第5章
1
『…………』
神界軍本部。光鈴は総長、副総長の頼みである部屋に向かっていた。
(確か総長達の息子って……、闘神の最後の生き残りだったよね?最近、何だか様子が可笑しかったっていうから何か変な術でも掛けられたのかも。それなら、光麗も行ってるかな)
魔神族との戦いが本格化してからなかなか会えない友人の一人を思い出し、光鈴は小さく笑った。
自分の仕事の中で少し会えるだけでも今は嬉しい。
そんなことを思っている間にも、目的の部屋の前へと着いた。
『失礼しま……』
『光鈴!? ……来ちゃ駄目! 逃げて! 』
『えっ!? 』
声を掛け扉を開けて入ろうとしたところで、先に来ていたのだろう光麗の声がする。
『あぅっ……』
何が起きているのか、彼女が何故そんなことを言ったのかわからないうちに光麗が誰かに斬りつけられ倒れこんだ。
『光麗! 』
怪我を治そうと駆け寄った時、光鈴の背中にも痛みが走った。
『なっ……!? 』
斬られたと思った時には既に遅く、光麗と共に剣で貫かれる。
意識が薄まっていく中、最後に見たのは闘神が身に付ける軍服と此方を冷たく見下ろす紫の眼。
そして
『よくやった、封魔』
聞いたことのある声がやはり聞いたことのある名を呼んだのを最後に、光鈴の意識はなくなった。
2
「っ!! 」
ハッと花音は飛び起きる。気が付いたのは、ベッドの上だった。
(今のは……私の……)
「気が付いたか? 」
その声に視線の向けると、封魔の姿があった。
「封魔……さん……」
いつもどおり声を出したつもりだったが、身体が震えるのを感じる。
「あれ……? 」
「……力が戻ってきて、記憶も戻りかけてるか」
封魔が近付いてくる程、酷くなる震えに花音が首を傾げると、封魔がそう呟いた。
「じゃあ、やっぱりあれは……」
「……ああ、そうだ。お前の前世、光鈴を殺したのは……俺だ」
「……見間違いじゃなかったんですね。……理由を聞いても? 」
そう問いかけはしたが、その時の封魔がどんな状態だったのかは予想がついていた。
【光鈴】として最後に見た封魔は、酷く冷たい目をしていて、自分の意思すらはっきりしていなかった記憶がある。
ただ、その時のことを封魔がどの位覚えているのかを知りたかった。
「……言ったところで信じてもらえるのかはわからないが、あの頃の俺は俺じゃなかった。……正確に言うと、俺としての意識はあったが、それとは違うもう一つの意識があり、それが奴等の指示を聞いていた。情けない話だが俺はそれに逆らう訳にはいかなかった」
「奴等っていうのは? 」
聞きながらも、花音には少しだけ心当たりがあった。
「…………」
「……前世で命を落とす前、光鈴としても花音としても、聞いたことのある声を聞きました。あの時の声は……」
封魔が諦めたように溜め息をつく。
「……ああ、そうだ。……奴等は魔神族に忠誠を誓っている」
「神蘭さん達には伝えないんですか?
」
「……今はまだ……な」
花音の問いに封魔はそう呟く。
「……そうですか」
「安心しろ。かといって、このまま奴等を放っておくつもりはない。時期が来たら……」
そこまで言って、封魔は踵を返す。
(もしかしたら、封魔さんは……)
花音の中に一つの考えが浮かぶ。
(そうだとしたら……)
それを阻止する為に動かないとならない。
(風夜と刹那くんにも言って、協力してもらおう。でも、その前に……)
まずは目覚めたばかりの光鈴の力をきちんと使いこなせるようになる必要があった。
『…………』
神界軍本部。光鈴は総長、副総長の頼みである部屋に向かっていた。
(確か総長達の息子って……、闘神の最後の生き残りだったよね?最近、何だか様子が可笑しかったっていうから何か変な術でも掛けられたのかも。それなら、光麗も行ってるかな)
魔神族との戦いが本格化してからなかなか会えない友人の一人を思い出し、光鈴は小さく笑った。
自分の仕事の中で少し会えるだけでも今は嬉しい。
そんなことを思っている間にも、目的の部屋の前へと着いた。
『失礼しま……』
『光鈴!? ……来ちゃ駄目! 逃げて! 』
『えっ!? 』
声を掛け扉を開けて入ろうとしたところで、先に来ていたのだろう光麗の声がする。
『あぅっ……』
何が起きているのか、彼女が何故そんなことを言ったのかわからないうちに光麗が誰かに斬りつけられ倒れこんだ。
『光麗! 』
怪我を治そうと駆け寄った時、光鈴の背中にも痛みが走った。
『なっ……!? 』
斬られたと思った時には既に遅く、光麗と共に剣で貫かれる。
意識が薄まっていく中、最後に見たのは闘神が身に付ける軍服と此方を冷たく見下ろす紫の眼。
そして
『よくやった、封魔』
聞いたことのある声がやはり聞いたことのある名を呼んだのを最後に、光鈴の意識はなくなった。
2
「っ!! 」
ハッと花音は飛び起きる。気が付いたのは、ベッドの上だった。
(今のは……私の……)
「気が付いたか? 」
その声に視線の向けると、封魔の姿があった。
「封魔……さん……」
いつもどおり声を出したつもりだったが、身体が震えるのを感じる。
「あれ……? 」
「……力が戻ってきて、記憶も戻りかけてるか」
封魔が近付いてくる程、酷くなる震えに花音が首を傾げると、封魔がそう呟いた。
「じゃあ、やっぱりあれは……」
「……ああ、そうだ。お前の前世、光鈴を殺したのは……俺だ」
「……見間違いじゃなかったんですね。……理由を聞いても? 」
そう問いかけはしたが、その時の封魔がどんな状態だったのかは予想がついていた。
【光鈴】として最後に見た封魔は、酷く冷たい目をしていて、自分の意思すらはっきりしていなかった記憶がある。
ただ、その時のことを封魔がどの位覚えているのかを知りたかった。
「……言ったところで信じてもらえるのかはわからないが、あの頃の俺は俺じゃなかった。……正確に言うと、俺としての意識はあったが、それとは違うもう一つの意識があり、それが奴等の指示を聞いていた。情けない話だが俺はそれに逆らう訳にはいかなかった」
「奴等っていうのは? 」
聞きながらも、花音には少しだけ心当たりがあった。
「…………」
「……前世で命を落とす前、光鈴としても花音としても、聞いたことのある声を聞きました。あの時の声は……」
封魔が諦めたように溜め息をつく。
「……ああ、そうだ。……奴等は魔神族に忠誠を誓っている」
「神蘭さん達には伝えないんですか?
」
「……今はまだ……な」
花音の問いに封魔はそう呟く。
「……そうですか」
「安心しろ。かといって、このまま奴等を放っておくつもりはない。時期が来たら……」
そこまで言って、封魔は踵を返す。
(もしかしたら、封魔さんは……)
花音の中に一つの考えが浮かぶ。
(そうだとしたら……)
それを阻止する為に動かないとならない。
(風夜と刹那くんにも言って、協力してもらおう。でも、その前に……)
まずは目覚めたばかりの光鈴の力をきちんと使いこなせるようになる必要があった。