第1部 再会と出会いの章
1
この襲撃を受けてどのくらいの時間が経ったのか、ユウナは何とか隙をついて、少し離れた場所まで逃げていた。
そこにあった大きな岩を盾にして、状況を見る。
魔物の数は減っているが、矢の数が尽きてしまったのか、リリアは短剣で飛び掛かってくる魔物達を相手にしている。
コウは先程、巨大な斧の一撃を受けた際に剣を一本弾かれていて、今は残っている方の剣で次々と繰り出される大剣、長刀、斧を捌くのに精一杯といった感じだった。
(私も……、私にも何か力があれば)
「きゃあ!! 」
内心で呟いた時、リリアの悲鳴が聞こえた。
「リリアさん! 」
魔物にのしかかられている彼女を見て 、ユウナは岩の影から飛び出す。
「このっ……」
走る勢いのまま、リリアの上にいた魔物に体当たりして何とか退かす。
「グルルルッ」
それに怒ったのか、魔物が唸り声を上げ、ユウナへ飛び掛かってくる。
「っ! 」
迫ってくる爪にもう駄目だと思った時 、ヒュンッと何かが飛んでくる音がして、その魔物に短剣が突き刺さった。
「ごめん。最後の一匹に油断したわ」
目の前で地に伏した魔物を呆然と見ていると、リリアのそんな声が聞こえてくる。
周囲を見れば、確かに今倒れたのが最後の一匹だった。
魔物がいなくなったのはいいが、それでもまだ危機は去っていないと、コウの方を見る。
いつの間にか弾かれていたはずの剣を彼はその手に取り戻していたが、状況はよくなかった。
2
頭上で交差させている二本の剣に、大剣、長刀、斧が振り下ろされ、火花が散っているのがわかる。
コウは今は耐えているが、どのくらいもつかはわからない。
「リリアさん!お兄ちゃんが! 」
「わかってる。けど……」
矢が残っていたのなら、リリアも援護出来たのだろう。
だが、使い切ってしまい、今は短剣しかない彼女にはあそこに割って入ることは出来ないようだった。
(でも、このままじゃ……)
三本を受けたまま、コウが膝をつく。
(何とかしなきゃ、何とか……)
そう思いながらもどうすればいいかわからない。
そんなユウナの耳に聞いたことのない少女の声が聞こえ、ユウナとリリアの横を誰かが駆け抜けていったのはその時のことだった。
「私に任せて! 」
「えっ!? 」
声と共にコウを除いた三人の足下から火が立ち上る。
それを飛び退いて避けた三人の内、長刀を持った男に、ユウナ達の横を駆け抜けていったのだろう少年が斬りかかったのが見えた。
3
「えっ!?ええっ!? 」
どんどん変わっていく状況についていけなくなってきて、ユウナは思わず声を上げる。
その間に駆け寄ってくる音と再び少女の声が聞こえてきた。
「大丈夫ですか? 」
「え、ええ。ところで、あなたは? 」
「話はまた後で。今は」
答えたリリアにそう言って、少女は前方へ視線を動かす。
つられるようにユウナも視線を動かしたが、その先にはいつの間にかコウと助けに入った少年の姿しかなかった。
「……相変わらず、逃げるのは早い奴等だ。……ユウナ、リリア、大丈夫か?」
「ええ、平気よ」
「お兄ちゃんこそ、大丈夫? 」
「ああ。……あの状況のままだったら 、わからなかったけどな」
そう言って、コウは助けに入った少年と少女を見た。
「お前達は? 」
「私はフィア・アイルツ。フリーの術師よ」
「レイド・スヴィンツ。フリーの傭兵だ」
「私とレイドは幼馴染なの。一緒に旅をしているんだ」
「……そうか。助かった」
コウが言うと、フィアはにっこりと笑った。
「たまたま通りかかったから、手出ししちゃったけど、お節介じゃなかったみたいだね」
「はい。助けてくれて、ありがとうございました」
改めて礼を言い、ユウナはフィアとレイドに頭を下げる。
(もし、二人が来なかったら……)
その時のことを考えると、身体が震えそうになる。
きっとあのままだったら、コウは斬られていただろうし、彼が倒れてしまっていたら、自分達もここにいなかっただろう。
そう思うと、二人には感謝の言葉しかなかった。
この襲撃を受けてどのくらいの時間が経ったのか、ユウナは何とか隙をついて、少し離れた場所まで逃げていた。
そこにあった大きな岩を盾にして、状況を見る。
魔物の数は減っているが、矢の数が尽きてしまったのか、リリアは短剣で飛び掛かってくる魔物達を相手にしている。
コウは先程、巨大な斧の一撃を受けた際に剣を一本弾かれていて、今は残っている方の剣で次々と繰り出される大剣、長刀、斧を捌くのに精一杯といった感じだった。
(私も……、私にも何か力があれば)
「きゃあ!! 」
内心で呟いた時、リリアの悲鳴が聞こえた。
「リリアさん! 」
魔物にのしかかられている彼女を見て 、ユウナは岩の影から飛び出す。
「このっ……」
走る勢いのまま、リリアの上にいた魔物に体当たりして何とか退かす。
「グルルルッ」
それに怒ったのか、魔物が唸り声を上げ、ユウナへ飛び掛かってくる。
「っ! 」
迫ってくる爪にもう駄目だと思った時 、ヒュンッと何かが飛んでくる音がして、その魔物に短剣が突き刺さった。
「ごめん。最後の一匹に油断したわ」
目の前で地に伏した魔物を呆然と見ていると、リリアのそんな声が聞こえてくる。
周囲を見れば、確かに今倒れたのが最後の一匹だった。
魔物がいなくなったのはいいが、それでもまだ危機は去っていないと、コウの方を見る。
いつの間にか弾かれていたはずの剣を彼はその手に取り戻していたが、状況はよくなかった。
2
頭上で交差させている二本の剣に、大剣、長刀、斧が振り下ろされ、火花が散っているのがわかる。
コウは今は耐えているが、どのくらいもつかはわからない。
「リリアさん!お兄ちゃんが! 」
「わかってる。けど……」
矢が残っていたのなら、リリアも援護出来たのだろう。
だが、使い切ってしまい、今は短剣しかない彼女にはあそこに割って入ることは出来ないようだった。
(でも、このままじゃ……)
三本を受けたまま、コウが膝をつく。
(何とかしなきゃ、何とか……)
そう思いながらもどうすればいいかわからない。
そんなユウナの耳に聞いたことのない少女の声が聞こえ、ユウナとリリアの横を誰かが駆け抜けていったのはその時のことだった。
「私に任せて! 」
「えっ!? 」
声と共にコウを除いた三人の足下から火が立ち上る。
それを飛び退いて避けた三人の内、長刀を持った男に、ユウナ達の横を駆け抜けていったのだろう少年が斬りかかったのが見えた。
3
「えっ!?ええっ!? 」
どんどん変わっていく状況についていけなくなってきて、ユウナは思わず声を上げる。
その間に駆け寄ってくる音と再び少女の声が聞こえてきた。
「大丈夫ですか? 」
「え、ええ。ところで、あなたは? 」
「話はまた後で。今は」
答えたリリアにそう言って、少女は前方へ視線を動かす。
つられるようにユウナも視線を動かしたが、その先にはいつの間にかコウと助けに入った少年の姿しかなかった。
「……相変わらず、逃げるのは早い奴等だ。……ユウナ、リリア、大丈夫か?」
「ええ、平気よ」
「お兄ちゃんこそ、大丈夫? 」
「ああ。……あの状況のままだったら 、わからなかったけどな」
そう言って、コウは助けに入った少年と少女を見た。
「お前達は? 」
「私はフィア・アイルツ。フリーの術師よ」
「レイド・スヴィンツ。フリーの傭兵だ」
「私とレイドは幼馴染なの。一緒に旅をしているんだ」
「……そうか。助かった」
コウが言うと、フィアはにっこりと笑った。
「たまたま通りかかったから、手出ししちゃったけど、お節介じゃなかったみたいだね」
「はい。助けてくれて、ありがとうございました」
改めて礼を言い、ユウナはフィアとレイドに頭を下げる。
(もし、二人が来なかったら……)
その時のことを考えると、身体が震えそうになる。
きっとあのままだったら、コウは斬られていただろうし、彼が倒れてしまっていたら、自分達もここにいなかっただろう。
そう思うと、二人には感謝の言葉しかなかった。