第1部 再会と出会いの章
1
「……そう。王族直属の術師が」
ギルドでコウを待っている間、リリアに話をすると彼女はそう呟いた。
「それで話しかけられただけ?他には何もされなかったの? 」
「何もされてはいませんけど……、ただ」
リリアに聞かれ、そう答えながらティオラに触ってほしいと言われた玉のことを思い出す。
「何だかわからないけど、触ってほしいって言われた玉がありましたけど」
「!……それって、どんな玉!?もう少し詳しく」
「えっと、確か……十五センチ位の透明な玉で、私が触ったら色々な色で光っていました」
その時のことを思いだし、光を放っている時は綺麗だったなどと思っていると、何故かリリアの表情は険しくなった。
「どういうこと? 」
「えっ? 」
「あなた、コウと兄妹なのよね。彼と時期はずれてるけど、同じ世界から来たのよね」
「は、はい」
何故、そんなことを聞くのかと思いつつ、ユウナは頷く。
すると、今度は彼女の表情は困惑したものになった。
「どういうことなのかしら?別世界から来たユウナが多属性持ちなんて…… 。コウと兄妹なら、彼と同じく素質なんてないはず……」
そこまで言って、リリアははっとしたように言葉を止めた。
「……ごめん。今の忘れて」
「えっ……」
「いいから、忘れて。きっと私の考え過ぎだから」
「……はい」
リリアの言葉にユウナは彼女が何を言おうとしていたのか気になりながらも頷く。
その時、ギルドへ来訪者が訪れたことを知らせるベルが鳴った。
「はーい」
返事をしてカウンターへ向かうリリアにユウナもついていく。
そこにいたのは、一人の若い女性だった。
「ご依頼ですか? 」
「ええ、実は……」
女性が依頼の内容を話し始める。
女性の依頼は、街の外にある薬草の採取で、急いでほしいというものだった 。
それに対して、リリアが少し困ったような表情をする。
「急ぎ……ですか」
「あの、無理ですか? 」
「どのくらい急ぎなのかにもよりますね。実はこのギルドには薬草に詳しい者がいなくて、いつも他のギルドから人員を借りてくるか、依頼者を護衛するという形でお受けしているんです。ですが……」
「私は行けません。すぐに戻って、母を看病しないと」
「うーん。他ギルドから人員を借りるとなると、早くても二日は待っていただかないとなのですが」
「そんな……」
「あの……」
そこまで聞いて、ユウナは口を挟んだ 。
「ご依頼ですか? 」
「ええ、実は……」
女性が依頼の内容を話し始める。
女性の依頼は、街の外にある薬草の採取で、急いでほしいというものだった 。
それに対して、リリアが少し困ったような表情をする。
「急ぎ……ですか」
「あの、無理ですか? 」
「どのくらい急ぎなのかにもよりますね。実はこのギルドには薬草に詳しい者がいなくて、いつも他のギルドから人員を借りてくるか、依頼者を護衛するという形でお受けしているんです。ですが……」
「私は行けません。すぐに戻って、母を看病しないと」
「うーん。他ギルドから人員を借りるとなると、早くても二日は待っていただかないとなのですが」
「そんな……」
「あの……」
そこまで聞いて、ユウナは口を挟んだ 。
「ユウナ? 」
「私、薬草について独学だけど、勉強しているんです。資料も持っているし 、もしかしたらわかるかもしれません 」
「本当? 」
女性がそう返してくる。
「はい。どんな薬草か教えてもらえれば」
そう言い、少しまってもらえないか伝えて、自分が勉強に使っている本などを取りに行く。
それを広げて、女性に見せると、数ページ捲ったところで女性はその手を止めた。
「これです!これ」
そう言った女性が指したのは、小さな白い花のついた植物だった。
2
「それでお前を連れてそのティアル草を採りに行くことになったのか」
「うん、ごめんね。お兄ちゃん、帰ってきたばかりだったのに」
「……まぁ、それはいいさ」
「そうよ。忙しい時なんかは三つ、四つの依頼をこなすこともあるんだから 」
「でも……」
「そもそも、ユウナが他の人に護衛を頼んだとしても、コウは後から追いかけてきたと思うけど」
「ううっ……」
自分が行くことを決めた以上、彼が休んでくれることはなかったのだと言われて、ユウナは肩を落とした。
(これじゃあ、お兄ちゃんを助けるどころか迷惑……)
「おい、この辺りじゃないのか? 」
聞こえたコウの声に我に返る。
周囲を見ると、資料の中でそのティアル草が生えていると書かれていた場所だった。
「そ、そうだね。この辺りに咲いているはず……」
そう言い辺りを見回すと、白いものが見えた気がした。
「あった!彼処に咲いてるよ! 」
見つけたと駆け出そうとして、その手をコウに掴まれる。
「待て!ユウナ! 」
「囲まれてるわね」
「ああ」
背負っていた弓にリリアが矢をつがえ 、コウが剣の柄に手を掛ける。
「!! 」
二人を見て、ユウナも顔を強張らせた次の瞬間、ユウナ達の周りには狼のような魔物が十数匹と仮面を付けた者が三人現れていた。
「……魔物の方は数が厄介ね。仮面の奴等の方は」
リリアが呟くのを聞きながら、ユウナも視線を向ける。
一人は既に何度か襲ってきた男らしく大剣を手にしている。他の二人は、一人が長刀、もう一人は巨大な斧を手にしていた。
「……コウ、三対一でいける? 」
「……この状況じゃ、やるしかないだろ。お前こそ、あの数で大丈夫か? 」
「やるしかないんでしょ? 」
「ああ。……ユウナのことも任せるぞ 」
「……わかってる」
リリアがそう返したのを聞いて、コウは地を蹴る。
リリアはユウナを庇うように立つと、魔物達に向けて牽制するように矢を放った。
「……そう。王族直属の術師が」
ギルドでコウを待っている間、リリアに話をすると彼女はそう呟いた。
「それで話しかけられただけ?他には何もされなかったの? 」
「何もされてはいませんけど……、ただ」
リリアに聞かれ、そう答えながらティオラに触ってほしいと言われた玉のことを思い出す。
「何だかわからないけど、触ってほしいって言われた玉がありましたけど」
「!……それって、どんな玉!?もう少し詳しく」
「えっと、確か……十五センチ位の透明な玉で、私が触ったら色々な色で光っていました」
その時のことを思いだし、光を放っている時は綺麗だったなどと思っていると、何故かリリアの表情は険しくなった。
「どういうこと? 」
「えっ? 」
「あなた、コウと兄妹なのよね。彼と時期はずれてるけど、同じ世界から来たのよね」
「は、はい」
何故、そんなことを聞くのかと思いつつ、ユウナは頷く。
すると、今度は彼女の表情は困惑したものになった。
「どういうことなのかしら?別世界から来たユウナが多属性持ちなんて…… 。コウと兄妹なら、彼と同じく素質なんてないはず……」
そこまで言って、リリアははっとしたように言葉を止めた。
「……ごめん。今の忘れて」
「えっ……」
「いいから、忘れて。きっと私の考え過ぎだから」
「……はい」
リリアの言葉にユウナは彼女が何を言おうとしていたのか気になりながらも頷く。
その時、ギルドへ来訪者が訪れたことを知らせるベルが鳴った。
「はーい」
返事をしてカウンターへ向かうリリアにユウナもついていく。
そこにいたのは、一人の若い女性だった。
「ご依頼ですか? 」
「ええ、実は……」
女性が依頼の内容を話し始める。
女性の依頼は、街の外にある薬草の採取で、急いでほしいというものだった 。
それに対して、リリアが少し困ったような表情をする。
「急ぎ……ですか」
「あの、無理ですか? 」
「どのくらい急ぎなのかにもよりますね。実はこのギルドには薬草に詳しい者がいなくて、いつも他のギルドから人員を借りてくるか、依頼者を護衛するという形でお受けしているんです。ですが……」
「私は行けません。すぐに戻って、母を看病しないと」
「うーん。他ギルドから人員を借りるとなると、早くても二日は待っていただかないとなのですが」
「そんな……」
「あの……」
そこまで聞いて、ユウナは口を挟んだ 。
「ご依頼ですか? 」
「ええ、実は……」
女性が依頼の内容を話し始める。
女性の依頼は、街の外にある薬草の採取で、急いでほしいというものだった 。
それに対して、リリアが少し困ったような表情をする。
「急ぎ……ですか」
「あの、無理ですか? 」
「どのくらい急ぎなのかにもよりますね。実はこのギルドには薬草に詳しい者がいなくて、いつも他のギルドから人員を借りてくるか、依頼者を護衛するという形でお受けしているんです。ですが……」
「私は行けません。すぐに戻って、母を看病しないと」
「うーん。他ギルドから人員を借りるとなると、早くても二日は待っていただかないとなのですが」
「そんな……」
「あの……」
そこまで聞いて、ユウナは口を挟んだ 。
「ユウナ? 」
「私、薬草について独学だけど、勉強しているんです。資料も持っているし 、もしかしたらわかるかもしれません 」
「本当? 」
女性がそう返してくる。
「はい。どんな薬草か教えてもらえれば」
そう言い、少しまってもらえないか伝えて、自分が勉強に使っている本などを取りに行く。
それを広げて、女性に見せると、数ページ捲ったところで女性はその手を止めた。
「これです!これ」
そう言った女性が指したのは、小さな白い花のついた植物だった。
2
「それでお前を連れてそのティアル草を採りに行くことになったのか」
「うん、ごめんね。お兄ちゃん、帰ってきたばかりだったのに」
「……まぁ、それはいいさ」
「そうよ。忙しい時なんかは三つ、四つの依頼をこなすこともあるんだから 」
「でも……」
「そもそも、ユウナが他の人に護衛を頼んだとしても、コウは後から追いかけてきたと思うけど」
「ううっ……」
自分が行くことを決めた以上、彼が休んでくれることはなかったのだと言われて、ユウナは肩を落とした。
(これじゃあ、お兄ちゃんを助けるどころか迷惑……)
「おい、この辺りじゃないのか? 」
聞こえたコウの声に我に返る。
周囲を見ると、資料の中でそのティアル草が生えていると書かれていた場所だった。
「そ、そうだね。この辺りに咲いているはず……」
そう言い辺りを見回すと、白いものが見えた気がした。
「あった!彼処に咲いてるよ! 」
見つけたと駆け出そうとして、その手をコウに掴まれる。
「待て!ユウナ! 」
「囲まれてるわね」
「ああ」
背負っていた弓にリリアが矢をつがえ 、コウが剣の柄に手を掛ける。
「!! 」
二人を見て、ユウナも顔を強張らせた次の瞬間、ユウナ達の周りには狼のような魔物が十数匹と仮面を付けた者が三人現れていた。
「……魔物の方は数が厄介ね。仮面の奴等の方は」
リリアが呟くのを聞きながら、ユウナも視線を向ける。
一人は既に何度か襲ってきた男らしく大剣を手にしている。他の二人は、一人が長刀、もう一人は巨大な斧を手にしていた。
「……コウ、三対一でいける? 」
「……この状況じゃ、やるしかないだろ。お前こそ、あの数で大丈夫か? 」
「やるしかないんでしょ? 」
「ああ。……ユウナのことも任せるぞ 」
「……わかってる」
リリアがそう返したのを聞いて、コウは地を蹴る。
リリアはユウナを庇うように立つと、魔物達に向けて牽制するように矢を放った。