第15章
1
「離せ!……くそっ!俺も彼処に残る !……兄上達を助けないと! 」
聞こえてきたその声に、舞達は全員がハッとする。
更に距離を縮めていくと、数人に押さえつけられている封魔と此方へ背を向けている星蓮がいた。
「もう無理よ、間に合わないわ」
「そんなのわからないだろ!今すぐ戻れば! 」
「それに言ったでしょ。戻ることは諦めなさい!……私達は神帝の命で動いているの。つまり、これが神帝の意志 。あなたも従わなければならないわ」
「……だからって、納得出来るか! 」
そう言い、兵士を振り払おうとした封魔に溜息をついた。
「……仕方ないわね。……抵抗するなら、此方も力づくで連れていくわ。… …やりなさい」
「……はっ! 」
その言葉に封魔の後ろにいた兵士が何かを取り出す。
小さくてそれが何かわからなかったが 、兵士がそれを当てた瞬間、バチッと火花が散った。
「……ぐっ! 」
「……もう一度、いえ……、気絶するまでよ」
「……いいのですか? 」
「抵抗されても抑えきれるならやらなくてもいいわ」
「…………」
言われて、兵士は迷いながらももう一度押し付けた。
「……っ……! 」
「……さて、我慢比べね」
意識を失わないように抵抗しているのか、耐えている様子の封魔に星蓮が言う。
何度目かで封魔がぐったりとしたところで、星蓮が兵士達に連れていくように命じる。
「……ごめんなさいね。……私は正直反対だったけど、これが神界上層部の決定なの」
見送ってそう呟いた星蓮が舞達の方へ歩いてくる。
それに少し緊張したが、彼女に舞達の姿は見えないのか、ただ通り抜けていくだけで、その直後、また何処かに引っ張られる感覚があった。
2
「今度は何処? 」
引っ張られるように場所を移動し、会議に使っているような部屋に着く。
「此処は……」
「……お父様が上層部の者達と話をする時に使っていた部屋」
覚えがあるのか、聖羅と聖姫が言った時、部屋の扉が開き、数人が入ってくる。
誰を見ても身なりのよい服を着ていて 、ある程度の年をとっている。
(この人達が……、神界の上層部…… )
舞がそう思っている間に、今度は荒々しく扉が開いた。
「一体、どういうつもりだ!? 」
入ってくるなり、封魔が声を荒げる。
「おや、もう気が付いたのか? 」
「……答えろ!何故、邪魔をした!?兄上達を見捨てるようなことをした! ? 」
「……魔神族との戦いは始まったばかり。今、闘神を全て失う訳にはいかぬ 」
「それなら、尚更……」
「あいつらは無理だった。だから、蒼魔に術の範囲から逃されていたお前だけを助けた」
「……俺達に命を下したのはお前達だったな。……何故、作戦がもれていた ? 」
その問いに、一人が失笑した。
「もれていた?……違うな。お前達が自分でもらしたのだ」
「何っ!? 」
「……軍で作戦を決めた際、通常、誰に報告し許可を得る? 」
「それは勿論……っ!?まさかっ!? 」
何かに思い当たったのか、封魔が目を見開く。
「……この際だ。教えておこう。……総長と副総長は魔神族。お前の本当の両親であり、本当の総長、副総長は既に死んでいるのだ」
「……そんな、馬鹿な……」
「……事実だ」
「……っ……、なら、何故もっと早く言わなかった!? 」
「お前達では無理だからだ。……一度体制をリセットし、新たな軍をつくらないとな。お前には色々やってもらいたい事がある」
「断る」
「……何故だ? 」
「……どうせ、碌でもないことだろ。俺は俺のやり方で……」
「……神蘭だったかな」
唐突に出た名に、封魔の言葉が止まる 。
見えない事をいいことに話を聞いていた舞達と共にいた神蘭も身体を震わせたのがわかった。
3
「……何故、今その名が出る? 」
問い掛けた封魔の声は低い。
「別にお前が断るなら、彼女でも我々は構わない」
「……軍に入ったばかりの実力も経験もない奴を使ってどうするつもりだ? 」
「愚問だな。……我々神界の研究者が行なっている実験、あれなら戦闘力を格段に上げられる」
「それでも足りなければ、他の数人にも行なえばいい」
「……あの実験は失敗のリスクも大きい。そう簡単に事が済むとは思えないな」
「失敗した時はその時だ。……本当に手がつけられなくなる前に始末しろ」
それを聞いた封魔が拳を握り締めるのがわかった。
「……さてと、そろそろ聞きたい事は聞いただろう。今度はどうするか此方が聞かせてもらおうか?……お前が従うか、他の者を差し出すか」
「…………わかった。俺が従う。……但し、条件がある」
「……聞こう」
「俺がどうなろうと、俺が存在する内は他の奴に手を出すな。……それが条件だ」
「……いいだろう」
そう言って、紙を封魔の方へ放る。
「これからの指示が書いてある。まずはその通りに動いてもらおう」
紙に目を通し、眉を顰めた封魔を見て何が書いてあったのか、舞は覗き込もうとしたが、その前に握り潰されてしまい、見ることは出来なかった。
「離せ!……くそっ!俺も彼処に残る !……兄上達を助けないと! 」
聞こえてきたその声に、舞達は全員がハッとする。
更に距離を縮めていくと、数人に押さえつけられている封魔と此方へ背を向けている星蓮がいた。
「もう無理よ、間に合わないわ」
「そんなのわからないだろ!今すぐ戻れば! 」
「それに言ったでしょ。戻ることは諦めなさい!……私達は神帝の命で動いているの。つまり、これが神帝の意志 。あなたも従わなければならないわ」
「……だからって、納得出来るか! 」
そう言い、兵士を振り払おうとした封魔に溜息をついた。
「……仕方ないわね。……抵抗するなら、此方も力づくで連れていくわ。… …やりなさい」
「……はっ! 」
その言葉に封魔の後ろにいた兵士が何かを取り出す。
小さくてそれが何かわからなかったが 、兵士がそれを当てた瞬間、バチッと火花が散った。
「……ぐっ! 」
「……もう一度、いえ……、気絶するまでよ」
「……いいのですか? 」
「抵抗されても抑えきれるならやらなくてもいいわ」
「…………」
言われて、兵士は迷いながらももう一度押し付けた。
「……っ……! 」
「……さて、我慢比べね」
意識を失わないように抵抗しているのか、耐えている様子の封魔に星蓮が言う。
何度目かで封魔がぐったりとしたところで、星蓮が兵士達に連れていくように命じる。
「……ごめんなさいね。……私は正直反対だったけど、これが神界上層部の決定なの」
見送ってそう呟いた星蓮が舞達の方へ歩いてくる。
それに少し緊張したが、彼女に舞達の姿は見えないのか、ただ通り抜けていくだけで、その直後、また何処かに引っ張られる感覚があった。
2
「今度は何処? 」
引っ張られるように場所を移動し、会議に使っているような部屋に着く。
「此処は……」
「……お父様が上層部の者達と話をする時に使っていた部屋」
覚えがあるのか、聖羅と聖姫が言った時、部屋の扉が開き、数人が入ってくる。
誰を見ても身なりのよい服を着ていて 、ある程度の年をとっている。
(この人達が……、神界の上層部…… )
舞がそう思っている間に、今度は荒々しく扉が開いた。
「一体、どういうつもりだ!? 」
入ってくるなり、封魔が声を荒げる。
「おや、もう気が付いたのか? 」
「……答えろ!何故、邪魔をした!?兄上達を見捨てるようなことをした! ? 」
「……魔神族との戦いは始まったばかり。今、闘神を全て失う訳にはいかぬ 」
「それなら、尚更……」
「あいつらは無理だった。だから、蒼魔に術の範囲から逃されていたお前だけを助けた」
「……俺達に命を下したのはお前達だったな。……何故、作戦がもれていた ? 」
その問いに、一人が失笑した。
「もれていた?……違うな。お前達が自分でもらしたのだ」
「何っ!? 」
「……軍で作戦を決めた際、通常、誰に報告し許可を得る? 」
「それは勿論……っ!?まさかっ!? 」
何かに思い当たったのか、封魔が目を見開く。
「……この際だ。教えておこう。……総長と副総長は魔神族。お前の本当の両親であり、本当の総長、副総長は既に死んでいるのだ」
「……そんな、馬鹿な……」
「……事実だ」
「……っ……、なら、何故もっと早く言わなかった!? 」
「お前達では無理だからだ。……一度体制をリセットし、新たな軍をつくらないとな。お前には色々やってもらいたい事がある」
「断る」
「……何故だ? 」
「……どうせ、碌でもないことだろ。俺は俺のやり方で……」
「……神蘭だったかな」
唐突に出た名に、封魔の言葉が止まる 。
見えない事をいいことに話を聞いていた舞達と共にいた神蘭も身体を震わせたのがわかった。
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「……何故、今その名が出る? 」
問い掛けた封魔の声は低い。
「別にお前が断るなら、彼女でも我々は構わない」
「……軍に入ったばかりの実力も経験もない奴を使ってどうするつもりだ? 」
「愚問だな。……我々神界の研究者が行なっている実験、あれなら戦闘力を格段に上げられる」
「それでも足りなければ、他の数人にも行なえばいい」
「……あの実験は失敗のリスクも大きい。そう簡単に事が済むとは思えないな」
「失敗した時はその時だ。……本当に手がつけられなくなる前に始末しろ」
それを聞いた封魔が拳を握り締めるのがわかった。
「……さてと、そろそろ聞きたい事は聞いただろう。今度はどうするか此方が聞かせてもらおうか?……お前が従うか、他の者を差し出すか」
「…………わかった。俺が従う。……但し、条件がある」
「……聞こう」
「俺がどうなろうと、俺が存在する内は他の奴に手を出すな。……それが条件だ」
「……いいだろう」
そう言って、紙を封魔の方へ放る。
「これからの指示が書いてある。まずはその通りに動いてもらおう」
紙に目を通し、眉を顰めた封魔を見て何が書いてあったのか、舞は覗き込もうとしたが、その前に握り潰されてしまい、見ることは出来なかった。