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第6章

1
封魔のお陰で何ともなかったものの、すぐに強い殺気を受けて舞は息を呑む。
初撃でなくなった壁の向こうから一人の魔神族がゆっくりと近付いてくるが、只者ではない気がする。
「……今までよく言うことを聞いていたと思ったが、ここで裏切るか……」
「……従わざるを得ない状況をつくっておいて、よく言うな。……俺はもうあんたの言いなりはごめんだ」
言い返しつつ、封魔が刹那に目配せし、それに頷いた刹那が集中し始めるのを確認すると視線を戻す。
「……数百年だ。……あんたの正体を知り、兄上達を一度失い、付け込まれて〈人形〉のように兵器として扱われてからな。……全員とはいかないが」
封魔の手にエネルギーが集まる。
「そろそろ、その素顔を晒したらどうだ!! 」
言葉と共に放たれた攻撃を男は顔を少し傾けるようにして避けようとしていたが、続けて放たれていた第ニ波によって仮面は弾き飛んだ。
「「!! 」」
仮面の下、現れた顔を見て、誰もが息を呑んだ。
「総……長……」
呟いたのは誰だったのかわからないが、衝撃が強かったのはわかる。
「……何であなたが……」
「……数百年前の事件、裏で糸を引いてたのは此奴だったんだよ」
封魔が総長を睨み付けたまま言う。
その先で今までずっと総長だと思っていた男がニヤリと笑みを浮かべ、姿を消す。
(何処へ!? )
舞が消えた姿を探して辺りを見回していると、能力を使う為、集中に入っていた刹那を風夜が突き飛ばすのが見えた。
反動を利用して彼自身も反対の方向へと跳んだ直後、二人がいた場所に総長の姿が現れた。
「ちっ、今のでやり直しだ」
舌打ちと共に刹那の声が聞こえてくる。
人数が多いからか、移動するにも時間が掛かるのだろう。
このまま邪魔をされていてはいつになっても脱出できない。
かといって、今の本調子ではない上、動揺している者達ではとてもではないが相手にならない。
「……星夢」
「……いいのね。……こっちよ」
封魔の声に星夢が少し目を閉じた後、総長が壊した壁の方へと走り出す。
「……行こう」
「……急げ」
花音と風夜の声にどうするのかわからないまま、星夢の後を追い掛けるように走り出す。
当然、総長は邪魔をしてくると思っていたが、その前に立ちはだかっている封魔にそれを邪魔されたようで、舞達は洞窟から出ることが出来た。
2
「……此処なら大丈夫」
「よし」
星夢が立ち止まった場所で、刹那が再び集中に入る。
それを確認し、何気なく周囲を見回して舞はあることに気付いた。
「封魔がいない……」
舞がそれを口にする前に、神蘭の声がする。
「……ああ。あいつなら、彼処に残った」
「残ったって……」
「……誰かが時間稼ぎしないと、逃げられそうになかったしな」
白鬼と風夜の声に、舞は一人だけ動くどころか総長の前に立ちはだかっていた姿を思い出す。
(やっぱり、ついてきてなかったんだ)
「っ! 」
舞がそんな事を思っていると、神蘭達が踵を返そうとする。
だが、その行く手を遮るように立った花音が首を横に振り、それとほぼ同時に準備が出来たらしい刹那の声がした。
「……行くぞ」
「ちょっ、待って!」
本当に置いていくつもりなのかと舞も声を上げたが、刹那の力はそのまま発動され、気が付いた時には光の街にいた。
「……光輝の屋敷で待ってるね」
「ああ」
街へ着いたかと思うと、花音の言葉に風夜が頷き、今度は彼と刹那の姿だけが消える。
「じゃあ、行きましょうか。これからのこと、今までのことはそこで話しましょう」
「光輝に言えば部屋を用意してくれるはずだから、戻ってくるまで休んだ方がいいですよ」
星夢と花音が歩き出し、雷牙と白鬼はついて行く。
「……何だか、全部事前に打ち合わせてあったみたいな動きね」
そんな四人の姿を見ながら言ったのは鈴麗だった。
「……星夢がいるからな。……この事態もある程度、予測はしていたんだろうけどな」
「……封魔を彼処に残してきたのが最善だったってことか……」
龍牙と白夜が神蘭を見る。
「……」
二人の視線を受けながらも、神蘭は黙って顔を俯かせている。
(……大丈夫、だよね? )
舞もすぐ引き返すように姿を消した風夜と刹那のいた場所を見ながら言う。
多分二人は封魔を連れてくる為にもどったのだろう。
時間もそんなに経ってはいないから大丈夫だろうとは思うのだが、それを口に出して言うことは何故か出来なかった。
花音達より遅れて屋敷へ戻ると、報告の為神界と魔界へ行っていた星蓮と莉鳳が戻ってきていて、先に戻った花音達から話を聞いているところだった。
「あなた達……!? 」
驚いたように過去の闘神達を見る星蓮に、彼等は軽く頭を下げる。
「星蓮様、実は……」
「……花音達から話は聞いてるわ」
何があったのか説明しようとしたのだろう聖羅にそう返し、星蓮は溜め息を付いた。
「……私はもう一度、報告に行かないといけないみたいね」
そう呟いて、屋敷から出て行く。
それと入れ替わるように彼女が出て行ってすぐ、屋敷の扉が勢いよく開いた。
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