1
何とか空夜達の意識を失わせ、後を綾に任せると舞は神蘭達のところへ行こうとしたが、その前に撃ち込まれた攻撃に足を止めた。
「……ふふ、駄目よ。そんなに遊んでほしいなら」
「お前達の相手は俺達がしてやるよ」
今度はそう言った十人衆の一人なのだろう女と凰呀が立ち塞がる。
その間にも視線を動かせば、元総長だった男は倒れている神蘭達に接近していて、その剣を振り下ろそうとしていた。
「……花音、風夜、此処から狙えるか？ 」
「……ああ」
「……わからないけど、やってみる」
立ち塞がる二人から視線を外さないまま、飛影が小声で言ったことに、風夜と花音が同じように返す。
「よし、なら隙はつくる」
飛影が煌破と視線を交わし合い、攻撃を仕掛ける。
それを見て、花音と風夜は此方へと背を向けている総長だった男を狙おうとする。
だが、それより前に巨大な力が膨れ上がった。
「！！ 」
気付いて声をあげようとした舞だったが、それより前に二人だけでなく、舞達全員を激しい衝撃が襲い、気がついま時には地に伏していた。
2
（一体、何が……？ ）
何が起きたのかわからないまま顔を上げれば、此方へと手を向けている麗玲が見える。
「……駄目よ。楽しいところを邪魔したら。ほら、この子達がまた邪魔をする前に、早いところやってしまいなさい、閻夜」
「……はっ」
麗玲の言葉に総長だった男が返し、その剣を振り下ろす。
「ほぉ、まだ動けるか」
だが、それは割って入った封魔に防がれ、閻夜が愉しげに笑ったのがわかった。
「……だが、そんな身体では長くはもたないだろう」
「ぐぅっ……」
言葉と共に上から圧し潰すような力を加えられた封魔の剣が彼の方へと傾いていく。
（……まずい！……でも、今なら…… ）
そう思いながら、舞は何度か使ったことのある力を思い出し、手に力を集めるようにしながらも何とか立ち上がる 。
（今なら……、やれる！ ）
「……はあっ！！ 」
「……何っ！？ 」
放った力は閻夜の身体を確かに捉え、封魔や倒れている神蘭達の前から吹っ飛ばす。
（よし、次は……）
「……下がりなさい、あなた達」
その声に舞は視線を麗玲の方へ向ける。
彼女はそれまで座っていた玉座から立ち上がっていた。
「……こういう風に対峙するのは久しぶりね」
「……麗玲……」
「あなたも〈天華〉の力が完全に戻ったのかしら？ 」
そう問われても、舞には肯定も否定も出来なかった。
自分は〈天華〉の力をどの位使えているのかわからない。
だが、笑みを浮かべながらも攻撃しようとしているのだろう麗玲の手にはかなりの力が集まっていた。
（……やるしかない。……今は私しか ……）
今、意識があるのは舞以外には封魔、光鳳、聖波だけだが、その三人は戦えないだろう。
（……皆を守れるのは私しかいない！ ）
そう思い、キッと麗玲を睨むように見る。
それにまた愉しげな笑みを浮かべた麗玲は、溜めていた力を放ってくる。
迫ってくる力に舞も自身の力をぶつけるように放つ。
その力がぶつかり合った瞬間、舞の身体に激しい衝撃と痛みが走った。
「っ……！ううっ……！！ 」
（駄目、押されてる……！ ）
思いはしても、押し返せない。
「あはははは、此処で全員終わりよ！ 」
そう麗玲の声が聞こえるのと、突然足元の感覚が消えたのは同時だった。