第10章
1
「…………」
飛影が去り、一人残されていた天華はまだ渡された解毒薬を口にしていなかった。
受け取ってしまったものの、まだ飲む決心はついていない。
(……こんなことをしてまで、私を騙すとは思えないけど……)
そんなことを思っていた天華の耳に、少し離れた所から爆発音が聞こえてくる。
「……今のは……」
(……確か、飛影が行った方向……)
少し迷いはしたが気になり、解毒薬をしまうとその場所へ行ってみることにした。
(この辺りの筈……)
音がした辺りまで来て、天華は周りを見回す。
すると、今度はすぐ近くで激しい金属音がして、誰かが地を滑ってくるような音がした。
「……!!」
視線を向けるとそれは飛影で、彼も天華に気付いて視線を向けてくる。
「お前、どうして此処に?」
「あなたこそ、一体何をして……」
そこまで言ってもう一つの気配に気付く。
見れば、剣を手にした男がいる。
その気配は飛影に連れ出される前に襲ってきた者と同じものだった。
「あなたは?」
「魔神族十人衆の一人、凰呀。先程はこいつに邪魔をされて失敗したが、そっちから来てくれるとは好都合だ」
言って、攻撃体勢をとる凰呀に、天華も身構える。
(まだ薬は飲んでないけど、此処でやられる訳にはいかない!)
まだ身体は怠いままだったが、気合をいれる。
だが、凰呀の攻撃は割って入ってきた飛影に防がれた。
「飛影、お前……!」
不機嫌そうに声を上げた凰呀に何も返さないまま、彼は天華へ視線を向けてくる。
それが下がるように言ってきてるような気がして、天華は数歩後退いた。
2
(これは、一体どんな状況何だろう?
)
自分の前で攻防を繰り広げている飛影と凰呀を見ながら、天華はそんなことを思い、懐に入れたままだった解毒薬を取り出す。
(魔神族が敵対している神族を……、増して神子である私を助けてくれるとは思わなかったし、正直罠を疑っていたけど……)
実力にそれ程の差はないのだろう、少しずつだが傷が増えていく二人の姿と
、段々と近付いてきている複数の気配に天華は漸く覚悟を決めた。
「飛影!」
此方へ背を向け、凰呀と鍔迫り合いになっている彼の名を呼べば、肩越しに僅かに振り返ってくる。
「さっきのあなたの言葉、信じることにするわ」
そう言い放つのと同時に、瓶の蓋を開けた天華は中身を一気に飲み干す。
凰呀が連れて来て何処かで待機させていたのだろう魔神族の兵達に囲まれたのはそれからすぐのことだった。
「…………」
飛影が去り、一人残されていた天華はまだ渡された解毒薬を口にしていなかった。
受け取ってしまったものの、まだ飲む決心はついていない。
(……こんなことをしてまで、私を騙すとは思えないけど……)
そんなことを思っていた天華の耳に、少し離れた所から爆発音が聞こえてくる。
「……今のは……」
(……確か、飛影が行った方向……)
少し迷いはしたが気になり、解毒薬をしまうとその場所へ行ってみることにした。
(この辺りの筈……)
音がした辺りまで来て、天華は周りを見回す。
すると、今度はすぐ近くで激しい金属音がして、誰かが地を滑ってくるような音がした。
「……!!」
視線を向けるとそれは飛影で、彼も天華に気付いて視線を向けてくる。
「お前、どうして此処に?」
「あなたこそ、一体何をして……」
そこまで言ってもう一つの気配に気付く。
見れば、剣を手にした男がいる。
その気配は飛影に連れ出される前に襲ってきた者と同じものだった。
「あなたは?」
「魔神族十人衆の一人、凰呀。先程はこいつに邪魔をされて失敗したが、そっちから来てくれるとは好都合だ」
言って、攻撃体勢をとる凰呀に、天華も身構える。
(まだ薬は飲んでないけど、此処でやられる訳にはいかない!)
まだ身体は怠いままだったが、気合をいれる。
だが、凰呀の攻撃は割って入ってきた飛影に防がれた。
「飛影、お前……!」
不機嫌そうに声を上げた凰呀に何も返さないまま、彼は天華へ視線を向けてくる。
それが下がるように言ってきてるような気がして、天華は数歩後退いた。
2
(これは、一体どんな状況何だろう?
)
自分の前で攻防を繰り広げている飛影と凰呀を見ながら、天華はそんなことを思い、懐に入れたままだった解毒薬を取り出す。
(魔神族が敵対している神族を……、増して神子である私を助けてくれるとは思わなかったし、正直罠を疑っていたけど……)
実力にそれ程の差はないのだろう、少しずつだが傷が増えていく二人の姿と
、段々と近付いてきている複数の気配に天華は漸く覚悟を決めた。
「飛影!」
此方へ背を向け、凰呀と鍔迫り合いになっている彼の名を呼べば、肩越しに僅かに振り返ってくる。
「さっきのあなたの言葉、信じることにするわ」
そう言い放つのと同時に、瓶の蓋を開けた天華は中身を一気に飲み干す。
凰呀が連れて来て何処かで待機させていたのだろう魔神族の兵達に囲まれたのはそれからすぐのことだった。