このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第1部 再会と出会いの章

1
(王族に暗殺者、異世界研究機関…… 、どうしてそんなところが私達のことを……)
家に帰ってきてからもユウナの頭の中はサイガの持ってきた情報で一杯だった。
そのせいで今開いている本の内容も全く頭に入ってこない。
それどころか、家の外から聞こえてくる物音も気になって仕方がない。
(……駄目だ。全然集中出来ない)
本を読むのを諦めて時計を見る。
いつも寝る時間に比べて少し早いが、何かにしようにも今は集中出来ないだろう。
それなら寝てしまおうとベッドに入ることにした。
「ん……」
眠ってからどの位時間が経ったのか、何だか身体が重い気がして、ユウナは目を開けた。
電気を消している為、部屋の中は暗く 、外から入ってくる僅かな光だけでほんのりと照らされている。
そんな中、近くで誰かが動く気配と僅かな光を反射し、ギラリと光った銀色を見て、ユウナは咄嗟にベッドの中から転がり出た。
その際、ベッドから床に落ちて痛みを感じたが、すぐに起き上がり、部屋から出ようと扉へ向かう。
「きゃっ!? 」
だが、辿り着く前に何かに足を取られて転倒した。
それでも何とか扉に辿り着いたが、その前に誰かに床へと押さえつけられた 。
「ん、んぅ……」
押さえつけられたうえ、口も塞がれてしまい、どうしようもなくなる。
見上げると、口元を覆い、目元しか見えない人物と視線が合う。
男か女かはわからない。
だが、素顔を完全には出していないことと暗闇の中で目立たない黒の装束、その人物が持つ短刀からこの人物が暗殺者で、何故自分を狙うのかはわからないものの、このままだと危険だということはわかった。
(どうしよう?このままじゃ……)
そう思った時、部屋の扉が叩かれる音がした。
「ユウナ、もう寝てるのか? 」
コウの声がして、もう一度扉が叩かれる。
その声を聞いた暗殺者のユウナの口元を押さえる力が強まる。
だが、ユウナも必死だった。
家で襲われた以上、此処には自分達以外にはコウしかいないのだ。
彼がこの部屋の前にいるうちにどうにか助けを求めなくてはと暴れる。
「ん、んー! 」
「……暴れないで、大人しくして」
ユウナが抵抗し始めたことで、暗殺者が声を発する。
それでも言う通りに静かにすることなど出来なかった。
「んんっー」
「静かに。そんなに死にたいの? 」
その言葉と共に、短刀を突きつけられる。
「今すぐ静かにしなさい。そうすれば後は楽に……っ……」
そこで暗殺者の言葉は止まる。
暴れているうちに少しずれた口元に当てられていた手にユウナが噛み付いたからだ。
「このっ……」
「……助けて!お兄ちゃん! 」
痛みを感じたからか、手が離れた隙にユウナは叫んだ。
「!!……入るぞ! 」
まだ扉の近くにいたのだろう、声と共に扉が開かれ、コウが飛び込んでくる

それと同時に鞘に入れられたまま振るわれた剣から、暗殺者の少女が飛び退く。
「ちっ!今回は失敗ね」
そう言って素早く踵を返し、窓を開け放ち飛び降りる。
「待てっ! 」
それを追い掛け、コウは窓から下を見下ろしたが、すぐに舌打ちして戻ってきた。
「逃げ足が速い奴だ」
そう言うと、コウは起き上がりはしたものの床に座ったままだったユウナに視線を合わせてきた。
「怪我ないか? 」
「う、うん」
頷いたものの、身体が震え出す。
「あ、あれ? 」
徐々に大きくなる震えに、自分でも戸惑っていると、コウが溜息をついた。
「行くぞ」
「えっ!?ちょっ……」
そうかと思うと、抱えられて声を掛けられる。
「ど、何処行くの? 」
「俺の部屋だ。あんなことがあった後だ。此処じゃ休めないだろ」
そう言われて、先程のことを思い出す 。
コウの言う通り、今日は自分の部屋では休みたくなかった。
18/24ページ
スキ