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第14章

1
「……雷牙」
「……大丈夫だ。……決心はついた」
舞と同じように近付いてくる雷牙に気付いた神蘭にそう答えた雷牙は自分の親である二人を見る。
「……このまま、【兵器】として使われるくらいなら、……ここで倒す」
「でも……」
本当にそれでいいのかと問おうとして 、雷牙の目を見てやめる。
それでもまだもう一つ気になることはあった。
「確か、雷牙も力を奪われていたんじゃなかった? 」
雷の力は奪われたままの筈で、魔神族としての力はどの位まで使えるのかわからない。
「……ああ。だから、花音にこれを借りた」
そう言って、小さな珠を見せてくる。
それは花音が普段弓にはめ込んで使っているものだった。
「……今回はこれで充分だ」
そう言ったかと思うと、雷牙は風夜と封魔が食い止めている二人に向かって電流を放った。
「「うがあああ」」
電流を浴びた二人が怯んだ隙に、風夜と封魔が其々蹴り飛ばす。
距離を取らされた二人はまた直ぐに動こうとして、その場に崩れ落ちた。
「「? 」」
身体を動かすことが出来ないのを不思議そうにしているのを見て、雷牙は少し寂しげに笑った。
「……いくら痛みとかを感じることがなくなったとしても、身体を麻痺させれば、動きがとれなくなるみたいだな 」
そう言う雷牙の両手に、細い針のようなものが現れる。
それはよく見ると、雷で出来ているようだった。
「……俺は風夜程、能力の使い方が上手い訳じゃない。……それでも、一年前の戦いの後、奴が使っていたのを自分なりにアレンジして使えるようにした技もある。……今のあんた達にはこれが一番効くんだろうな」
一度目を閉じ開いた後、雷牙はそれを投げ放つ。
それは魔神族二人の身体に突き刺さったかと思うと、その中へ消えていく。
その直後、思うように動かない身体をそれまで動かそうとしていた二人の身体が痙攣したように震え、倒れこんだ 。
2
「……な、何……!?一体、何をしたの? 」
突然のことに舞が声を上げる横を雷牙が通り抜ける。
「……いくら身体が強化されようと、身体の感覚をなくそうと、……急所は急所のままってことさ」
「急所って、何処を狙ったの? 」
問い掛けた舞に足を止め、振り返った雷牙が自身の左胸をトンと叩く。
「……此処だよ」
「えっ? 」
「……流石に此処を攻撃すれば、強化も関係ないと思ったからな」
そう言って、また二人に近付いていくのを見ながら、なんとも言えない気持ちになった。
彼の言った通り、心臓を狙った攻撃に二人が動くことはない。
そんな二人を雷牙はじっと見下ろしていたが、ふと何かに気付いた後、その場から飛び退いた。
その直後、倒れている二人に雷が突き刺さるように落ち、その身体を消し飛ばす。
それは一瞬の出来事で、誰も反応出来なかった。
「……力を与えても、所詮下級は下級か……」
「……もう少し楽しめるかと思っていたけど、今回はそんなに楽しめなかったわね」
その時、聞こえてきたのは、凰呀と麗玲の声だった。
「凰呀! 」
「麗玲……! 」
名を呼んだ飛影と舞に、二人はニヤリと笑みを浮かべる。
「……久し振りね。……あなた達が神界から抜け出した時以来かしら」
「…………」
「……ふふ、そんなに怖い顔しないでよ。今日はただ面白いものを見ようと見物しにきただけ。……途中から、凄くつまらなくなっちゃったけど」
「…………つまらない?つまらないって……! 」
麗玲が言ったことに声を上げた舞だったが、近くに来ていた雷牙に制される 。視線を向けると、ただ首を横に振られた。
「……ふふ、賢明な判断ね。……今回は気分も乗らないし、戦うつもりはないわ。これで引き上げてあげる。次こそもっと面白くしてあげるから、楽しみにしておいて」
そう言った麗玲は、凰呀と姿を消す。
「何で止めるの? 」
「……今の状況をよく考えろよ。……せっかく村の人達の命は助けられたんだ。此処を態々戦場にすることはないだろ」
「それに、封魔と風夜は消耗しているし、飛影は怪我をしている。……私達四人だけでは、この村に犠牲を出さないで戦うのは無理だ」
雷牙だけでなく、神蘭にも言われてしまえば、舞にはもう何も言えなかった 。
3
城へ戻ってきて、緋皇へ報告を入れた後、舞は花音と共に雷牙を探していた 。
彼を見つけたのは、彼が封魔と話していた時にもいた中庭だった。
「……雷牙くん」
気配で気付いているだろうが、振り向かない雷牙に花音は声を掛ける。
「……大丈夫? 」
「……ああ。……心配してきてくれたんだろうけど、正直複雑な気分なんだ 。……産みの親を失って悲しい気持ちがないと言ったら、嘘になる。……でも、完全な兵器になる前に止められたことにはほっとしてる。……一緒に過ごすことはなかったが、産んでくれたことは事実だからな」
そこまで言って、雷牙は目を閉じた。
3
城へ戻ってきて、緋皇へ報告を入れた後、舞は花音と共に雷牙を探していた 。
彼を見つけたのは、彼が封魔と話していた時にもいた中庭だった。
「……雷牙くん」
気配で気付いているだろうが、振り向かない雷牙に花音は声を掛ける。
「……大丈夫? 」
「……ああ。……心配してきてくれたんだろうけど、正直複雑な気分なんだ 。……産みの親を失って悲しい気持ちがないと言ったら、嘘になる。……でも、完全な兵器になる前に止められたことにはほっとしてる。……一緒に過ごすことはなかったが、産んでくれたことは事実だからな」
そこまで言って、雷牙は目を閉じた。
「……ただ」
「ただ? 」
「……もう少し話をする時間は欲しかったかな。……予想はつくが、何故俺を捨てたのか、きちんと聞いておきたかった。……でも、悔いがないのは本当だ。……親子の時間はなかったが、兵器として扱われているのなんてみたくなかったからな」
そう話す雷牙からはやはり悲しみは見えない。
言葉の通り、本当に兵器として扱われ続けることを止められてよかったと思っているようだった。
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