はとレイドに声を掛けられる。
(……今までありがとう)
別れの言葉も再会の約束も言えなくて 、それだけ心の中で呟くと、レイドと共に部屋を出る。
そのまま病院を出ると、すぐ近くに馬車が用意してあった。
「城まで頼む」
御者に声を掛けたレイドが手を貸してくれて乗り込む。
少しして馬車はゆっくりと走り出した 。