このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第10章

1
「……屋敷内なら、動いていいとは言われたけど、どうします?」
「うーん、……そうだなぁ。水蓮ちゃんを探したいところではあるけど、見つけても私達だけで逃げられるとは思えないんだよね」
そんなことを話しつつ、舞と花音は廊下を歩いていた。
見張りどころか誰の気配もしない。
動いて構わないと言われた時に立ち入りを禁じられた場所もないことから、屋敷の中は本当に自由に動いていいようだったが、それが逆に目的が分からなくて不気味だった。
「舞ちゃん、あそこ」
不意に花音がある場所を指す。
そこに視線を向けると、一つだけ僅かに開いている扉があった。
「「……」」
誰かがいるのかと静かに扉を開く。
中を伺ってみても誰の姿もないその部屋は寝室のようだった。
誰もいないのをもう一度確認してから中へと入る。
部屋の中に入って調べていると、ベッドの近くの棚に伏せられている写真立てがあった。
「これは……」
それが気になり、写真立てを起こす。
そこには幼い少年が二人、笑顔で写っていた。
(この二人……、何処かで……)
どこか見覚えがある気がする二人に舞は少し考え込む。
だが、それが誰なのか舞が思い付く前に一つの声が聞こえてきた。
「……そこに写っているのは、俺と飛影だよ」
「「!!」」
その声に舞と花音が振り返ると、いつの間にかいたのか、扉に寄り掛かっている煌破の姿があった。
「……少しは何か思い出せそうか?」
問いかけられるが、舞は首を横に振る。
「……ここに写っているのがあなたと飛影だとして、一体どんな関係なの?」
「俺と飛影は、幼馴染でライバルだったんだよ」
(だから、こういう写真があるんだ。この時は凄く仲が良さそうに見えるけど……)
写真をもう一度見ながら、そんなことを思う。
何となくだが、煌破の言っていた用が何なのかわかってきたが、〈天華〉としての記憶が全て戻った訳でもなかった為、彼が知りたいことをすぐに答えることは出来なさそうだった。
「……もしかして、あなたが言ってた用って飛影が裏切った訳を知りたいってこと?」
「そうだと言ったら?」
「……私にはその記憶がないんだけど」
「お前は?」
視線を向けられた花音も首を横に振る。
それを確認した煌破は溜息をついた。
「…………わかった。それなら、俺が知っていることだけだが、少し昔話をしてやるよ。少し切っ掛けをやれば思い出すかもしれないしな」
そう言って話をする為にか、ベッドに腰を下ろし、煌破は口を開いた。
2
「数百年前、神界に攻め入ることが決まった時、まず神子を始末するように命じられたのが当時十人衆の五番手だった飛影だった」
「五番手?」
話し始めたばかりで口を挟むのは悪い気もしたが、わからないことをそのままにしない方がいい気もして声を上げる。
(どうせなら、少し情報を手に入れた方がいいだろうしね)
「……十人衆の中でも、実力に応じた地位があるんだよ」
「でも、麗玲は神子を……、特に対魔神族の力を持っていた天華を警戒していた筈。それなのに、五番手?」
「……一番手から四番手は既に神界に潜入していた。だから、その次の飛影に命が出されたんだよ」
その言葉に舞は花音と視線を交わし合った。
(四人の内、三人が総長と副総長、白羅。それ以外にもう一人魔神族が神界にいる!?)
「……話を戻すぞ。……命を受けた飛影は勿論、天華の命を狙った。六番手の俺も何度かサポートで戦ったこともある。……それも覚えてないか?」
舞は頷いた。
「……異変があったのは、何度目かの戦いの後、俺がついていかなかった時だ。……あいつが帰ってこなかった時があるんだよ」
煌破がそう言った瞬間、ちらりとだが舞の脳裏に浮かんだ光景があった。
ーー天華だった頃の自分がぐったりとした様子の飛影に肩を貸し、自分も傷ついているにも関わらず、何処かへ向かっている様子。
その後のことだろう、少し驚いている様子の光鈴の所へ行って、何かを必死に伝えている天華の様子。ーー
「……その後だ。飛影が十人衆を抜け、俺達を裏切ったのは。……裏切った奴を許す気はないが、理由くらいは知りたいんでな」
その言葉を聞きながらも、僅かに思い出した光景が切っ掛けだったのか、舞はその頃の事を次第に思い出し始めていた。
2/11ページ
スキ