第7章
1
「…………」
「何してんだ? 」
後ろからの声に舞は大きく肩を震わせ、慌てて振り返る。
そこには不思議そうに見てくる飛影の姿があった。
「で、何を見てるんだ? 」
舞が見ていたのと同じ方向へ飛影は視線を向ける。
その先には雷牙、光輝、夜天がいた。
「あの三人がどうかしたのか? 」
「えっ?……う、ううん。ただ仲がいいなって思ってただけ」
「……ふぅん」
「本当にそれだけだから、気にしないで」
納得していない様子の飛影に苦笑いして、舞は逃げるようにその場を後にする。
そうしながらも、舞は風夜から忠告を受けた後、彼ともう一度話した時のことを思い出していた。
『この件はまだ私達の間だけに留めておこう』
そう言ったのは、神蘭だった。
『そうだな。あまり事を荒立てることはないだろ』
『でも、私達だけで封魔さんをずっと見てるのも可笑しいと思われるんじゃない? 』
『いや。それなら、俺達と神蘭達が交代でつくから大丈夫だ。理由なら何とでもつけられる』
舞の言葉に蒼魔が返した。
『まぁ、あの三人も強行手段には出ないだろう。……封魔が気付くまで、そこの守りだけ今は固めておけばいい』
『もし、その三人が動かないことに魔神族が痺れを切らせて動いたらどうするの? 』
『その時はそうなってからだ。その時の状況に応じて対応するしかない』
そう言った風夜に舞は頷いた。
2
飛影と別れた舞は、封魔のいる部屋へと来ていた。
(あれ?誰もいない)
中を覗いて眠っている封魔しかいない事に気付いて部屋へと入る。
(もう……、誰かいるんじゃなかったの? )
誰の番なのかはわからないが、誰かが来るまではいた方がいいだろうと椅子に腰を下ろす。
「……何時になるのかわからないけど、早く目を覚まさないと少し厄介なことになりそうだよ」
まだ目覚めない封魔にポツリと呟く。
その時、誰かが近付いてくる音がして、舞は警戒するように入口を見る。
風夜は雷牙達が強行手段に出ることはないだろうと言っていたが、その三人かもしれないと思うと気が抜けない。
だが、入ってきたのは白夜だった。
「ん?何だ。いないと思ったら、此処にいたのか? 」
「……何かあったの? 」
「……ああ。街の外で倒れている二人がいたらしくてな。とりあえず、話を聞くってことで行ってたんだよ」
「倒れてた? 」
「ああ。他の奴等はまだ話を聞いてる。俺は此処もあるから、先に抜けてきた。……正直、このタイミングで見ず知らずの奴が現れるなんて怪しいからな。話が終わったらもう一人此処に来ることになった」
「……そうですね。その方がいいかも」
白夜に舞は頷いて返す。
舞はどんな人物が現れたのかはまだ知らないが、白夜の言ったことに同意見だった。
3
白夜の所に話が終わったのだろう龍牙が来て、彼と入れ替わる形で舞は倒れていた二人が気になり、話を聞いていたという部屋へと向かっていた。
その途中で雷牙とすれ違う。
何かを考えているのに集中していた彼は、舞に気付かないで何処かに歩いていく。
その様子を見て、何故か彼を追い掛けた方がいいと思った舞は踵を返した。
雷牙の後をつけていくと、一つの部屋へと入っていく。
扉の前に行き、舞は少しだけ扉を開けて中を覗き込む。
倒れていたという二人がいるのかと思ったのだが、中にいたのは夜天と光輝のようだった。
「……なぁ、雷牙。お前が言ってたの本当のことなのか? 」
そんな夜天の声が聞こえてきて、何の話かと耳を澄ませる。
「……らしいな」
「らしいって、他人事みたいだな」
「仕方ないだろ。俺だって最近知ったんだ。……俺の本当の親が魔神族で俺もそうだなんて」
雷牙の少し泣きそうにも聞こえる声がする。
「……でも、どうしたらいいんだよ?彼奴らの言うことを聞かなければ、俺たちの国が攻撃される。……まだ気が付いていない封魔は監視さえ外せれば如何にか出来るだろうけど、……それは……」
「……姉上と風夜の意に反する……か」
「ああ。……あの二人は本当に封魔のことを助けるつもりで動いてた。刹那と星夢も……二人の意をくんで協力していた」
「……一年前、火焔達は国の為、花音達を裏切った。……それを、今度は俺たちがやらないといけないのか」
「……あいつらが裏切るってことはないだろうからな。本来なら魔神族である雷牙と俺たちに目を付けたってところか」
苛立ったような光輝の声と共に壁を殴りつけるような音も聞こえてくる。
「……何れにしても、監視が付いた以上、俺たちも……、あまりゆっくりはしていられないってことか」
そこまで聞いて、舞は中にいる三人に気付かれないようにその場から離れた。
歩きながら、舞は今聞いてしまった話を思い出していた。
(……あの三人、魔神族に脅されているのは間違いない無さそうだけど、向こうはどうしてそこまでして封魔の始末を……)
そう思いつつ、考えてる内に足が止まる。
三人の話だと監視が付いたということだったので、恐らくは舞がこれから会いに行こうとしていた者達がそうなのだろう。
(もしかしたら、そろそろ動くのかも)
雷牙達が迷っているのはわかった。
だが、監視がついたのなら、動かない訳にはいかなくなったかもしれない。
(そういえば、風夜は何処まで気付いてるんだろう? )
そこで浮かんだのは、様子が可笑しかった雷牙を見た時に忠告してきた風夜のことだった。
「ああ。雷牙から相談されたんだよ」
話を聞こうと呼び出すと、風夜はあっさりとそう答えた。
「相談って何時? 」
「……まだアジトにいた時にな。……俺も今の彼奴に近い経験があるからな。……もっともその時に開いたのは彼奴が魔神族で、両親がアジトにいるってことだがな」
「……じゃあ、光輝と夜天のことは? 」
「星夢に見てもらった」
「……なら、何か他に対策した方がいいんじゃないの? 」
「……いや、このまま様子を見る。神蘭達ともそう話しただろ」
そう言って話は終わりだと立ち去ってしまう。
納得はいってなかったが、風夜の向かう先に花音の姿が見え、呼び止めるのを諦めた。
「…………」
「何してんだ? 」
後ろからの声に舞は大きく肩を震わせ、慌てて振り返る。
そこには不思議そうに見てくる飛影の姿があった。
「で、何を見てるんだ? 」
舞が見ていたのと同じ方向へ飛影は視線を向ける。
その先には雷牙、光輝、夜天がいた。
「あの三人がどうかしたのか? 」
「えっ?……う、ううん。ただ仲がいいなって思ってただけ」
「……ふぅん」
「本当にそれだけだから、気にしないで」
納得していない様子の飛影に苦笑いして、舞は逃げるようにその場を後にする。
そうしながらも、舞は風夜から忠告を受けた後、彼ともう一度話した時のことを思い出していた。
『この件はまだ私達の間だけに留めておこう』
そう言ったのは、神蘭だった。
『そうだな。あまり事を荒立てることはないだろ』
『でも、私達だけで封魔さんをずっと見てるのも可笑しいと思われるんじゃない? 』
『いや。それなら、俺達と神蘭達が交代でつくから大丈夫だ。理由なら何とでもつけられる』
舞の言葉に蒼魔が返した。
『まぁ、あの三人も強行手段には出ないだろう。……封魔が気付くまで、そこの守りだけ今は固めておけばいい』
『もし、その三人が動かないことに魔神族が痺れを切らせて動いたらどうするの? 』
『その時はそうなってからだ。その時の状況に応じて対応するしかない』
そう言った風夜に舞は頷いた。
2
飛影と別れた舞は、封魔のいる部屋へと来ていた。
(あれ?誰もいない)
中を覗いて眠っている封魔しかいない事に気付いて部屋へと入る。
(もう……、誰かいるんじゃなかったの? )
誰の番なのかはわからないが、誰かが来るまではいた方がいいだろうと椅子に腰を下ろす。
「……何時になるのかわからないけど、早く目を覚まさないと少し厄介なことになりそうだよ」
まだ目覚めない封魔にポツリと呟く。
その時、誰かが近付いてくる音がして、舞は警戒するように入口を見る。
風夜は雷牙達が強行手段に出ることはないだろうと言っていたが、その三人かもしれないと思うと気が抜けない。
だが、入ってきたのは白夜だった。
「ん?何だ。いないと思ったら、此処にいたのか? 」
「……何かあったの? 」
「……ああ。街の外で倒れている二人がいたらしくてな。とりあえず、話を聞くってことで行ってたんだよ」
「倒れてた? 」
「ああ。他の奴等はまだ話を聞いてる。俺は此処もあるから、先に抜けてきた。……正直、このタイミングで見ず知らずの奴が現れるなんて怪しいからな。話が終わったらもう一人此処に来ることになった」
「……そうですね。その方がいいかも」
白夜に舞は頷いて返す。
舞はどんな人物が現れたのかはまだ知らないが、白夜の言ったことに同意見だった。
3
白夜の所に話が終わったのだろう龍牙が来て、彼と入れ替わる形で舞は倒れていた二人が気になり、話を聞いていたという部屋へと向かっていた。
その途中で雷牙とすれ違う。
何かを考えているのに集中していた彼は、舞に気付かないで何処かに歩いていく。
その様子を見て、何故か彼を追い掛けた方がいいと思った舞は踵を返した。
雷牙の後をつけていくと、一つの部屋へと入っていく。
扉の前に行き、舞は少しだけ扉を開けて中を覗き込む。
倒れていたという二人がいるのかと思ったのだが、中にいたのは夜天と光輝のようだった。
「……なぁ、雷牙。お前が言ってたの本当のことなのか? 」
そんな夜天の声が聞こえてきて、何の話かと耳を澄ませる。
「……らしいな」
「らしいって、他人事みたいだな」
「仕方ないだろ。俺だって最近知ったんだ。……俺の本当の親が魔神族で俺もそうだなんて」
雷牙の少し泣きそうにも聞こえる声がする。
「……でも、どうしたらいいんだよ?彼奴らの言うことを聞かなければ、俺たちの国が攻撃される。……まだ気が付いていない封魔は監視さえ外せれば如何にか出来るだろうけど、……それは……」
「……姉上と風夜の意に反する……か」
「ああ。……あの二人は本当に封魔のことを助けるつもりで動いてた。刹那と星夢も……二人の意をくんで協力していた」
「……一年前、火焔達は国の為、花音達を裏切った。……それを、今度は俺たちがやらないといけないのか」
「……あいつらが裏切るってことはないだろうからな。本来なら魔神族である雷牙と俺たちに目を付けたってところか」
苛立ったような光輝の声と共に壁を殴りつけるような音も聞こえてくる。
「……何れにしても、監視が付いた以上、俺たちも……、あまりゆっくりはしていられないってことか」
そこまで聞いて、舞は中にいる三人に気付かれないようにその場から離れた。
歩きながら、舞は今聞いてしまった話を思い出していた。
(……あの三人、魔神族に脅されているのは間違いない無さそうだけど、向こうはどうしてそこまでして封魔の始末を……)
そう思いつつ、考えてる内に足が止まる。
三人の話だと監視が付いたということだったので、恐らくは舞がこれから会いに行こうとしていた者達がそうなのだろう。
(もしかしたら、そろそろ動くのかも)
雷牙達が迷っているのはわかった。
だが、監視がついたのなら、動かない訳にはいかなくなったかもしれない。
(そういえば、風夜は何処まで気付いてるんだろう? )
そこで浮かんだのは、様子が可笑しかった雷牙を見た時に忠告してきた風夜のことだった。
「ああ。雷牙から相談されたんだよ」
話を聞こうと呼び出すと、風夜はあっさりとそう答えた。
「相談って何時? 」
「……まだアジトにいた時にな。……俺も今の彼奴に近い経験があるからな。……もっともその時に開いたのは彼奴が魔神族で、両親がアジトにいるってことだがな」
「……じゃあ、光輝と夜天のことは? 」
「星夢に見てもらった」
「……なら、何か他に対策した方がいいんじゃないの? 」
「……いや、このまま様子を見る。神蘭達ともそう話しただろ」
そう言って話は終わりだと立ち去ってしまう。
納得はいってなかったが、風夜の向かう先に花音の姿が見え、呼び止めるのを諦めた。