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第16章

1
「……先輩……、花音先輩! 」
「……!! 」
ぼんやりとしている花音に舞が声を掛けると、我に返ったようにはっという顔をする。
「な、何? 」
「私と聖奈と綾先輩で少し訓練場を借りて、武器の使い方を練習してこようと思ってるんですけど、先輩はどうしますか? 」
「……私は、……今日はいいや」
「そうですか」
「……うん。……ちょっと今日は」
そう言ってまたぼんやりとしてしまう花音に、舞は内心溜息をついた。
(何だか、光輝と刹那と出掛けていってから元気ないけど、先輩、どうしちゃったんだろう? )
様子がおかしいといえば光輝もだったが、二人からまだ話を聞けていない。
ただ、その二人について行って刹那から、気になることを聞いたのを思い出す。
花音の家が何者かによって、隠されいたこと。
二人の様子がおかしかったのは、その中に入って戻ってきた後だったこと。
(刹那は中までついていかなかったから、何があったかまでは知らないって言ってたけど……)
そこまで考えて、訓練場が見えてきたこともあり、考えるのをやめた。
「ふぅ、疲れた」
「……何気にスパルタだよね」
言いながら舞は飛影を見る。
「訓練に付き合ってほしいっていったのは、お前達だろ」
「だからって、私達は三人なのに、其方は力を奪われてる夜天達以外って」
「……さり気なく、枷まで外そうとしていたのが約二名いたしね」
飛影から視線を動かし、舞は風夜と封魔をじと目で見た。
「……さぁ、誰のことだろうな」
「……俺には制御装置で抑えてるような力はないな」
目を逸らしつつ言う二人を睨むが、此方を見ようともしないことに諦める。
「……まぁ、いいじゃないか。……だいぶ扱いに慣れたみたいだし、それなりに実戦で使えるようになったんじゃないか」
「あとは経験を積んでいくしかないわね」
舞、綾、聖奈の様子を見て、苦笑混じりに神蘭と聖羅が言う。
「……あれだけ、スパルタでやられてて、全然ものになってなかったら、泣くよ」
そう呟いた綾に、舞は自分も同じ気持ちだと心の中で頷いた。
2
「……はい」
夕食後、舞は花音から紅茶を受け取る 。
「ありがとうございます」
「っていうか、花音が用意したの? 」
「……うん。暇だったし、光輝にも手伝ってもらったしね」
同じように受け取った綾に、答える花音の態度に何故か違和感を感じる。
その間にも花音は光輝と手分けして配っていく。
(……気のせいかな)
そう思い、喉が渇いていたこともあり紅茶を口にする。
異変が起きたのは、次の瞬間だった。
「……っ……! 」
急に身体が重くなり、次いで身体の内側から力が抜けていく。
「……何……急に……」
椅子から転げるように落ち、膝をつく 。
気付いた時には舞だけでなく、誰もが床に膝をついたり、倒れこんでいる。
「……お前……達、一体……何を、入れた? 」
その緋皇の声に誰に向けて言ったのかと視線を動かし息をのんだ。
視線の先では花音と光輝が立っている 。
「……どうして……? 」
問い掛ける舞の声は聞こえている筈だが、花音は悲しげな表情をしているだけで、光輝は視線を宙に向けていた。
「……これでいいのか? 」
誰に対してか、光輝が問い掛ける。
「……ええ、十分よ」
それに答えた声は麗玲のもので、ハッとして視線を向けると、彼女は宙に浮いたまま楽しげに見下ろしてきていた 。
「……一つ目のお願いは上出来ね」
そう言って指を弾く。
すると、何処に通じているのかはわからないが、入口のように空間が開いた 。
3
「「…………」」
麗玲の開いた空間の中へ、花音と光輝は入っていこうとする。
「……待っ……」
「……待て! 」
呼び止めようとした舞の声に、風夜の声が重なる。
それに足を止めたのは花音だけだった 。
「…………」
振り返った花音は、舞達の顔を一周するように見て目を閉じる。
「…………ごめんね」
その後、小さな声でそう呟くと、光輝の後を追って空間の中へと姿を消してしまった。
「……ふふふ」
それを確認して、空間を閉じた麗玲が笑う。
「どう?気分は?……今ならもう動けるんじゃない? 」
その言葉に身体の重さがなくなっていることに気付いて身を起こす。
それでも、身体に違和感は残っている 。
「……一体、何を飲ませたの? 」
「力を制限する薬よ。……どう?上手く力を練れないでしょう? 」
それに数人の舌打ちが聞こえる。
「それにしても、こんなに上手くいくとは思わなかったわ。……ふふ、これからが楽しくなりそうね」
そう言い麗玲は姿を消した。
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