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第1部 再会と出会いの章

1
次の日、ユウナはコウと共に祭りの会場を訪れていた。
「すごい人だね」
「ああ。逸れるなよ」
「大丈夫だよ」
コウにそう返しながらも、ユウナはキョロキョロと辺りを見回した。
コウが言っていたように元いた世界と同じように様々な店が並び、人々はそれぞれ楽しんでいる。
中には元の世界では見ないような店もあり、物珍しさに足を止める。
気付いた時には前を歩いていたコウの姿は見えなくなっていた。
(やばい……逸れちゃった……)
内心で呟きながら、コウが進んでいったと思う方へと急ぐ。
人が多くて、なかなか見つからない。
(逸れるなって言われたのに……)
そう思いつつ、溜息をつく。
「どうしよう? 」
一応、祭りに来る前にもし逸れたらギルドへ向かうように言われてはいる。
だが、人の数が多くて、方向もよくわからなかった。
(なら、下手に動かない方がいいかも )
内心で呟いて行き交う人々の邪魔にはならなそうな、そして、コウが探しに来た時、目に付きやすそうな場所を探す。
それに集中していたユウナは、自分に近づいてくる人物に気付くのが遅れてしまう。
「!! 」
気が付いた時には目の前に一人の男が立っていて、首の後ろに手刀を入れられて気を失うまでにそう時間は掛からなかった。
2
「ん……」
すぐ近くから聞こえてくる話し声に、ユウナは目を開ける。
ゆっくりと身体を起こし視線を向けると、此方へ背を向けている男と意識を失う直前、最後に見た男が何かを話している。
見ていると、背を向けている男から何かを受け取った男が去っていき、背を向けていた男は振り返った。
その顔を隠している仮面に息をのむ。
「何だ、起きたのか」
声を掛けながら、男は背負っている大剣に手を掛け近付いてきた。
「まだ眠っていれば、その間に終わったんだがな」
引き抜かれた大剣を見て、ユウナは後退る。
「まぁ、じっとしていろ。すぐ終わる 」
「ユウナ! 」
男が大剣を振り上げた時、ユウナを呼ぶ鋭い声と共に何かが飛んでくる音がする。
男が大剣を振るい、弾き落としたのはユウナも見慣れてきた剣で、その剣が飛んできた方向を見る。
そこにはユウナを探してくれていたのだろうか、息を切らせたコウの姿があった。
「随分、見つかるのが早かったな」
「人攫いの男がそれだけ下手だったってことだろ。それより……」
手元に残していたもう一本の剣を構え直したコウが地を蹴る。
「ユウナは返してもらうぞ!」
言葉と共に斬りかかった剣は、大剣に受け止められ、そのまま鍔迫り合いになる。
「少しっ、離れてろっ! 」
「う、うん」
コウに言われ、ユウナは二人から少し距離をとる。
それを確認し、コウは一度男から距離をとると、先程投げて弾かれたもう一本の剣を拾い上げた。
二本になった剣で素早く男に連撃を浴びせる。
それを大剣で防ぎ、弾く男になかなか決定打を与えられないのか、コウの表情が歪む。
男の方は表情が見えないが、コウに対して攻めに転じる隙が見つけられないのか、今は守りに徹しているように見える。
戦闘経験どころか、武器を扱ったことすらないユウナには二人の実力が拮抗しているのか、それともどちらかが上回っているのかもわからない。
ただ、スピードや手数が多さではコウが、一撃の強さ、重さでは男の方に分があるようだった。
「はあああ! 」
「うおおっ! 」
斬りつけようとするコウの剣を受け止め、力で押そうとした男はもう一本の剣を寸前で躱す。
それでも完全には躱しきれなかったのあ、男の付けていた仮面が外れ、地へと落ちた。
「!!お前は……! 」
「えっ!? 」
その下から現れた素顔に、追撃しようとしていたのをやめて、コウが目を見開いた。
戦いを見守るしか出来ずにいたユウナもその顔を見て、声を上げずにはいられなかった。
「ジン……お兄ちゃん? 」
それはコウと同じく、五年前に生き別れになっていたもう一人の兄だった。
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