このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第8章

1
「……焦げ臭い」
魔神族の軍を抑えにいっている神蘭達が戻ってくるのを待っていた舞達は、不意に聞こえてきた声に視線を向ける。
視線を受けた蒼牙は、鼻をひくつかせていた。
「蒼牙くん、どうしたの? 」
「……何か焦げ臭いよ。……それに何か変な音もする」
「変な音? 」
「うん。……バチバチって、何か弾けるみたいな音」
「何っ!? 」
それを聞いて、一番窓の近くにいた飛影が閉まっていたカーテンを開く。
その窓からは真っ赤な炎と逃げてくる街の人々が見えた。
「……ちょ、またっ……」
「でも、少し可笑しくないか!この炎……、ただ燃えてるというより、誰かが操っているような……」
「ああ……、これは火焔の力だ」
「……!力を奪われたんじゃないの!?」
迫ってくる炎を見据えながら言う風夜に、舞は声を上げる。
「……その筈なんだがな」
「なぁ、それより逃げなくていいのかよ!? 」
「早くしないと、此処まで火が来ちゃうよ! 」
「……いや、此処にいろ」
紅牙と蒼牙に言った封魔が舞を見る。
「逃げて来る奴等を屋敷の中に。……此処に結界を張る」
「……大丈夫なのか? 」
「……その位出来るくらいには回復してるさ」
飛影にそう返した封魔は、窓から出て屋根へと上っていってしまった。
2
「さぁ、早く中へ! 」
「急げ! 」
屋敷のすぐ外、扉を開け放った状態で舞と飛影は声を張り上げる。
封魔が結界を張ったのを確認し、逃げて来る街の人々を受け入れていく間にも炎は迫ってくる。
(……本当に大丈夫なのかな? )
回復したとは言っていたが、本当に屋敷に迫ってくる炎が防げるのか不安に思う。
「舞」
それが表情に出ていたのか、街の人々を誘導しながら、飛影が声を掛けてくる。
「……そんな不安そうな表情をしてるな。……街の連中も此処に逃げ込んで大丈夫なのか迷ってしまうぞ」
そう言われて舞はハッとした。
逃げて来る人々は皆、不安そうにしている。
避難を呼び掛けている舞が同じような表情をしていては安心することなど出来ないだろう。
(正直、病み上がりなのが心配ではあるけど、今は信じるしかない)
そう思ったのと同時に、花音と風夜がやってくるのが見えた。
それに気付いた街の人々が声を上げる。
「花音様!今度は一体何が? 」
「この人達は屋敷に入るようにいいましたけど、本当に大丈夫なんですか? 」
「何処か安全な場所に逃げた方がいいのでは! 」
「光輝様は、一体何をしてるんですか? 」
「皆、落ち着いて!! 」
次々と上がる声に、花音は聞こえるように声を上げた。
「この屋敷は結界に守られてます!此処にいれば、大丈夫!……不安なのはわかります。でも、今は私達を信じて下さい」
そう言う花音の横にいる風夜が視線で外に出るよう伝えてきた。
先に屋敷を出ていた舞と飛影の所へ花音と風夜が来た時には、封魔が張った結界に炎が押し寄せているのが見えた。
「……本当に大丈夫なのかな?凄い勢いだけど」
「神蘭達と連絡はついたからな。……封魔が限界になる前には誰かしら戻ってくるだろ。それより……」
風夜がそう答えて、ある方向へ視線を向ける。
「力の出所は分かった。……元を叩きに行くぞ」
その声は苛つきを抑えているように聞こえた。
2/6ページ
スキ