第16章
1
「……嘘……」
朝になり、刹那に頼んで魔界から自分の家に連れてきてもらった花音は、目の前の光景に呟いた。
「……此処が家だって?空き地じゃないか。間違えたんじゃないのか? 」
「……いや、間違ってない。来たことはないが、何回か前を通ったことはあるからな」
「そうだよ。刹那くんは間違ってない 。此処に私の家がある筈なの」
「って言われてもな……」
そう返して、光輝は目の前の〈空き地 〉を見た。
「……どうして?……」
「……ん? 」
もう一度花音が呟いた時、ふと刹那が何かに気付いたようだった。
「どうした? 」
「……此処、空間の歪みがあるな」
「えっ? 」
「どういうことだ? 」
「わからない。とにかく、開いてみるぞ」
刹那が言って、空き地へと手を翳す。
すると、その空間が揺らいで、その奥に家が見えた。
「あった!私の家! 」
「姉上! 」
見えるなりその中へ花音は飛び込み、光輝が後から追い掛けてくる。
「俺は此処で空間を開いて待ってる。何かあったらすぐ戻って来いよ! 」
聞こえてきた刹那の声に一度振り返って頷くと、花音は家のドアを開いた。
「お父さん!お母さん! 」
中に向かって呼び掛けるが、返事はない。
「……留守って訳じゃないか。そもそも、家を見えなくしていた意味がわからないな」
光輝が言うのを聞きながら、奥へと進んでいき、リビングに入って足を止める。
「なっ!? 」
「お前は!? 」
そこにいた思いもしない人物を見て、花音と光輝は声を上げる。
そこにいた人物は麗玲で、花音達を見て楽しげに笑っていた。
2
「ふふ、こんにちは」
「……何故、此処に? 」
「さぁ?何でかしらね」
問い掛けた花音にまともに返さず、麗玲は笑う。
「……答えになってないな。……何故此処にいるんだ? 」
「此処にいれば、あなた達が来ると思ったの。……いいものを見せてあげようと思ってね」
そう言い、麗玲は指を弾く。
「ふふ、これ何だ? 」
「「!! 」」
空間が歪み、何処かに囚われている二人の人物が映る。
「お父さん!お母さん! 」
「……これは、どういうつもりだ? 」
「……取引よ」
そう言った麗玲は、粒のような物が入った瓶を三つ取り出した。
「この二人を助けたいなら、白い瓶を神族、黒の瓶を魔族、それ以外の奴らに青い瓶のものを飲ませなさい」
その言葉に光輝が鼻を鳴らす。
「……断る。そんな怪しいもの、誰が使うか。それに俺にとってはもう両親ではない。……俺を捨てていった奴等を助けるつもりはないな」
「と言うと思ったから、こっちも用意してあるわ」
麗玲が再び指を弾く。
すると、両親の姿は消え、今度は光の街が映る。
そこに映った街の光景は、明らかにおかしかった。
「……凍ってる……、街も……皆も… …」
映った光景に花音は呟く。
「貴様っ! 」
光輝は怒りを露わにして、麗玲を睨み付けた。
「ふふ、そんなに怒らないでよ。まだ閉じ込めてあるだけなんだから。……まぁ、時間とあなた達の決断次第なんだけどね」
「っ!! 」
「助けたい?なら、私のお願いを聞いてもらわないと」
「「……」」
「とりあえず、此れは預けておくわ。使うか使わないかはあなた達次第だけどね。ただ、……その場合はどうなるか、よく考えておいた方がいいわよ」
そう言って、麗玲は姿を消す。
そこには瓶を手に立ちつくす花音と光輝だけが残された。
「……嘘……」
朝になり、刹那に頼んで魔界から自分の家に連れてきてもらった花音は、目の前の光景に呟いた。
「……此処が家だって?空き地じゃないか。間違えたんじゃないのか? 」
「……いや、間違ってない。来たことはないが、何回か前を通ったことはあるからな」
「そうだよ。刹那くんは間違ってない 。此処に私の家がある筈なの」
「って言われてもな……」
そう返して、光輝は目の前の〈空き地 〉を見た。
「……どうして?……」
「……ん? 」
もう一度花音が呟いた時、ふと刹那が何かに気付いたようだった。
「どうした? 」
「……此処、空間の歪みがあるな」
「えっ? 」
「どういうことだ? 」
「わからない。とにかく、開いてみるぞ」
刹那が言って、空き地へと手を翳す。
すると、その空間が揺らいで、その奥に家が見えた。
「あった!私の家! 」
「姉上! 」
見えるなりその中へ花音は飛び込み、光輝が後から追い掛けてくる。
「俺は此処で空間を開いて待ってる。何かあったらすぐ戻って来いよ! 」
聞こえてきた刹那の声に一度振り返って頷くと、花音は家のドアを開いた。
「お父さん!お母さん! 」
中に向かって呼び掛けるが、返事はない。
「……留守って訳じゃないか。そもそも、家を見えなくしていた意味がわからないな」
光輝が言うのを聞きながら、奥へと進んでいき、リビングに入って足を止める。
「なっ!? 」
「お前は!? 」
そこにいた思いもしない人物を見て、花音と光輝は声を上げる。
そこにいた人物は麗玲で、花音達を見て楽しげに笑っていた。
2
「ふふ、こんにちは」
「……何故、此処に? 」
「さぁ?何でかしらね」
問い掛けた花音にまともに返さず、麗玲は笑う。
「……答えになってないな。……何故此処にいるんだ? 」
「此処にいれば、あなた達が来ると思ったの。……いいものを見せてあげようと思ってね」
そう言い、麗玲は指を弾く。
「ふふ、これ何だ? 」
「「!! 」」
空間が歪み、何処かに囚われている二人の人物が映る。
「お父さん!お母さん! 」
「……これは、どういうつもりだ? 」
「……取引よ」
そう言った麗玲は、粒のような物が入った瓶を三つ取り出した。
「この二人を助けたいなら、白い瓶を神族、黒の瓶を魔族、それ以外の奴らに青い瓶のものを飲ませなさい」
その言葉に光輝が鼻を鳴らす。
「……断る。そんな怪しいもの、誰が使うか。それに俺にとってはもう両親ではない。……俺を捨てていった奴等を助けるつもりはないな」
「と言うと思ったから、こっちも用意してあるわ」
麗玲が再び指を弾く。
すると、両親の姿は消え、今度は光の街が映る。
そこに映った街の光景は、明らかにおかしかった。
「……凍ってる……、街も……皆も… …」
映った光景に花音は呟く。
「貴様っ! 」
光輝は怒りを露わにして、麗玲を睨み付けた。
「ふふ、そんなに怒らないでよ。まだ閉じ込めてあるだけなんだから。……まぁ、時間とあなた達の決断次第なんだけどね」
「っ!! 」
「助けたい?なら、私のお願いを聞いてもらわないと」
「「……」」
「とりあえず、此れは預けておくわ。使うか使わないかはあなた達次第だけどね。ただ、……その場合はどうなるか、よく考えておいた方がいいわよ」
そう言って、麗玲は姿を消す。
そこには瓶を手に立ちつくす花音と光輝だけが残された。