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第8章

1
「……破皇が殺られたみたいね」
水晶を覗いていた麗玲がつまらなさそうに呟く。
「……元々、奴は飛影が抜けた後釜。自分では我々と同程度の力を持っていると勘違いしていたようですが、やはり不相応だったようですね」
麗玲の前にいた者達の中の一人が言う。
「……そうね。まだ奪っていなかった力を奪ったのはいいけど、一つ取り戻されてしまったし……」
「それで、次は誰が行ってくれるのかしら? 」
天奏のその問いに、一人の少年が進み出た。
「次はこの煌破に任せてもらえませんか? 」
「何か策でもあるの? 」
「……いえ、ただ……」
「もしかして、飛影のことが気になるのかしら?あなた、確か親しかったわよね? 」
「……まぁ……、とにかく、任せてもらえませんか? 」
天奏の言葉に返したのを聞いていた麗玲が目を細める。
「いいわ。……但し、飛影のような裏切りや、破皇のようなみっともない結果は許されないわよ」
「……わかってます」
「なら、任せるわ。……油断しないことね」
「はっ」
頭を下げ、煌破は姿を消す。
それを確認してから、麗玲は更に自分の前にいる魔神族達を見た。
「……凰呀」
「……はっ」
「煌破を見張りなさい」
「……御意」
言われた男が姿を消す。
「麗玲、どうして見張りを? 」
「念の為よ。……情に流されて裏切る者はもういらない」
「そう」
冷たい目をした麗玲に、天奏はそれだけ返す。
「それで、煌破と凰呀にはどの珠を渡したの? 」
「水と雷よ」
「あら、それはまたいい組み合わせ」
「……ふふ」
楽しそうに呟いた天奏に、麗玲もまた楽しげに笑った。
2
「…………」
麗玲と天奏が話をしていた頃、煌破は暗い廊下を一人歩いていた。
その脳裏に数百年前の飛影との会話が蘇っていた。

『はぁ!?何言ってんだ、お前!』
声を荒げ、煌破は飛影を見る。
『だから、今言った通りだ。……俺は魔神族を裏切る』
『……本気で言ってるのか? 』
『……ああ』
低い声で聞き返した煌破に、飛影も真剣に返してくる。
『……そんなこと、許されると思っているのか!? 』
『思ってないさ。……それでも、俺は決めたんだよ。あいつに協力するってな』
『それでも、魔神族十人衆の一人か! 』
『その地位はもう捨てた』
『だろうな! 』
言いつつ、手にした剣で斬りかかる。
それを避わした飛影はそのまま少し離れて、窓の縁に飛び乗る。
『……悪いが、今はお前の相手をするつもりはない。……またの機会だな』
『待てっ!』
煌破は声を上げたが、飛影は窓を突き破り出て行ってしまった。

「……本当に今でも理解出来ねぇよ」
そう呟いて、溜め息をつく。
そして、麗玲から託された水色の珠を取り出し、それを見つめる。
「……奪った力……か。……確か、此れは〈水〉だったな。……さて、どうするか? 」
呟きながら薄暗い廊下を歩いていき、自分に与えられている部屋を目指す。
これからどのように動くか、この与えられた力をどのように使うかは自分の部屋でゆっくりと考えるつもりだった。
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