第4章
1
「…………」
自分達を包んでいた光が消え、玉の中に収束していく。
その光が消えたのを確認してから舞は辺りを見回した。
周りは薄暗く、少し先に格子のような物が見える。
「……上手く入り込めたのかな?」
「多分な。……此処からは自分達で探せってことか」
呟いた舞に飛影はそう返し歩き出し、舞も二人が何処にいるのかまではわからなかった為、周囲を確認しながら歩き出した。
魔神族に気付かれないよう気をつけて進んでどの位経ったのか、ある牢の前で舞は足を止めた。
暗くてはっきりとは見えなかったが、二人の人物が膝を抱えて座っている。
「聖奈ちゃん?」
「っ!」
外から呼び掛けると、その内の一人がハッと顔を上げた。
「舞ちゃん!?どうして此処に?」
「話は後にしよう。とにかく今は此処から逃げ出さないと!」
舞はそう言って牢を開けようとして、それを開ける鍵を持っていないことに気付いた。
「どいてろ」
飛影が細長い棒状のものを鍵穴に差し、少ししてから小さく音がする。
「よし!」
小さく呟いて、飛影が扉を開ける。
それと同時に舞は中に入り、聖奈へ駆け寄った。
「行こう!ほら、あなたも!」
聖奈の手をとり、座っているもう一人ーー佐々木綾と思われる少女に声を掛ける。
「私も?でも、此処に花音もいるんでしょ?花音はどうするの?」
その言葉で彼女と舞が此処で顔を合わせていることを知った。
「……先輩は……」
「……花音なら心配ない。彼女よりも今は二人の方が危険だから、私達についてきてほしい」
口籠った舞と変わるように神蘭が言う。
「……まぁ、此処にいても悪い事にしかならなさそうだしね」
「よし、じゃあ……」
舞がそう言った時、此方に近付いてくる足音が聞こえてくる。
「まずいな。こっちに来る」
「移動するぞ」
白羅の言葉に舞達は足音が聞こえてくる方向とは逆の方向へ急いだ。
2
「危なかったですね……」
一度牢のある地下を出て、一つの部屋へ隠れたところで楓が息を吐く。
「とはいっても、牢を出た以上、奴等のアジトの中にいることになる。長居は危険だな」
「そうだね。……あれ」
玉を出そうとして、舞は声を上げる。
牢にいた時は持っていた筈なのに、今はない。
「あれ?……どうしよう」
「どうした?」
「……落としたみたい」
「「はあっ!?」」
舞が言うと、飛影と莉鳳が何をやっているんだというように声を上げる。
「さっきまでは持ってたんだけど、ごめんなさい」
「……失くしてしまったものは仕方ないわ。でも、どうやって脱出しましょうか?」
「……こうなったら、少しの危険は承知で、刹那か花音、風夜を探すしかないな」
「でも、それだと封魔も一緒にいる可能性もあるんじゃないのか?」
神蘭が言ったことに、飛影が返す。
「そうね。……風夜の言葉と信じるなら、封魔は疑われてる。彼がまだ目的を果たしていないなら、これ以上疑いが掛かるようなことはしない筈。寧ろ、妨害してくる可能性が高い」
星蓮が言った時、それまで口を挟まずついてきているだけだった聖奈と綾が不安そうな表情をしているのに気付いて舞は口を開く。
だが、声を発する前に舞達がいた部屋の扉が開かれた。
「こんな所にいた。……ったく、何してるのよ?」
「……星夢」
そこから入ってきた少女の名を神蘭が呟く。
「一応、様子を見てたんだけど、トラブルがあったみたいね。……仕方ない。少し手荒にはなるけど、……我慢してもらうわ」
その瞬間、突然足元の床の感覚が消え、下へと強く引っ張られるのを感じた。
「「「きゃあああ!」」」
急な感覚に舞、聖奈、綾が悲鳴を上げる。
それでも落ちるような感覚はすぐに消え、気がつけば洞窟のような場所にいた。
すぐ近くには巨大な水晶がある。
「此処は?」
「魔神族のアジトとは違うみたいだが」
星夜と莉鳳の声を聞きながら、何だか水晶が気になり近付いていく。
聖奈と綾も気になるのか後ろからついてきたが、ある程度まで近付いたところで三人は同時に息を飲んだ。
「……何、これ?」
「人が…….」
「何でこんな所に……」
「三人共、どうし……」
舞達に近付いてきた神蘭が目を見開く。
「怜羅様……!」
「蒼魔様!?」
「お二人だけじゃない!どうなってるんだ?」
楓が口元を手で覆い、星夜が呆然と呟く。
その時、近くで一つの足音が止まり、飛影、白羅、莉鳳、星蓮がハッと振り返る。
「……何故、お前達が此処にいる?」
聞こえてきた声に視線を向けると、鋭い視線を向けてくる封魔の姿があった。
3
「もう一度聞く。何故、此処にいる?それに……」
「「っ!!」」
封魔に視線を向けられ、聖奈と綾が身体を震わせる。
「その二人は牢に入れてたはずだが」
「……だからよ。二人を助けに来たの」
「それより、封魔、これはどういうことだ!?」
龍牙が言って、水晶を指す。
「どういうも何も見たままだ。……ずっと……、この中にいたんだよ」
「いたって……、知っていたならどうしてこのままなんですか?居場所がわかってるのに、どうして助けないで魔神族のいいなりに……」
「蒼魔様はあなたの兄でしょう!?見捨てるつもりですか!?」
「封魔!あなただって、怜羅様達のこと……」
「黙れ!何も知らないお前達に何がわかる!」
星夜、楓、神蘭が言うと、封魔は苛立ったように声を荒げ、幾つかの足音が聞こえてきた。
「封魔さん!」
「おい、どうしたって……」
「あちゃー……、思いっきり会っちゃってるし」
今の声が聞こえたらしい花音達が走ってきて、刹那と星夢が失敗したというように天を仰ぐ。
「……お前等!……まぁ、いい。首謀者と誰がどう手引きしたかわかった」
「あ、あははは」
一瞬声を荒げた封魔は、花音が誤魔化すように笑うと、溜め息をついた。
「……目的は果たしただろ?もう帰れ」
「でも!」
「いいから帰れ。……今のお前等にこれをどうにかすることも出来ない。……今回は見逃す。二度と来るな」
そう言って、封魔は去っていってしまった。
「刹那」
「……ああ」
「待って!先輩も!」
戻そうとしているのだろう刹那が集中し始めたのを見て、舞は花音を呼んだが、首を横に振られた。
「ごめんね。……でも、ほっとけないんだ」
「一つだけ忠告しておいてやる。……目に見えるものだけが真実じゃないってこと、覚えておいた方がいいぞ」
飛ばされる直前、花音と風夜のそんな声が聞こえ、此方に何かが投げ込まれた。
光の街に戻ってきて、舞が落ちていたそれを拾いあげる。
中を確かめれば、刹那の力が入っているのだろう、玉が幾つか入っていた。
「…………」
自分達を包んでいた光が消え、玉の中に収束していく。
その光が消えたのを確認してから舞は辺りを見回した。
周りは薄暗く、少し先に格子のような物が見える。
「……上手く入り込めたのかな?」
「多分な。……此処からは自分達で探せってことか」
呟いた舞に飛影はそう返し歩き出し、舞も二人が何処にいるのかまではわからなかった為、周囲を確認しながら歩き出した。
魔神族に気付かれないよう気をつけて進んでどの位経ったのか、ある牢の前で舞は足を止めた。
暗くてはっきりとは見えなかったが、二人の人物が膝を抱えて座っている。
「聖奈ちゃん?」
「っ!」
外から呼び掛けると、その内の一人がハッと顔を上げた。
「舞ちゃん!?どうして此処に?」
「話は後にしよう。とにかく今は此処から逃げ出さないと!」
舞はそう言って牢を開けようとして、それを開ける鍵を持っていないことに気付いた。
「どいてろ」
飛影が細長い棒状のものを鍵穴に差し、少ししてから小さく音がする。
「よし!」
小さく呟いて、飛影が扉を開ける。
それと同時に舞は中に入り、聖奈へ駆け寄った。
「行こう!ほら、あなたも!」
聖奈の手をとり、座っているもう一人ーー佐々木綾と思われる少女に声を掛ける。
「私も?でも、此処に花音もいるんでしょ?花音はどうするの?」
その言葉で彼女と舞が此処で顔を合わせていることを知った。
「……先輩は……」
「……花音なら心配ない。彼女よりも今は二人の方が危険だから、私達についてきてほしい」
口籠った舞と変わるように神蘭が言う。
「……まぁ、此処にいても悪い事にしかならなさそうだしね」
「よし、じゃあ……」
舞がそう言った時、此方に近付いてくる足音が聞こえてくる。
「まずいな。こっちに来る」
「移動するぞ」
白羅の言葉に舞達は足音が聞こえてくる方向とは逆の方向へ急いだ。
2
「危なかったですね……」
一度牢のある地下を出て、一つの部屋へ隠れたところで楓が息を吐く。
「とはいっても、牢を出た以上、奴等のアジトの中にいることになる。長居は危険だな」
「そうだね。……あれ」
玉を出そうとして、舞は声を上げる。
牢にいた時は持っていた筈なのに、今はない。
「あれ?……どうしよう」
「どうした?」
「……落としたみたい」
「「はあっ!?」」
舞が言うと、飛影と莉鳳が何をやっているんだというように声を上げる。
「さっきまでは持ってたんだけど、ごめんなさい」
「……失くしてしまったものは仕方ないわ。でも、どうやって脱出しましょうか?」
「……こうなったら、少しの危険は承知で、刹那か花音、風夜を探すしかないな」
「でも、それだと封魔も一緒にいる可能性もあるんじゃないのか?」
神蘭が言ったことに、飛影が返す。
「そうね。……風夜の言葉と信じるなら、封魔は疑われてる。彼がまだ目的を果たしていないなら、これ以上疑いが掛かるようなことはしない筈。寧ろ、妨害してくる可能性が高い」
星蓮が言った時、それまで口を挟まずついてきているだけだった聖奈と綾が不安そうな表情をしているのに気付いて舞は口を開く。
だが、声を発する前に舞達がいた部屋の扉が開かれた。
「こんな所にいた。……ったく、何してるのよ?」
「……星夢」
そこから入ってきた少女の名を神蘭が呟く。
「一応、様子を見てたんだけど、トラブルがあったみたいね。……仕方ない。少し手荒にはなるけど、……我慢してもらうわ」
その瞬間、突然足元の床の感覚が消え、下へと強く引っ張られるのを感じた。
「「「きゃあああ!」」」
急な感覚に舞、聖奈、綾が悲鳴を上げる。
それでも落ちるような感覚はすぐに消え、気がつけば洞窟のような場所にいた。
すぐ近くには巨大な水晶がある。
「此処は?」
「魔神族のアジトとは違うみたいだが」
星夜と莉鳳の声を聞きながら、何だか水晶が気になり近付いていく。
聖奈と綾も気になるのか後ろからついてきたが、ある程度まで近付いたところで三人は同時に息を飲んだ。
「……何、これ?」
「人が…….」
「何でこんな所に……」
「三人共、どうし……」
舞達に近付いてきた神蘭が目を見開く。
「怜羅様……!」
「蒼魔様!?」
「お二人だけじゃない!どうなってるんだ?」
楓が口元を手で覆い、星夜が呆然と呟く。
その時、近くで一つの足音が止まり、飛影、白羅、莉鳳、星蓮がハッと振り返る。
「……何故、お前達が此処にいる?」
聞こえてきた声に視線を向けると、鋭い視線を向けてくる封魔の姿があった。
3
「もう一度聞く。何故、此処にいる?それに……」
「「っ!!」」
封魔に視線を向けられ、聖奈と綾が身体を震わせる。
「その二人は牢に入れてたはずだが」
「……だからよ。二人を助けに来たの」
「それより、封魔、これはどういうことだ!?」
龍牙が言って、水晶を指す。
「どういうも何も見たままだ。……ずっと……、この中にいたんだよ」
「いたって……、知っていたならどうしてこのままなんですか?居場所がわかってるのに、どうして助けないで魔神族のいいなりに……」
「蒼魔様はあなたの兄でしょう!?見捨てるつもりですか!?」
「封魔!あなただって、怜羅様達のこと……」
「黙れ!何も知らないお前達に何がわかる!」
星夜、楓、神蘭が言うと、封魔は苛立ったように声を荒げ、幾つかの足音が聞こえてきた。
「封魔さん!」
「おい、どうしたって……」
「あちゃー……、思いっきり会っちゃってるし」
今の声が聞こえたらしい花音達が走ってきて、刹那と星夢が失敗したというように天を仰ぐ。
「……お前等!……まぁ、いい。首謀者と誰がどう手引きしたかわかった」
「あ、あははは」
一瞬声を荒げた封魔は、花音が誤魔化すように笑うと、溜め息をついた。
「……目的は果たしただろ?もう帰れ」
「でも!」
「いいから帰れ。……今のお前等にこれをどうにかすることも出来ない。……今回は見逃す。二度と来るな」
そう言って、封魔は去っていってしまった。
「刹那」
「……ああ」
「待って!先輩も!」
戻そうとしているのだろう刹那が集中し始めたのを見て、舞は花音を呼んだが、首を横に振られた。
「ごめんね。……でも、ほっとけないんだ」
「一つだけ忠告しておいてやる。……目に見えるものだけが真実じゃないってこと、覚えておいた方がいいぞ」
飛ばされる直前、花音と風夜のそんな声が聞こえ、此方に何かが投げ込まれた。
光の街に戻ってきて、舞が落ちていたそれを拾いあげる。
中を確かめれば、刹那の力が入っているのだろう、玉が幾つか入っていた。