このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

1章

1
「小屋? 」
「……他には何もないわね。それに彼奴らの姿もない」
木の影から様子を窺いつつ、麗玲が言う。
「確かに下りたのは此処の筈だよね。一体何処に? 」
一つの小屋に彼等の用事があるとは思えない。
それなら何処へ消えたのだろうか。
「あの小屋、調べてみる? 」
麗玲に声を掛けて、小屋へ向かおうとする。
だが、その前に背後から伸びてきた手に強い力で引き戻された。
「なっ……? 」
「静かにしろ」
突然のことに声を掛けようとすると、聞いたことのある声がそう言ってくる 。
視線を向けると、飛影と目が合った。
「な、なんで此処に? 」
「それはこっちが聞きたいな」
驚いて声を上げると、今度はキリっとした少女の声がする。
飛影から視線を動かすと、その声の主である神蘭と、こちらに厳しい視線を向けている風夜と封魔、困ったように笑っている花音の姿を確認出来た。
2
「で、勝手に行動してこんなところに二人で来た理由は? 」
小屋から少し離れ、風夜に問い掛けられる。
その言葉に舞が麗玲とのやり取りから今までのことを話すと、花音以外の四人に重い溜息を吐かれた。
「だからって、勝手に動きすぎだよ。皆、心配してるし、私達だって慌てて追いかけてきたんだよ」
呆れたのか、何も言う気にもなれないのか、黙っている飛影達の代わりに花音が少し眉を吊り上げながら言う。
「「ご、ごめんなさい」」
珍しく怒りを見せている花音に、思わず謝罪すると、今度は彼女は悲しげな表情になった。
「……私達のこと、そんなに信じられなかった」
「そ、そんなことな……」
そこまで返し掛けて、あることに気付く。
黙っていた筈の四人がいつの間にか、こちらへ背を向けている。
よく見れば、僅かに肩が揺れていた。
(まさかっ……)
「ちょっと!何、笑ってるの!? 」
四人へと叫べば、何処か態とらしい笑みを浮かべて、風夜が最初に振り返った。
「いや、……ただ、花音に責められるのが一番効くだろうとは思っていたがあまりにも予想通りだったから、ついな」
「なっ!?だからって! 」
今だに肩を震わせている四人に何か言い返そうと口を開く。
「舞ちゃん、今、私怒ってるんだよ」
「……はい」
だが、その前に花音にそう言われて、何も言えなくなる。
それに堪え切れなくなったのか、声を出して笑い始めた飛影を睨むことしか出来なかった。
3
「……それで確認したいんだが、このまま戻るつもりは? 」
花音に怒られて数分、飛影達の笑いも止まったところで仕切り直すと言うように封魔が聞いてくる。
それに返す言葉は既に決まっている。
「ないよ」
「ないわ」
麗玲と同時に答えると、再び溜息を吐かれたが、意見を変えるつもりはない 。
「…………わかった」
そう返した封魔が一人歩き出し、小屋へ向かっていく。
「封魔……! 」
それを慌てて神蘭が追い、舞達も後を追う。
封魔に追い付いた時には、彼は小屋の扉を蹴り破っていた。
「えっ!?ちょ、ちょっと……」
そんなことをして大丈夫なのかと舞は声を上げたが、構わず中に入っていってしまう。
仕方なく続いて入っていくと、そこは本当にただの小屋のようだった。
(やっぱり、ただの小屋だったんだ)
手掛かりくらいないのかと思っていたのだが、何もなさそうだと落胆する。
「……此処だな」
そんな舞の身に封魔の声が聞こえ、何のことかと視線を向ける。
その前で封魔は床の一部を踏み抜いていた。
カチッと何かが押される音がして、床の一部が開いていく。
そこからは下へと続く階段が見えた。
「階段? 」
「この下に何かあるのか? 」
声を上げた舞と飛影に、何か覚えがあったのか、神蘭が封魔を見る。
「これ……、あの時と同じか」
「ああ」
「あの時って? 」
二人がいつの話をしているのか気になって、舞は問い掛ける。
「……私が闘神になって、前の研究所へ潜入した時だ。あの時は今回みたいに小屋ではなかったが、入口は隠されていた」
それを聞いて、舞はじっと下へと続く階段を見つめる。
舞と麗玲が追いかけてきた神の使徒達が此処に降りたのは確かだ。
神蘭の話の通りなら、今、姿の見えない彼等はこの先へ行った筈だった。




2/6ページ
スキ