第1部 再会と出会いの章
1
「…………あれ? 」
落ちていたのだろう意識が戻る感覚の後、優奈は目を開け、見えた天井にぽつりと呟いた。
叔父に突き飛ばされ、異形の生物に捕まったところまでしか覚えていない。
(此処……何処? )
自分はどうなったのか、助かったのか 、何故ベッドに寝かされているのか。
そんな事を思っていると、扉が開く音が聞こえ、視線を向ける。
そこには優奈より一つ、二つ年上だろう少年が立っていた。
「気がついたか? 」
声を掛けつつ、近付いてくる少年を優奈はまじまじと見つめる。
何故か初めて会った気がしない。
それどころか懐かしさを感じる。
じっと見ていると、少年の切れ長の目と視線が合い、同時に優奈の記憶の中のある人物と少年が重なった。
『優奈』
『功お兄ちゃん! 』
幼い頃の記憶と重なったことで、優奈は信じられないような思いを抱きながらも口を開いた。
「功……お兄ちゃん……なの? 」
「……ああ」
数年振りに口にした呼び名に少年が頷く。
「本当に? 」
確認するように言うと、今度は頷くだけで返してくる。
その瞬間、優奈はベッドから降りると駆け寄り、その身体に抱きついていた 。
「お兄ちゃん!よかった、生きてたんだ! 」
また会えたのが嬉しくて抱きついた身体は生き別れた五年前と比べても、がっしりとしているし、背も二十センチ位は伸びている。
声も優奈が覚えているものより低いが 、それでも頭を撫でてくる手の優しさ 、温もりは記憶の中のものと変わらなかった。
2
「……落ち着いたか? 」
「う、うん」
あの後、色んな感情が混ざり、泣いてしまった優奈は恥ずかしく思いながら頷いた。
冷静になって考えると、嬉しかったとはいえ、思いっきり抱きついてしまったのが照れ臭い。
「と、ところでさ」
それを誤魔化すように口を開く。
「ん? 」
「私……、変な生き物に捕まったはずなんだけど」
「ああ。其奴なら、俺が斬った」
「斬った……? 」
それを聞いて、優奈は改めて功を見た 。
先程は気付かなかったが、彼の腰のベルトに固定されている細いものが二本ある。
「け、剣!?何でそんなもの……」
「……生きるのに必要だったからな」
言いつつ、功は其れを外し、近くの壁に立て掛ける。
「この世界《リアフィース》には魔物がいる。だから、そこで一人で生きる為には戦う力が必要だった。……俺に一番合っていたのがこの武器だ」
「一人?お父さんやお母さんは?陣お兄ちゃんや聖亜、高之くんは!? 」
その問いに功は首を横に振った。
「……わからない」
「わからない? 」
「ああ。俺もお前と同じく五年前に一緒にいたのが最後だ。……この世界に連れてこられた後、何とか隙をついて逃げたんだ。その途中で逸れたんだよ 」
「……そう……なんだ」
何とかそれだけを返し俯く。
その間にも功の話は続いていた。
「俺はその後、一人の傭兵に助けられてな。この世界のことや剣の基礎は其奴に教えてもらった。……其奴も二年前にいなくなったけどな」
「…………」
「ヴァイツ・クヴェイル。それが俺を助けてくれた傭兵の名だ。俺はこの五年間、奴の家族として、コウ・クヴェイルとして生きてきた。この世界では元の姓は名乗らない方がいいと言われたからな」
「……お兄ちゃん」
そこで優奈は口を開いた。
「私も……」
「ん? 」
「私もいいかな?その人の姓を借りても……、ユウナ・クヴェイルって名乗っていいのかな? 」
「優奈? 」
「だって、元の姓は名乗らない方がいいんでしょ?私自身で別の姓は思いつかないし、何より……、兄妹なんだか ら同じ姓がいいな」
そう返すと、功は仕方ないというように肩を竦めた。
それを見て、優奈はニッコリと笑う。
「じゃあ、今日からはユウナ・クヴェイルとして……、五年振りに家族として宜しくね、コウお兄ちゃん」
「ああ」
ユウナの言葉にコウが頷く。
それが嬉しかった。
「…………あれ? 」
落ちていたのだろう意識が戻る感覚の後、優奈は目を開け、見えた天井にぽつりと呟いた。
叔父に突き飛ばされ、異形の生物に捕まったところまでしか覚えていない。
(此処……何処? )
自分はどうなったのか、助かったのか 、何故ベッドに寝かされているのか。
そんな事を思っていると、扉が開く音が聞こえ、視線を向ける。
そこには優奈より一つ、二つ年上だろう少年が立っていた。
「気がついたか? 」
声を掛けつつ、近付いてくる少年を優奈はまじまじと見つめる。
何故か初めて会った気がしない。
それどころか懐かしさを感じる。
じっと見ていると、少年の切れ長の目と視線が合い、同時に優奈の記憶の中のある人物と少年が重なった。
『優奈』
『功お兄ちゃん! 』
幼い頃の記憶と重なったことで、優奈は信じられないような思いを抱きながらも口を開いた。
「功……お兄ちゃん……なの? 」
「……ああ」
数年振りに口にした呼び名に少年が頷く。
「本当に? 」
確認するように言うと、今度は頷くだけで返してくる。
その瞬間、優奈はベッドから降りると駆け寄り、その身体に抱きついていた 。
「お兄ちゃん!よかった、生きてたんだ! 」
また会えたのが嬉しくて抱きついた身体は生き別れた五年前と比べても、がっしりとしているし、背も二十センチ位は伸びている。
声も優奈が覚えているものより低いが 、それでも頭を撫でてくる手の優しさ 、温もりは記憶の中のものと変わらなかった。
2
「……落ち着いたか? 」
「う、うん」
あの後、色んな感情が混ざり、泣いてしまった優奈は恥ずかしく思いながら頷いた。
冷静になって考えると、嬉しかったとはいえ、思いっきり抱きついてしまったのが照れ臭い。
「と、ところでさ」
それを誤魔化すように口を開く。
「ん? 」
「私……、変な生き物に捕まったはずなんだけど」
「ああ。其奴なら、俺が斬った」
「斬った……? 」
それを聞いて、優奈は改めて功を見た 。
先程は気付かなかったが、彼の腰のベルトに固定されている細いものが二本ある。
「け、剣!?何でそんなもの……」
「……生きるのに必要だったからな」
言いつつ、功は其れを外し、近くの壁に立て掛ける。
「この世界《リアフィース》には魔物がいる。だから、そこで一人で生きる為には戦う力が必要だった。……俺に一番合っていたのがこの武器だ」
「一人?お父さんやお母さんは?陣お兄ちゃんや聖亜、高之くんは!? 」
その問いに功は首を横に振った。
「……わからない」
「わからない? 」
「ああ。俺もお前と同じく五年前に一緒にいたのが最後だ。……この世界に連れてこられた後、何とか隙をついて逃げたんだ。その途中で逸れたんだよ 」
「……そう……なんだ」
何とかそれだけを返し俯く。
その間にも功の話は続いていた。
「俺はその後、一人の傭兵に助けられてな。この世界のことや剣の基礎は其奴に教えてもらった。……其奴も二年前にいなくなったけどな」
「…………」
「ヴァイツ・クヴェイル。それが俺を助けてくれた傭兵の名だ。俺はこの五年間、奴の家族として、コウ・クヴェイルとして生きてきた。この世界では元の姓は名乗らない方がいいと言われたからな」
「……お兄ちゃん」
そこで優奈は口を開いた。
「私も……」
「ん? 」
「私もいいかな?その人の姓を借りても……、ユウナ・クヴェイルって名乗っていいのかな? 」
「優奈? 」
「だって、元の姓は名乗らない方がいいんでしょ?私自身で別の姓は思いつかないし、何より……、兄妹なんだか ら同じ姓がいいな」
そう返すと、功は仕方ないというように肩を竦めた。
それを見て、優奈はニッコリと笑う。
「じゃあ、今日からはユウナ・クヴェイルとして……、五年振りに家族として宜しくね、コウお兄ちゃん」
「ああ」
ユウナの言葉にコウが頷く。
それが嬉しかった。