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第1部 再会と出会いの章

1
「はっ?暗殺者に襲われた!? 」
「大丈夫だったの!? 」
次の日、昨夜あったことを話すとリリアとフィアは驚いたように声を上げた 。
「う、うん。お兄ちゃんが来てくれたから」
「だが、まさかサイガから話を聞いたその夜になんてな」
レイドが溜息をつく。
「サイガにもう少し詳細を調べてほしいと頼んではあるが、こっちが後手後手に回ってしまってるのは確かだな」
「そうだね。場合によっては、軍に事情を話して保護してもらうことも考えたほうがいいんじゃない? 」
フィアがそう言うと、コウは首を横に振った。
「いや。王族が俺達のことを何故調べているのか、わかるまではそれは出来ない」
「そうね。結局はサイガの情報待ちってことね」
ポツリと呟いたリリアに何か思いついたのか、レイドが座っていた椅子から立ち上がった。
「仕方ない。追加料金は取られるが、急いでもらうか。……サイガに連絡してくる」
「あ、私も行くよ」
ギルドを出て行こうとするレイドをフィアが追い掛けていく。
「昨日も思ったけど、よく次々と報酬が用意出来るものね。あの二人、フリーの傭兵と術師ってそんなに儲かるのかしら」
「情報屋って、高いんですか? 」
「ええ。個人で結構危険な橋を渡っていたりもするからね。一回の依頼でもわりと高額とられると思うんだけど… …」
そう返してくるリリアに、ユウナはコウを見る。
彼は二人の出て行った扉を見ていたが 、その視線に気付くと肩を竦めた。
2
早めに仕事を切り上げ、コウと買い物をしつつ家へ向かう。
その途中、人が集まっている場所があるのに気付いた。
「何かやってるのかな? 」
「さぁ……」
「ね、行ってみよう」
何だか気になって、興味無さそうなコウの腕を引く。
「おい、ユウナ! 」
「いいじゃん。今日、まだ早いでしょ 」
言いながら、街の人々が集まっているところへ行く。
集まっている人の話を聞くと、どうやら王族が街の視察に来ているようだった。
人々の間から覗き見ると、確かに一度だけ会ったことのあるヴェルスやジェイス、シルファ、セルフィの姿が見えた。
「どうやら、前に魔物に入られた時の被害がどこまで復興したのか確認しに来たみたいだな」
近くでコウが言うのを聴きながら、四人に様子を見ていてあることに気付く 。
(何だろう?……なんか……)
四人は街の人に話し掛けているが、少し違和感がある。
それが何なのか、見ているうちにその原因がわかった。
同じように話してかけている筈なのに 、ヴェルス、ジェイス、セルフィへの態度とシルファへの態度が違うように見えたのだ。
他の三人よりシルファへの態度が冷たいように感じる。
(ああ……、これは……)
それを見ながら、家族と生き別れ、叔父の家にいた五年間を思い出す。
あの生活の間、叔父の家族や他の親戚の態度はユウナに厳しかった。
それを思いだしていると、ふと視線を感じた。
誰が見ているのか視線を向けると、ヴェルスとセルフィが此方を見ている。
その二人は何か言葉を交わした後、此方へ向かってきた。
「ユウナ」
だが、ユウナの許へ来る間も二人は街の人々に声を掛けられていて、その間にユウナもコウに呼ばれる。
「もういいだろ。帰るぞ」
「えっ?でも」
「いいから!」
今度はコウがユウナの手を掴んで、引っ張ってくる。
そのまま足早に去ろうとするコウについていく途中、後ろからは呼び止めるような声が聞こえてきたが、足を止めることは出来なかった。
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