第8章
1
「おいおい、まじかよ? 」
舞達を庇うように立っていた飛影が呆然と呟く。
同じように花音達の所から様子を見ていた舞も唖然としながら口を開く。
「ねぇ、……あの男、魔神族十人衆だって言ってなかった?凄い強いんじゃないの? 」
「……あ、ああ。その筈なんだがな」
そう呟いた飛影と一度顔を見合わせ、もう一度風夜達の方を見る。
「なんかどう見ても、風夜の方が圧倒しているように見えるんだけど」
「……なんか機嫌が悪いとは思っていたが、……色々振り切れてないか…… 」
その言葉通り、破皇の方が圧されているように見えた。
「……っ……、何故だ?十人衆である俺が……、たった一人の魔族に負けるなど……ある訳がない! 」
叫んだ破皇から爆発的に力が放たれたが、風夜は平気そうだった。
(だから、一体どうなってる訳……? )
「やばかったら加勢しようと思っていたが、必要なさそうだな」
飛影が苦笑混じりに言う。
「でも、風夜の様子もいつもと違うような……」
「……あいつが切れた時はいつもあんな感じだよ」
その時、聞こえてきた声に舞は振り返る。
そこには花音の能力で回復し、意識が戻ったらしい火焔の姿があった。
2
「もう大丈夫なの? 」
「……ああ。花音に回復してもらったし、力も戻ったからな。……雷牙達に比べたら、回復するのも早かったって訳だ」
そこまで言って、火焔は風夜の方を見る。
「……荒れてるな。あそこまで切れてるのも珍しいが、魔族になった後では切れたの自体ないからな。今ではあれが普通か? 」
「普通って、あれが? 」
その時、舞と火焔の声が聞こえたのか、風夜が視線を向けてくる。
「……何だ、気がついたのか。丁度いい」
「……うげっ……」
視線が合った途端、火焔は嫌そうな声を上げる。
それとは違い、風夜はニヤリとした笑みを浮かべた。
「力が戻ったって言ったな。……協力しろ」
「……拒否は? 」
「出来ると思うか? 」
笑みを浮かべたままの風夜に、火焔は溜め息をつく。
「で、どうするって言うんだよ? 」
「決まってるだろ。……彼奴を雷牙達と同じ目に合わせてやる」
そう言った風夜の周りで強風が吹き荒れる。
「……少し力を貸せば大丈夫そうだな」
それを見た火焔が掌に灯した炎を軽い動作で風の中に放つ。
放たれたのは小さな火の玉位の大きさだったが、風夜の制御下に入るなり、それは一気に燃え上がった。
「……さてと」
風夜の視線が破皇に戻る。
「今度はお前が焼かれる番だ!」
それと同時に炎を巻き込んだ風の渦が放たれた。
3
どの位時間が経ったのか、風夜が渦を解除した時、そこには破皇が倒れていた。
「……こ、この俺が……こんな、……魔族一人に……こんな……」
炎によるダメージでもう立つことも出来ないのか、倒れたままの破皇へ風夜が近付いていく。
その手に風が纏わり付いているのを見て、舞は思わず声を上げた。
「ちょっと、何を……」
「……決まってるだろ。止めを刺す」
「止めって、もう……」
言おうとした言葉は飛影に止められる。
「いいんだよ。彼奴らは正真正銘の敵だ。情けは必要ない」
その間にも風夜は破皇の近くに行き、冷たい目で見下ろしていた。
「……っ……」
風を纏った手を風夜が振り上げたのを見て、舞は視線を逸らして目を閉じる。
目を閉じてしまえば風の吹き荒れる音で何が起きているのかはわからない。
「……終わったようだぞ」
聞こえてきた飛影の声に目を開け、視線を戻した時には破皇の姿はなかった。
「……本当に容赦ないな」
「……一番俺が嫌いなタイプだったからな」
火焔に言い返した風夜の目が元の金色に戻る。
「……こっちも終わったよ」
それと同時に今まで治療に専念していた花音の声がしてくる。
「まだ意識はないけど、もう大丈夫だと思う。……奪われた力まではもどせなかったけど」
「……それは仕方ないだろ。……それより、戻るぞ。三人を休ませないとな」
「屋敷も気になるしね」
「火焔、お前も一人、担げよ」
風夜のその言葉に火焔は深く溜め息をついた。
「おいおい、まじかよ? 」
舞達を庇うように立っていた飛影が呆然と呟く。
同じように花音達の所から様子を見ていた舞も唖然としながら口を開く。
「ねぇ、……あの男、魔神族十人衆だって言ってなかった?凄い強いんじゃないの? 」
「……あ、ああ。その筈なんだがな」
そう呟いた飛影と一度顔を見合わせ、もう一度風夜達の方を見る。
「なんかどう見ても、風夜の方が圧倒しているように見えるんだけど」
「……なんか機嫌が悪いとは思っていたが、……色々振り切れてないか…… 」
その言葉通り、破皇の方が圧されているように見えた。
「……っ……、何故だ?十人衆である俺が……、たった一人の魔族に負けるなど……ある訳がない! 」
叫んだ破皇から爆発的に力が放たれたが、風夜は平気そうだった。
(だから、一体どうなってる訳……? )
「やばかったら加勢しようと思っていたが、必要なさそうだな」
飛影が苦笑混じりに言う。
「でも、風夜の様子もいつもと違うような……」
「……あいつが切れた時はいつもあんな感じだよ」
その時、聞こえてきた声に舞は振り返る。
そこには花音の能力で回復し、意識が戻ったらしい火焔の姿があった。
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「もう大丈夫なの? 」
「……ああ。花音に回復してもらったし、力も戻ったからな。……雷牙達に比べたら、回復するのも早かったって訳だ」
そこまで言って、火焔は風夜の方を見る。
「……荒れてるな。あそこまで切れてるのも珍しいが、魔族になった後では切れたの自体ないからな。今ではあれが普通か? 」
「普通って、あれが? 」
その時、舞と火焔の声が聞こえたのか、風夜が視線を向けてくる。
「……何だ、気がついたのか。丁度いい」
「……うげっ……」
視線が合った途端、火焔は嫌そうな声を上げる。
それとは違い、風夜はニヤリとした笑みを浮かべた。
「力が戻ったって言ったな。……協力しろ」
「……拒否は? 」
「出来ると思うか? 」
笑みを浮かべたままの風夜に、火焔は溜め息をつく。
「で、どうするって言うんだよ? 」
「決まってるだろ。……彼奴を雷牙達と同じ目に合わせてやる」
そう言った風夜の周りで強風が吹き荒れる。
「……少し力を貸せば大丈夫そうだな」
それを見た火焔が掌に灯した炎を軽い動作で風の中に放つ。
放たれたのは小さな火の玉位の大きさだったが、風夜の制御下に入るなり、それは一気に燃え上がった。
「……さてと」
風夜の視線が破皇に戻る。
「今度はお前が焼かれる番だ!」
それと同時に炎を巻き込んだ風の渦が放たれた。
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どの位時間が経ったのか、風夜が渦を解除した時、そこには破皇が倒れていた。
「……こ、この俺が……こんな、……魔族一人に……こんな……」
炎によるダメージでもう立つことも出来ないのか、倒れたままの破皇へ風夜が近付いていく。
その手に風が纏わり付いているのを見て、舞は思わず声を上げた。
「ちょっと、何を……」
「……決まってるだろ。止めを刺す」
「止めって、もう……」
言おうとした言葉は飛影に止められる。
「いいんだよ。彼奴らは正真正銘の敵だ。情けは必要ない」
その間にも風夜は破皇の近くに行き、冷たい目で見下ろしていた。
「……っ……」
風を纏った手を風夜が振り上げたのを見て、舞は視線を逸らして目を閉じる。
目を閉じてしまえば風の吹き荒れる音で何が起きているのかはわからない。
「……終わったようだぞ」
聞こえてきた飛影の声に目を開け、視線を戻した時には破皇の姿はなかった。
「……本当に容赦ないな」
「……一番俺が嫌いなタイプだったからな」
火焔に言い返した風夜の目が元の金色に戻る。
「……こっちも終わったよ」
それと同時に今まで治療に専念していた花音の声がしてくる。
「まだ意識はないけど、もう大丈夫だと思う。……奪われた力まではもどせなかったけど」
「……それは仕方ないだろ。……それより、戻るぞ。三人を休ませないとな」
「屋敷も気になるしね」
「火焔、お前も一人、担げよ」
風夜のその言葉に火焔は深く溜め息をついた。