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第7章

1
「ふぅ……」
光の街、光輝の屋敷。舞達が談笑していた部屋に花音が溜め息を吐きながら入ってきたのは、封魔が連れ戻されてから二時間後のことだった。
「先輩。……封魔……さんの様子は? 」
「とりあえずは大丈夫だと思う。……刹那くんのお陰で傷は塞がったしね。……時間操作をした分、目が醒めるには時間が掛かるらしいから、意識が戻るのはまだまだだと思うけど」
問い掛けた舞に花音は答える。その表情は疲れてはいたが、明るいものだった。
「それならよかった。やっぱり今回の件で情報を色々と持っているのは彼だろうから、意識が戻ったら聞き出したいことが沢山あるしね」
聖奈がそう声を上げる。
「花音、疲れてるでしょ?少し休んで来たら? 」
「うん。そうするよ」
綾に返した花音が去って行く。それを見送ってから、舞は聖奈と綾に封魔の所へ少し行ってくると告げ、二人と別れた。
花音からもう大丈夫だと聞いてはいたものの、自分でも様子を見ておこうと彼がいる部屋の近くまで来て、その部屋の様子を伺っている後ろ姿を見付けた。
「何してるの? 」
「!? 」
掛けた声に肩を跳ねさせ、振り返ったのは雷牙だった。
「様子を見に来たんなら、入ればいいのに」
「……いや、出直すよ」
そう言って、足早に立ち去っていく。
「? 」
それに少し違和感を感じたが、何なのかは分からず、考えるのは止めて中に入る。
そこには舞と同じ様に様子を見に来たのだろう神蘭と蒼魔の姿があった。
(この二人がいたから、遠慮したのかな? )
部屋に入ることなく去って行った雷牙を思い出していると、舞に気付いた神蘭が声を掛けてきた。
「舞も様子を見に来たのか? 」
「はい。花音先輩からもう大丈夫だって聞いたので。まだ意識は戻らないらしいけど、気になって……」
「……そうか」
そう呟いて、神蘭は眠っている封魔を見下ろす。
「二人もそう聞いて、様子を見に来たんじゃないんですか? 」
「ああ。俺達が聞いたのは、刹那って奴だったけどな。……それにしても、相変わらず他人に頼るのが下手な奴だ。一人で全部背負いこんで、一人で傷付いて……。……まぁ、俺らがいなくなってしまったことがいけないんだろうけどな」
「……それだけじゃないですよ。……私達も昔、彼のことを追い詰めてしまったから。それ以来、余計に一人で動こうとするようになってしまったんです。……封魔を助けようと動いてくれた花音達には礼を言わないとな」
それを聞きながら、舞は封魔を見る。
花音が言っていたように怪我は治っているようだったが、目覚める様子はまだなかった。
2
神蘭と蒼魔と共に部屋を出ると、其処には再び雷牙の姿があった。
「!! 」
目が合い舞が声を掛けようとすると、何故か逃げるように去って行く。
「……って、また!? 」
「また? 」
声を上げた舞を神蘭が訝しげに見てくる。
「さっきもいたんです。部屋の様子を伺ってて、二人がいたから入らなかったんだと思っていたんですけど」
「別に遠慮しなくていいのにな」
蒼魔が言った時、雷牙が去ったのと別の方向から風夜が歩いてくるのがわかった。
「今、此処に雷牙がいたな」
近づいて来るなり言われて、少し不思議に思いつつ頷く。
「いたけど……、それがどうかしたの? 」
「……封魔が気がつくまでは必ず誰かが此処にいるようにしろ。……それと」
一度気配を探るような素振りを見せ、風夜は声を潜めた。
「雷牙と、一応、光輝、夜天にも気を付けておけ」
「どういう意味だ? 」
「……念の為にだよ。……俺の方でも監視はしておく」
それだけ言って去って行く。
残された舞達は訳が分からず、ただ顔を見合わせた。
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