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第26章

1
「……はぁ……」
神帝のことについて話を聞いて数日、舞は今だに上手く整理をつけられずにいた。
封魔や星蓮が嘘をつくというより、仲間達を分断しかねないようなことを今更言うとは思えない。
だが、〈天華〉の記憶の中では神帝はいつも優しかったのだ。
(あの優しかった神帝が……)
その時、ある気配を感じ取る。
その気配には覚えはあるものの、今まで感じたことがないくらい弱々しい。
それが気になってしまい、舞は一人、城を抜け出し気配を感じる方へと向かった。
2
気配を感じた場所へと来ると、そこには木に凭れ掛かり、顔を俯かせている麗玲の姿があった。
向こうも舞に気付いたのか、のろのろと顔を上げる。
その顔色と表情に舞は思わず、息を飲んだ。
「……何か、あったの? 」
暫くの間、ずっと天華と麗玲として敵対していたが、この言葉は舞として麗香に掛けたものだった。
「……私……、ずっと利用されていたみたい」
それに対して、麗玲は弱々しく言葉を返してきた。
「利用って……、誰に? 」
「……神帝が生きていたのよ。私は… …、私達は皆、あの人の手で転がされてだけ……、私はただ……」
そこまで言って、言葉を止めてしまう 。
再び俯いてしまった彼女にどう声を掛けようかと迷っていると、泣くのを堪えようとしているような声が聞こえてきた。
「……麗……」
やはり何か声を掛けなければと口を開きかけたところで、不意に麗玲の身体が大きく震えた。
「……来た……」
呟いて、顔を上げた麗玲の目は舞を見ていない。
舞を通り越し、上空を見上げていた麗玲の表情が恐怖に歪むのを見て、舞は彼女の視線を追う。
「……!? 」
そこには舞と麗玲を無表情で見下ろしてきている者達が十人程いた。
(この気配は……、神族。でも)
僅かに違う気がして、顔を歪める。
次の瞬間、無表情にニヤリとした笑みを浮かべたかと思うと、舞達に向かって一斉に降下してきた。
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