第15章
1
何度目かの場面の切り変わりの中で舞達は机と椅子、ベッド以外には小さな本棚しかない部屋にいた。
「……此処は、封魔様の私室ですね」
楓がそう呟いた時、部屋の扉が開いてふらりと封魔が入ってきた。
疲れているのか、ベッドに近付いて倒れるように横になる。
舞が近くに行き覗きこめば眠っていたが、顔色はあまりよくない。
少し視線を動かすと、時計があり二時三十分を表示していた。
「こんな時間まで起きて、何をしていたんだろ? 」
「……もしかしたら」
楓が何かを言いかけた時、アラーム音が鳴り響く。
驚いて舞が身体を震わせたのと眠ったばかりの封魔が飛び起きたのはほぼ同時だった。
「……今日は少し休めた方か……」
そう呟くと、足早に部屋を出て行く。
「……三時四十五分……って、二時間も寝てない……」
舞はもう一度時計を見る。
「……間違いありません。……今、私達がいるのは、蒼魔様達を失った後、……そして、恐らくですが……〈あの日〉の数日前……」
「あの日? 」
楓が言ったことに舞は聞き返す。
「……それって……、まさか……」
「私達が……、あの村へ行った時…… 」
覚えがあるのか、神蘭と鈴麗が呟く。
心当たりのない舞は、花音や聖奈、綾と顔を見合わせる。
聞きたい気持ちがあったが、聞かずともこのままいけば何があったのか見ることが出来るだろう。
そう思って聞かずにいれば、やはり場面が切り替わった。
2
苛ついている封魔が一人何処かへ向かっている。
見失わないようについていけば、一つの村が見えてくる。
その村は外から見ても、異常に思えた 。
「……何……、あれ……? 」
「村中を……蔓が覆ってる? 」
村を見た聖奈と綾が呟く。
「「「っ……」」」
それと同時に大きく息をのむような気配がして視線を向けると、神蘭、鈴麗 、楓が青ざめていた。
(……きっと此処で何かが起こるんだ )
そんな三人の様子を見て、舞はそう思う。
(さっきの三人が言ってた〈あの日〉……、多分、私達が今いる此処のことだ。……きっと此処が……)
足を止めてしまった神蘭達に合わせて 、舞達も止まってしまったが、前を行く封魔は村の中へ入っていってしまう 。
「……舞ちゃん、此処は私達だけで行こう」
「先輩? 」
花音が声を掛けてくる。
「……私達に過去を見せる目的はよくわからないけど、……多分、直接的な危険はないと思う。……寧ろ、此処で皆止まってしまった方が何が起こるかわからないよ」
「……そうですね」
そう返し、もう一度神蘭、鈴麗、楓を見る。
動揺している様子を見ていると、魔神族の目的は自分達に精神的な揺さ振りをかけてきているような気がしてきていた。
3
神蘭達と村の外で別れ、舞達は村の中へと入る。
「二人はついてくるんですね? 」
「私は別に待っててもよかったんだけど、聖羅が……」
「私は此処で何があったのかよく知らないから。聖姫様も、もし神帝が関わっていたなら、知らないといけないことです」
舞が聞いたことに聖姫が返してきて、聖羅は不満そうな彼女にきっぱりと言った。
「……それにしても、これってどんな状況なの? 」
「……村の人達が誰もいない。生活してたような跡はあるのに、どうなってるの? 」
村の中を見回しながら、綾と聖奈が言う。
村中が蔓に覆われて誰の姿もないのは異常でしかなかった。
「……蔓は……中央の方から伸びてきてるみたいね。……封魔が向かったのは、中央かしら? 」
蔓を辿ったのだろう聖羅が呟く。
「……行ってみる?神蘭達の様子を見た感じ、あまりいいものじゃなさそうだけど」
「……でも、まだ飛ばされないってことはこの先へ進めってことだと思うし 、……行くしかないと思います」
(……あまり行きたくない気もするんだけどね)
確認するように声を掛けてきた聖羅にはそう返したが、心の中ではそう呟いた。
4
中央まで来て、舞達は足を止めた。
そこでは過去の神蘭達を含めた何人もの兵士達が膝をついていて、封魔と一人の兵士だけが立っている。
そして、封魔の前には巨大な水晶があった。
「これを壊さない限り、退くつもりがないというなら、壊すまでのことだ」
封魔が巨大な水晶に手を向ける。
それを見て、一人立っていた兵士が何かを取り出した。
「……消し飛べ! 」
そう叫ぶと同時に巨大な水晶からエネルギーが放たれ、封魔の放ったエネルギーとぶつかり合う。
舞達は影響はないが、その余波がすごいのは見ていてわかる。
その後、少し時間が飛んだのか、気がついた時には巨大水晶は壊れていた。
封魔に連れられ戻ろうとしている神蘭達に着いていく。
村を出れば、今の神蘭達がいて、彼女達は複雑そうに過去の自分達を見た。
「……この後からだ」
「えっ? 」
「……封魔の様子がおかしくなったのは」
追いながら、神蘭が呟く。
それを聞いて、舞達はハッとする。
「それって……」
「……この後なのね。封魔が兵器化されたのは」
「……恐らくは。……この後、すぐに倒れて研究員に連れていかれましたから」
聖羅に楓がそう答える。
見ていれば、彼女が言った通り、封魔は倒れ、研究員達に連れていかれた。
何度目かの場面の切り変わりの中で舞達は机と椅子、ベッド以外には小さな本棚しかない部屋にいた。
「……此処は、封魔様の私室ですね」
楓がそう呟いた時、部屋の扉が開いてふらりと封魔が入ってきた。
疲れているのか、ベッドに近付いて倒れるように横になる。
舞が近くに行き覗きこめば眠っていたが、顔色はあまりよくない。
少し視線を動かすと、時計があり二時三十分を表示していた。
「こんな時間まで起きて、何をしていたんだろ? 」
「……もしかしたら」
楓が何かを言いかけた時、アラーム音が鳴り響く。
驚いて舞が身体を震わせたのと眠ったばかりの封魔が飛び起きたのはほぼ同時だった。
「……今日は少し休めた方か……」
そう呟くと、足早に部屋を出て行く。
「……三時四十五分……って、二時間も寝てない……」
舞はもう一度時計を見る。
「……間違いありません。……今、私達がいるのは、蒼魔様達を失った後、……そして、恐らくですが……〈あの日〉の数日前……」
「あの日? 」
楓が言ったことに舞は聞き返す。
「……それって……、まさか……」
「私達が……、あの村へ行った時…… 」
覚えがあるのか、神蘭と鈴麗が呟く。
心当たりのない舞は、花音や聖奈、綾と顔を見合わせる。
聞きたい気持ちがあったが、聞かずともこのままいけば何があったのか見ることが出来るだろう。
そう思って聞かずにいれば、やはり場面が切り替わった。
2
苛ついている封魔が一人何処かへ向かっている。
見失わないようについていけば、一つの村が見えてくる。
その村は外から見ても、異常に思えた 。
「……何……、あれ……? 」
「村中を……蔓が覆ってる? 」
村を見た聖奈と綾が呟く。
「「「っ……」」」
それと同時に大きく息をのむような気配がして視線を向けると、神蘭、鈴麗 、楓が青ざめていた。
(……きっと此処で何かが起こるんだ )
そんな三人の様子を見て、舞はそう思う。
(さっきの三人が言ってた〈あの日〉……、多分、私達が今いる此処のことだ。……きっと此処が……)
足を止めてしまった神蘭達に合わせて 、舞達も止まってしまったが、前を行く封魔は村の中へ入っていってしまう 。
「……舞ちゃん、此処は私達だけで行こう」
「先輩? 」
花音が声を掛けてくる。
「……私達に過去を見せる目的はよくわからないけど、……多分、直接的な危険はないと思う。……寧ろ、此処で皆止まってしまった方が何が起こるかわからないよ」
「……そうですね」
そう返し、もう一度神蘭、鈴麗、楓を見る。
動揺している様子を見ていると、魔神族の目的は自分達に精神的な揺さ振りをかけてきているような気がしてきていた。
3
神蘭達と村の外で別れ、舞達は村の中へと入る。
「二人はついてくるんですね? 」
「私は別に待っててもよかったんだけど、聖羅が……」
「私は此処で何があったのかよく知らないから。聖姫様も、もし神帝が関わっていたなら、知らないといけないことです」
舞が聞いたことに聖姫が返してきて、聖羅は不満そうな彼女にきっぱりと言った。
「……それにしても、これってどんな状況なの? 」
「……村の人達が誰もいない。生活してたような跡はあるのに、どうなってるの? 」
村の中を見回しながら、綾と聖奈が言う。
村中が蔓に覆われて誰の姿もないのは異常でしかなかった。
「……蔓は……中央の方から伸びてきてるみたいね。……封魔が向かったのは、中央かしら? 」
蔓を辿ったのだろう聖羅が呟く。
「……行ってみる?神蘭達の様子を見た感じ、あまりいいものじゃなさそうだけど」
「……でも、まだ飛ばされないってことはこの先へ進めってことだと思うし 、……行くしかないと思います」
(……あまり行きたくない気もするんだけどね)
確認するように声を掛けてきた聖羅にはそう返したが、心の中ではそう呟いた。
4
中央まで来て、舞達は足を止めた。
そこでは過去の神蘭達を含めた何人もの兵士達が膝をついていて、封魔と一人の兵士だけが立っている。
そして、封魔の前には巨大な水晶があった。
「これを壊さない限り、退くつもりがないというなら、壊すまでのことだ」
封魔が巨大な水晶に手を向ける。
それを見て、一人立っていた兵士が何かを取り出した。
「……消し飛べ! 」
そう叫ぶと同時に巨大な水晶からエネルギーが放たれ、封魔の放ったエネルギーとぶつかり合う。
舞達は影響はないが、その余波がすごいのは見ていてわかる。
その後、少し時間が飛んだのか、気がついた時には巨大水晶は壊れていた。
封魔に連れられ戻ろうとしている神蘭達に着いていく。
村を出れば、今の神蘭達がいて、彼女達は複雑そうに過去の自分達を見た。
「……この後からだ」
「えっ? 」
「……封魔の様子がおかしくなったのは」
追いながら、神蘭が呟く。
それを聞いて、舞達はハッとする。
「それって……」
「……この後なのね。封魔が兵器化されたのは」
「……恐らくは。……この後、すぐに倒れて研究員に連れていかれましたから」
聖羅に楓がそう答える。
見ていれば、彼女が言った通り、封魔は倒れ、研究員達に連れていかれた。