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第10章

1
「おかえり。……始末出来たのか?」
戻ってきた飛影は、その声に足を止めた。
「……煌破」
「……麗玲様の命で天華だったか?そいつの抹殺は出来たのか?」
「……いや」
飛影は首を横に振る。
「いやって、お前……」
「……神子は天華だけじゃないだろ。……今回は挨拶代わりだ」
「……そうかよ。だけど、あんまりのんびりとしてるなよ」
「わかってるさ」
それだけ答えると、飛影は煌破と別れて、報告の為、麗玲のいる部屋へと向かった。
「あら?飛影。……私の望むような結果は出せたのかしら?」
入室した飛影に麗玲が声を掛けてくる。
「いえ、今回は挨拶のようなものだったので」
「そう。でも、急いでね。あまり時間を掛けていたら、折角潜らせた四人に気付かれかねないわ」
「わかっています」
「それと……」
そこで麗玲は少し楽しげに口を開く。
「もし、荷が重いようなら、すぐに言って頂戴。神界に出来た協力者に手伝ってもらうから」
「協力者……ですか?」
「ええ、とっておきのね」
そう言い、麗玲はフフッと笑った。
2
「…………」
「……また失敗だったな。……ったく、あの天華って女……」
隣で呟く煌破には何も返さず、飛影は数時間前のことを思い出す。
その数時間前にも神界に行き、天華と一線交えてきたところだった。
(流石に魔神族を専門にしているだけのことはあるか)
内心で呟き、息を吐く。
飛影にとって、まだ対峙したのは天華一人だ。
情報では神子は六人いると聞いていたが、他の五人の姿はまだ見たこともない。
まだ先は長そうだと思っていると、麗玲からの呼び出しを告げる兵がやってくるのが見えた。
「…………なかなか苦戦しているみたいね」
「…………申し訳ありません」
呼び出されてすぐに言われた言葉に、飛影は頭を下げる。
「まぁ、予想はしていたけどね。……それで、次はいつ、行くつもりなのかしら?」
「……明日にでも行こうとは思っていますが?」
失敗したというのにそんなに機嫌が悪くなっていないことを不思議に思いながらそう答える。
「……そう。……なら、少し手助けをしてあげるわ」
「手助けって、麗玲様がですか?」
「違うわ。前に言ったでしょ?協力者がいるって。……ふふふ、楽しみにしといて」
そう言って退出を許した麗玲は、今は詳しいことを話すつもりはないようだった。
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