第13章
1
魔界へ来てから一度目の襲撃を緋皇の力で退けてから数日、すっかりと怪我も癒え、体力も回復した舞は花音達と共に城下町を歩いていた。
「それにしても、神蘭さん達も朝からよくやるよね」
「身体は慣れてきたとはいえ、力を使うにはまだ少し違和感があるのにね」
「……まぁ、その負荷が逆に修行にもなっていいみたいだよ」
「……それなら、私達もやった方がいいってこと? 」
舞と聖奈に花音が返した言葉を聞いて綾が言う。
それを聞いて舞が思い出したのは、麗玲の力に押し負けたことだった。
(確かに私の〈天華〉の力が魔神族に有効とはいえ、麗玲の力には及ばなかった。今のままじゃ……、勝てない)
「って言っても、私と綾先輩の力は魔神族向きじゃないですからね」
「まずは花音みたいに武器を持つか、違う力を使えるようになるところからよね。……といっても、力は難しいから武器になるだろうけど」
「……緋皇さんか、誰かに相談してみようか」
二人の話を聞いて、舞は言う。
頷いたのを確認すると、今日の散策はもう止めて城へ戻ることにした。
「……ああ、あるぞ」
相談した緋皇の言葉に舞達は顔を見合わせた。
「魔神族のことはずっと警戒していて 、何かあった時の準備はしていたからな。本格的に動き出したのは一年前からだったが、試作品は出来てる。……ついて来い」
緋皇がそう言って、何処かへと歩き出す。
彼についていくと、其処は倉庫のような場所だった。
中に入ると、其処には幾つもの武器や防具がある。
「この中から使えそうな物を選べ」
言いながら、緋皇が幾つかの武器を並べる。
それを眺めて、舞が手にしたのはその中にあった一本の細身の剣だった。
「……ほう、やっぱりそれを選ぶか」
「えっ? 」
緋皇が言った言葉に、舞はやっぱりとはどういうことかと視線を向ける。
「……その剣は元々〈天華〉が使っていたものだ。それを莉鳳が預かっていて、我々も参考にさせてもらった。それで出来上がったのが、今此処にあるものだ」
それを聞いて、舞は自分が手にしている剣を改めてみる。
言われてみれば、懐かしいような気もした。
「……舞は決まりだとして。〈聖鈴〉の時の武器はこれだったと思うけど、使える自信はないなぁ」
「私もあまり自信はないなぁ。全く別の武器よりは使えるかもしれないけどさ」
そんなことを言いつつ、聖奈は直径三十センチ位の戦輪、綾は上部に水晶の付いた杖を手にしていた。
「決まったか? 」
「とりあえずは……」
「待って!私も! 」
舞を遮った花音が緋皇が片付けようとしていたのを止め、残っていた中から短剣を取る。
「って、どうして花音先輩まで? 」
「私が持っているのは弓だからね。もし接近された時の為に、あった方がいいかなって」
苦笑いしながら言う花音に、緋皇が頷く。
「まぁ、いい心掛けだな」
(……でも、光鈴って、接近戦は苦手だったような気がするんだけどな)
そう思いはしたが、言うのは止めておいた。
緋皇から武器を受け取った舞達が次に来たのは、魔族軍の訓練場だった。
「武器の扱いを練習したかったら、此処を使うといい。他には事情を知っている俺直属の兵しかこないから、相手をしてもらってもいいだろうしな」
そう言って片付ける仕事があるからと緋皇は立ち去っていく。
訓練場にいるのは舞達だけになってしまったが、せっかく貸してくれると言ったのに何もしないでいるのは勿体無いだろうと思い、見様見真似で武器を使ってみることにした。
(何だかすごく使い易い。……今の私は持ったこともないのに)
〈天華〉が使っていたというだけあって、自分の手にもよく馴染む。
他の三人はどうだろうかと様子を見れば同じように〈聖鈴〉、〈光麗〉だった頃の武器を選んでいた聖奈と綾はそれ程問題はなさそうだったが、花音は短剣の扱いがわからないようだった。
一時間位訓練場にいて身体を動かしてから城へと戻ると、丁度食事の準備が出来たと言われて食堂へ向かう。
そこには朝からいなかった者達の姿もあったが、飛影、風夜、封魔はいなかった。
「あの三人は? 」
「風夜ならまだ戻ってきてないぞ」
「封魔もいつの間にかいなくなってたしな」
「そういえば、飛影の奴も気になることが出来たとか言って何処かへ行ったな」
風牙、蒼魔、煌破から返ってきた言葉に舞は内心溜息をつく。
(……また勝手な行動を……、何もなければいいけど……)
そんなことを思いつつ、麗玲達が何も仕掛けてこないとも思えなかった。
2
「……結局、あの三人が帰ってきたのって夜遅かったみたいだね」
「一体、何をしていたんだか……」
舞は聖奈とそんなことを話して、ふと自分達と一緒にいるものの何も言わないでいる花音と綾を見た。
二人は其々別の方を見ていて、視線を動かすと、花音は風牙や火焔と話す風夜、綾は蒼魔の横にいる封魔を見ている。
「どうかしたんですか? 」
「……うーん、何か違う気がしたするんだよね」
「私も……、何だろう?何か変な感じ 」
「違うって、あの二人が? 」
「うん、あと……」
綾が今度は飛影を見る。
「……昨日、遅かった三人じゃない」
「そうなんだけど、……何か違う気がするんだよね」
「雰囲気というか、見た目は本人なんだけど」
「……舞ちゃんは何も感じないの? 」
「飛影は分かりにくいけど、後の二人とか」
言われて、舞は気配をよむのに集中する。
(…………あれ? )
花音と綾に言われた通り、飛影以外の二人に集中してみると、少し違和感があった。
3
「それでこっそり俺を呼び出してまで何を聞きたいんだ? 」
他の仲間達に聞かれて混乱を招いてもよくないだろうと自分達の部屋へと呼び出した煌破が少し居心地悪そうにしながら問い掛けてくる。
「ちょっと聞きたいことがあるの? 」
「前に十人衆には他人を操る力を持つ者がいるって言ってたけど、他人に成りすますことが出来る者もいるの? 」
花音と綾の言葉を聞いて、煌破は少し考える素振りを見せた。
「……いや、十人衆にはいないな。だが、部下の中にはそんな力を持つ兄弟がいると聞いたことがある」
「兄弟? 」
「……三つ子の兄弟だと聞いた」
「三人……人数的には合うね」
思わず舞が呟くと、煌破が目を細めた 。
「……お前達、何か隠してないか? 」
「えっと……」
どうしようかと舞は花音達を見る。
「……三人が大体誰かは分かってるんだし、いいんじゃないかな」
綾に言われ、舞は煌破に話す事にした 。
「……それじゃあ、お前達はその三人が入れ替わっていると言いたいんだな 」
「多分だけどね」
「問題は入れ替わられた三人が何処にいるのかだけど……」
「……飛影の気配は感じない。……余程遠くにいるか、別空間に閉じ込めらているってところだな」
「……どうすれば……」
「……まぁ、そいつらは自分達でどうにかするだろ。……お前達を考えないといけないのは、入り込んだ三人をどうするかじゃないのか」
そう言われたが、どう動けばいいかすぐには思いつきそうにはなかった。
魔界へ来てから一度目の襲撃を緋皇の力で退けてから数日、すっかりと怪我も癒え、体力も回復した舞は花音達と共に城下町を歩いていた。
「それにしても、神蘭さん達も朝からよくやるよね」
「身体は慣れてきたとはいえ、力を使うにはまだ少し違和感があるのにね」
「……まぁ、その負荷が逆に修行にもなっていいみたいだよ」
「……それなら、私達もやった方がいいってこと? 」
舞と聖奈に花音が返した言葉を聞いて綾が言う。
それを聞いて舞が思い出したのは、麗玲の力に押し負けたことだった。
(確かに私の〈天華〉の力が魔神族に有効とはいえ、麗玲の力には及ばなかった。今のままじゃ……、勝てない)
「って言っても、私と綾先輩の力は魔神族向きじゃないですからね」
「まずは花音みたいに武器を持つか、違う力を使えるようになるところからよね。……といっても、力は難しいから武器になるだろうけど」
「……緋皇さんか、誰かに相談してみようか」
二人の話を聞いて、舞は言う。
頷いたのを確認すると、今日の散策はもう止めて城へ戻ることにした。
「……ああ、あるぞ」
相談した緋皇の言葉に舞達は顔を見合わせた。
「魔神族のことはずっと警戒していて 、何かあった時の準備はしていたからな。本格的に動き出したのは一年前からだったが、試作品は出来てる。……ついて来い」
緋皇がそう言って、何処かへと歩き出す。
彼についていくと、其処は倉庫のような場所だった。
中に入ると、其処には幾つもの武器や防具がある。
「この中から使えそうな物を選べ」
言いながら、緋皇が幾つかの武器を並べる。
それを眺めて、舞が手にしたのはその中にあった一本の細身の剣だった。
「……ほう、やっぱりそれを選ぶか」
「えっ? 」
緋皇が言った言葉に、舞はやっぱりとはどういうことかと視線を向ける。
「……その剣は元々〈天華〉が使っていたものだ。それを莉鳳が預かっていて、我々も参考にさせてもらった。それで出来上がったのが、今此処にあるものだ」
それを聞いて、舞は自分が手にしている剣を改めてみる。
言われてみれば、懐かしいような気もした。
「……舞は決まりだとして。〈聖鈴〉の時の武器はこれだったと思うけど、使える自信はないなぁ」
「私もあまり自信はないなぁ。全く別の武器よりは使えるかもしれないけどさ」
そんなことを言いつつ、聖奈は直径三十センチ位の戦輪、綾は上部に水晶の付いた杖を手にしていた。
「決まったか? 」
「とりあえずは……」
「待って!私も! 」
舞を遮った花音が緋皇が片付けようとしていたのを止め、残っていた中から短剣を取る。
「って、どうして花音先輩まで? 」
「私が持っているのは弓だからね。もし接近された時の為に、あった方がいいかなって」
苦笑いしながら言う花音に、緋皇が頷く。
「まぁ、いい心掛けだな」
(……でも、光鈴って、接近戦は苦手だったような気がするんだけどな)
そう思いはしたが、言うのは止めておいた。
緋皇から武器を受け取った舞達が次に来たのは、魔族軍の訓練場だった。
「武器の扱いを練習したかったら、此処を使うといい。他には事情を知っている俺直属の兵しかこないから、相手をしてもらってもいいだろうしな」
そう言って片付ける仕事があるからと緋皇は立ち去っていく。
訓練場にいるのは舞達だけになってしまったが、せっかく貸してくれると言ったのに何もしないでいるのは勿体無いだろうと思い、見様見真似で武器を使ってみることにした。
(何だかすごく使い易い。……今の私は持ったこともないのに)
〈天華〉が使っていたというだけあって、自分の手にもよく馴染む。
他の三人はどうだろうかと様子を見れば同じように〈聖鈴〉、〈光麗〉だった頃の武器を選んでいた聖奈と綾はそれ程問題はなさそうだったが、花音は短剣の扱いがわからないようだった。
一時間位訓練場にいて身体を動かしてから城へと戻ると、丁度食事の準備が出来たと言われて食堂へ向かう。
そこには朝からいなかった者達の姿もあったが、飛影、風夜、封魔はいなかった。
「あの三人は? 」
「風夜ならまだ戻ってきてないぞ」
「封魔もいつの間にかいなくなってたしな」
「そういえば、飛影の奴も気になることが出来たとか言って何処かへ行ったな」
風牙、蒼魔、煌破から返ってきた言葉に舞は内心溜息をつく。
(……また勝手な行動を……、何もなければいいけど……)
そんなことを思いつつ、麗玲達が何も仕掛けてこないとも思えなかった。
2
「……結局、あの三人が帰ってきたのって夜遅かったみたいだね」
「一体、何をしていたんだか……」
舞は聖奈とそんなことを話して、ふと自分達と一緒にいるものの何も言わないでいる花音と綾を見た。
二人は其々別の方を見ていて、視線を動かすと、花音は風牙や火焔と話す風夜、綾は蒼魔の横にいる封魔を見ている。
「どうかしたんですか? 」
「……うーん、何か違う気がしたするんだよね」
「私も……、何だろう?何か変な感じ 」
「違うって、あの二人が? 」
「うん、あと……」
綾が今度は飛影を見る。
「……昨日、遅かった三人じゃない」
「そうなんだけど、……何か違う気がするんだよね」
「雰囲気というか、見た目は本人なんだけど」
「……舞ちゃんは何も感じないの? 」
「飛影は分かりにくいけど、後の二人とか」
言われて、舞は気配をよむのに集中する。
(…………あれ? )
花音と綾に言われた通り、飛影以外の二人に集中してみると、少し違和感があった。
3
「それでこっそり俺を呼び出してまで何を聞きたいんだ? 」
他の仲間達に聞かれて混乱を招いてもよくないだろうと自分達の部屋へと呼び出した煌破が少し居心地悪そうにしながら問い掛けてくる。
「ちょっと聞きたいことがあるの? 」
「前に十人衆には他人を操る力を持つ者がいるって言ってたけど、他人に成りすますことが出来る者もいるの? 」
花音と綾の言葉を聞いて、煌破は少し考える素振りを見せた。
「……いや、十人衆にはいないな。だが、部下の中にはそんな力を持つ兄弟がいると聞いたことがある」
「兄弟? 」
「……三つ子の兄弟だと聞いた」
「三人……人数的には合うね」
思わず舞が呟くと、煌破が目を細めた 。
「……お前達、何か隠してないか? 」
「えっと……」
どうしようかと舞は花音達を見る。
「……三人が大体誰かは分かってるんだし、いいんじゃないかな」
綾に言われ、舞は煌破に話す事にした 。
「……それじゃあ、お前達はその三人が入れ替わっていると言いたいんだな 」
「多分だけどね」
「問題は入れ替わられた三人が何処にいるのかだけど……」
「……飛影の気配は感じない。……余程遠くにいるか、別空間に閉じ込めらているってところだな」
「……どうすれば……」
「……まぁ、そいつらは自分達でどうにかするだろ。……お前達を考えないといけないのは、入り込んだ三人をどうするかじゃないのか」
そう言われたが、どう動けばいいかすぐには思いつきそうにはなかった。