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第15章

1
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
今見た光景に、誰もが声を失う。
カランッ
その時、何かが落ちる音が聞こえて、舞は視線を動かす。
そこには剣を取り落とし、茫然としている封魔がいた。
「……俺は……、一体……今、何を? 」
「……ふ、ははははは! 」
総長の笑い声に、封魔が視線を向ける 。
「よくやった!これで神子はあと三人 ……、この調子で……」
そこまで言って言葉を止めると、総長は振り下ろされた剣を受け止めた。
「……っ……!! 」
「……ふん、馬鹿め……」
「……ぐっ! 」
総長からの蹴りを受け、斬りかかっていた封魔は吹っ飛ばされる。
「…………ふっ」
その後、何かを感じ取ったのか総長が笑みを浮かべた。
「光鈴!光麗! 」
声と共に天華が入ってくる。その背後からも彼女が連れて来たのだろう、兵士達の姿があった。
「……これは……、どういうこと? 」
中の光景を目にした天華が呟く。
それに答えたのは、総長だった。
「……見たままです。封魔が暴走して光鈴様と光麗様を手に掛けた。……私が駆け付けた時には……もう……」
天華の視線が倒れている二人、それから封魔を見る。
「……捕らえて。牢に入れておきなさい」
そう言った天華は、そのまま踵を返して出て行ってしまう。
(そういえば、私も封魔の言い分は聞かなかった。それに……)
舞は総長の方へ視線を動かす。
(……総長が魔神族と繋がっていたことを知りもしなかった。……総長達が上手く立ち回っていたってこともあったけど)
前に星蓮から聞いた話を思い出す。
彼女の話を信じるなら、神帝や上層部は総長、副総長が入れ替わっていることも、封魔の事情も知っていた筈だ 。
だが、天華の記憶を思い起こしても、そんな話を聞いた覚えはなかった。
2
「…………」
牢へと入れられた封魔の様子を伺う。
彼は牢にあった簡易ベッドに座ったまま、身動きしない。
そんな様子を見ながら、舞は神蘭達の様子を見る。
此処に来てから、自分達の知らない情報を知ることになって、誰もが動揺しているようだった。
その時、段々と此方へ近付いてくる足音が聞こえてくる。
現れたのは、神界の上層部の者達だった。
「……ずいぶんと余計なことをしてくれたな」
「神子を手に掛けたこの罪、決して軽いものではないぞ」
「…………」
牢の前に来るなり、口を開く上層部に封魔は何も言い返さない。
「……まぁ、いい。このことは神帝も知っている。お前の沙汰はこれから決まる。此処でそれを待っているんだな 」
そう言って、上層部の者達は去っていったが、封魔は何の反応も見せない。
彼等が去って暫くすると、今度は総長と副総長が近付いてくるのが見えた。
「……気分はどうだ? 」
その声に封魔が動かないまま視線を向ける。
「……いいと思うか? 」
「……まぁ、よくはないでしょうね」
副総長の言葉に、封魔の視線はきつくなる。
「今度は何をしに来た? 」
「……神帝達からの伝達よ」
それが聞こえてきた舞達は、再び視線を交わし合った。
「伝達? 」
「……お前の沙汰が決まった。……お前は再び研究所送り。そこでもう一度実験に利用させてもらう」
「…………」
「今度こそ、完全に自我を消すそうよ 。……自我を無くし、完全なる兵器になり、上層部の意のままに動く。上層部や私達の意のまま、ただ逆らうものを始末する兵器に……ね」
「……そういう訳だ。……これまで以上に、我々の為に働いてもらおう」
「…………」
そう言う総長に封魔は何も返さない。
その後、再び何処かへ引っ張られる。着いた先は、何もない真っ暗い空間だった。
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