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第14章

1
「…………元々はね、魔神族も神族の実験によって出来た種族なのよ」
星蓮が唐突に言ったことに、舞は思わず彼女を見る。
「……と言っても、私を含め、此処にいる皆がまだ存在していない位、遥か昔のことだけどね」
「実験で出来た種族?俺達が? 」
飛影と煌破も知らなかったのだろう、驚いたように見る。
「ええ。私も話を聞いたり、資料を読んだりして知ったんだけどね。……かつて、神界の帝の地位争いに敗れた神界人が神族と魔族の血を混合させ、つくりあげた種族。当時はそんなに数も多くなく、軍によってすぐに粛正されたらしいけど、何人かには逃げられたみたいでね。……暫く見失っているうちに彼等は数を増やし、自分達の種族を作り上げた。……麗玲が頂点に立った訳ははっきりとわからないけど、元々は彼女の両親がリーダー格になり統制もとれるようになって、再び侵攻を始めたの。……それに最初に対応したのは、総長と副総長だった」
そこまで言って、星蓮は溜息をついた 。
「ところが、二人は負け、魔神族の二人に成り代わられた。……その当時、その二人の息子だった蒼魔と封魔はまだ幼く、神帝と上層部は成り代わられたことを隠し、二人を総長、副総長としてそのままおくことにした」
「ちょっと待ってくれ!なら、俺と封魔はずっと、本当の両親でない二人を親だと思っていたのか!? 」
「そうよ」
蒼魔の問いに星蓮は頷く。
「……軍のことにしても、ずっと魔神族を上においてたなんて、何故そんなことを? 」
「……それから動きがなかったからよ 。目的が不明だったこともあったからなのだけど、その間にも魔神族の侵入が増え、動きが大きくなってきたから神帝が直々に封魔に監視を命じたのよ 」
「……それが失敗して、あの事件があったんだけどな」
そこで封魔が口を挟む。
「あの事件って、まさか……」
それに思い当たることはある。
「……俺以外の闘神……兄上達が生死不明になった時のことだよ」
「……その件には、神帝、上層部も関わっていたの」
それは誰にとっても、初めて聞くことだった。
2
「神帝が関わっていたって、どういうことですか? 」
光蘭がそう問い掛ける。
「……そのままの意味よ」
そう言って、星蓮は神蘭達の方を見る 。
「覚えてるかしら?あなた達が一人戻った封魔に反発して、軍で孤立させた時のこと。……ああなるように仕向けたのは、神界の上層部よ。……そして 、それで追い詰められた封魔が倒れ、研究所の者に兵器化され、総長達の手駒にされたのも、それを知った神子達がどう動くかも、神界の上層部は知っていた」
そこまで言うと、今度は舞達の方へ視線を移してきた。
「計算違いだったのは、手駒にされている時に神子である光鈴と光麗が手に掛けられてしまったこと。天華が麗玲を倒し、魔神族を封印してしまったこと。……神蘭達、新たな闘神達が封魔の自我を完全に取り戻させ、行動を共にするようになってしまったこと。そのせいで、総長達も神界軍としての動きしかとらなくなってしまったこと」
「……まるで、封魔が元に戻ったのが不都合だったように聞こえますね」
「……不都合だったのよ。……神界軍上層部にとってはね」
少し低い声で言った光鳳の言葉を星蓮は否定しなかった。
「……神帝や上層部は、ある程度コントロールがきくようになったら、封魔を魔神族用に使うつもりだったんだもの。……でも、失敗。だから、新たに命じたのよ。神界を裏切って、魔神族側につくようにってね。……まぁ、封魔自身の目的と利害一致したところもあったみたいだけれど」
「その目的っていうのは? 」
「……兄上達の居場所を探し、助けること。……一度、邪魔をされたからな 。その邪魔をしないことを条件に神帝達の言うとおりにした」
「……邪魔って」
聞き返しながらも、少し嫌な予感がしてくる。
周りを見れば、神蘭達の表情も強張っているように見えた。
3
「……言ったでしょ?孤立するように仕向けたって。……今だから言うけど 、本当は封魔は助けようとしていた。でも、神帝の命で無理矢理連れ帰ったのよ。……抵抗されたけど、数にものをいわせてね。人質に調度いい人もいたらしいわ。……流石に私は反対したんだけど、……駒を全て失う訳にはいかないって押し切られてね」
「……その人質っていうのは? 」
「……封魔にとって、ある約束をしていた部下の娘だと言ってたけど……」
星蓮が言った途端、数人が大きく息をのむ。
同時にその数人がある方向へ視線を向ける。
その先には顔を真っ青にさせた神蘭がいた。
「……私……?……私の所為だったの ? 」
青ざめながらも視線を向ける神蘭に封魔は溜息をつく。
「……俺が協力しなければ、……神蘭を使う。そう言われたのは事実だ」
「でも、神蘭はまだ軍に入ったばかりの新人だったじゃない! 」
鈴麗が叫ぶように言う。
「……実力は関係ないわ。実験でどうにでもなるもの。……むしろ、封魔でよかったのよ。じゃなければ、魔界の村二つを滅ぼした二人みたいに完全に壊れて、元に戻ることなんて二度となかったでしょうし。……まぁ、でも… …神帝達がいなくなったことで、ある意味命拾いしたわね」
「……その先はいう必要ないだろ? 」
「ここまで話したなら、いいでしょ」
そんな二人の会話から、星蓮が何を言おうとしているのか、想像はついた。
(多分、星蓮が言おうとしているのは ……)
「もし、神帝がいたら、きっと神界を裏切ったことを咎められて、よくて幽閉、最悪処刑だったでしょうしね。神子殺しもあった訳だし」
「……ちょっと待った」
黙って聞いていた飛影が口を開く。
「さっきから聞いていて思ったんだが 、何故罰せられるんだ?神帝とか上層部の意思でもあったんだろ? 」
それに星蓮は困ったような表情をした 。
「……そうなんだけど、色々なことがありすぎて、事が大きくなってしまった以上、誰かがその責を負わなければならないのよ」
「……スケープゴートか」
煌破が呟く。
「……まぁ、そう考えていた人達はいなくなったんだけどね」
「…………」
そう言い、肩を竦めた星蓮から視線を逸らし、周囲を見回す。
誰もが今知ったことに複雑な表情をしている。
そんな中、踵を返した封魔が出て行き 、それを追うように雷牙も出て行くのが見えた。
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