第3章
1
「…………」
麗香が連れて行かれて一人になってしまった部屋の中、舞はベッドに横になる。
まだ日は落ちたばかりの時間で、舞以外は夕食を摂っている時間でもあったが、あまり食欲がなくて一人先に休むことにしていた。
(麗香……)
魔神族の神子だと知ってしまい、動揺していた麗香の事を思い出す。
(麗香を助けてあげられなかった……。それに、花音先輩があんなことを……)
そこまで思って、溜息をつく。
(……私はこれからどうすれば、いいんだろう?)
そんなことを思いつつ、これからのことを考えていたが、次第に疲れが出てきたのか眠気が襲ってくる。
舞はそれに逆らうことなく、目を閉じた。
2
『天華』
背後からの声に一人の少女が振り返る。
そこには一人の少年が立っていた。
『……飛影』
『またここにいたのか?』
『……ええ』
天華と呼ばれた少女は頷いて、一つの墓石へと目をやる。
『……いよいよ明日だから。その前に挨拶しにきてたの』
『……お前の親友、聖鈴だったか』
『……うん。……明日、麗玲達と決着をつければ、とりあえず平和な時を取り戻せる。まだ問題は多いけど、彼女の願いを叶えられる』
『だが、麗玲は強い。お前も只では済まないだろう』
『わかってる。覚悟はしてるよ。それより、あなたこそいいの?……私はあなたと同じ魔神族と戦うんだよ。私にとっては敵だけど、飛影にとっては……』
その天華の言葉に、飛影はふっと笑った。
『そんなこと、俺もとっくに覚悟はしてるさ。俺は何があっても、お前の味方だ』
『ありがとう。明日はよろしくね』
『ああ!』
柔らかな笑みを浮かべた天華に、飛影も笑みを見せる。
そこで場面が切り替わった。
周りに建物などのない広い場所、そこで白と黒という対称的な服装をした少女が二人対峙していた。
少し離れた所からは爆発音などが聞こえてくるが、その二人ーー天華と麗玲の周囲は静まりかえっている。
『……麗玲、ここで決着をつけよう』
『……そうね。私が勝って、魔神族が全ての世界を手にするか、あなたが勝ってそれを阻止できるか……、勝負よ。といっても、勝つのは私でしょうけどね』
『私は負けない!これまで犠牲になった人達の為にも、世界の為にも、あなたはここで倒す!』
そう言って、二人が同時に走り出す。
数秒後、二人がそれぞれ持っていた光り輝く細身の剣と、先端に禍々しい力が纏わり付いている槍が激しくぶつかり合った。
3
「……っ!!」
ハッと目を開け、舞は飛び起きる。
周囲を見れば、眠る前と同じく部屋の中にいて、変わったところはない。
「……今の夢?」
(麗玲って、麗香のことだよね。だけど、飛影と話してたり、麗玲と戦っていた《天華》っていうのは……。どうして、私の夢の中に……)
何となくもう寝る気にはなれなくて、ベッドから降りる。
まだ外は薄暗く、朝もまだ早い為、空気も冷たいが、気持ちを落ち着けるのには丁度よかった。
「……天華、か。飛影なら知ってるかな?」
夢の中で彼女と話していた彼なら、自分がどこか懐かしくも思える《天華》のことを知っているだろう。
まだ彼は寝ているだろうから、起きるのを待って、話を聞ければいいと思った。
「……天華?……お前、どこでその名を?」
朝食後、呼び出した飛影に聞かれ、舞は夢で見たことを話す。
「……なるほどな。そういうことか」
「天華は、昔、神界にいた神子の一人よ」
話した後、答えるどころか何か納得するように黙ってしまった飛影ではなく、星蓮が答える。
「神子ってことは、聖羅さんと同じ……」
「ええ。立場的には彼女と同じね。ただ、彼女達の持つ力はそれぞれが違うものだった。聖羅は対魔族、天華は対魔神族の為の力を持っていたの」
「だから、その天華って人が麗玲と戦った?」
「……そうよ。そして、戦いの果てに彼女は魔神族を封じ、命を落とした。麗玲の転生者がいるなら、天華の転生者がいても、おかしくはないのでしょうけど……」
「……そういえば、夢の中でもう一人《聖鈴》って名前が出てきたけど、その人は?」
星蓮の言葉に胸が騒ついたが、それには気付かない振りをして、もう一つの疑問を口にする。
「……そうね。……ここからはみんなのところで話しましょう。彼等にも知っといてほしいことがあるの」
そう言った星蓮の表情は真剣なものだった。
「…………」
麗香が連れて行かれて一人になってしまった部屋の中、舞はベッドに横になる。
まだ日は落ちたばかりの時間で、舞以外は夕食を摂っている時間でもあったが、あまり食欲がなくて一人先に休むことにしていた。
(麗香……)
魔神族の神子だと知ってしまい、動揺していた麗香の事を思い出す。
(麗香を助けてあげられなかった……。それに、花音先輩があんなことを……)
そこまで思って、溜息をつく。
(……私はこれからどうすれば、いいんだろう?)
そんなことを思いつつ、これからのことを考えていたが、次第に疲れが出てきたのか眠気が襲ってくる。
舞はそれに逆らうことなく、目を閉じた。
2
『天華』
背後からの声に一人の少女が振り返る。
そこには一人の少年が立っていた。
『……飛影』
『またここにいたのか?』
『……ええ』
天華と呼ばれた少女は頷いて、一つの墓石へと目をやる。
『……いよいよ明日だから。その前に挨拶しにきてたの』
『……お前の親友、聖鈴だったか』
『……うん。……明日、麗玲達と決着をつければ、とりあえず平和な時を取り戻せる。まだ問題は多いけど、彼女の願いを叶えられる』
『だが、麗玲は強い。お前も只では済まないだろう』
『わかってる。覚悟はしてるよ。それより、あなたこそいいの?……私はあなたと同じ魔神族と戦うんだよ。私にとっては敵だけど、飛影にとっては……』
その天華の言葉に、飛影はふっと笑った。
『そんなこと、俺もとっくに覚悟はしてるさ。俺は何があっても、お前の味方だ』
『ありがとう。明日はよろしくね』
『ああ!』
柔らかな笑みを浮かべた天華に、飛影も笑みを見せる。
そこで場面が切り替わった。
周りに建物などのない広い場所、そこで白と黒という対称的な服装をした少女が二人対峙していた。
少し離れた所からは爆発音などが聞こえてくるが、その二人ーー天華と麗玲の周囲は静まりかえっている。
『……麗玲、ここで決着をつけよう』
『……そうね。私が勝って、魔神族が全ての世界を手にするか、あなたが勝ってそれを阻止できるか……、勝負よ。といっても、勝つのは私でしょうけどね』
『私は負けない!これまで犠牲になった人達の為にも、世界の為にも、あなたはここで倒す!』
そう言って、二人が同時に走り出す。
数秒後、二人がそれぞれ持っていた光り輝く細身の剣と、先端に禍々しい力が纏わり付いている槍が激しくぶつかり合った。
3
「……っ!!」
ハッと目を開け、舞は飛び起きる。
周囲を見れば、眠る前と同じく部屋の中にいて、変わったところはない。
「……今の夢?」
(麗玲って、麗香のことだよね。だけど、飛影と話してたり、麗玲と戦っていた《天華》っていうのは……。どうして、私の夢の中に……)
何となくもう寝る気にはなれなくて、ベッドから降りる。
まだ外は薄暗く、朝もまだ早い為、空気も冷たいが、気持ちを落ち着けるのには丁度よかった。
「……天華、か。飛影なら知ってるかな?」
夢の中で彼女と話していた彼なら、自分がどこか懐かしくも思える《天華》のことを知っているだろう。
まだ彼は寝ているだろうから、起きるのを待って、話を聞ければいいと思った。
「……天華?……お前、どこでその名を?」
朝食後、呼び出した飛影に聞かれ、舞は夢で見たことを話す。
「……なるほどな。そういうことか」
「天華は、昔、神界にいた神子の一人よ」
話した後、答えるどころか何か納得するように黙ってしまった飛影ではなく、星蓮が答える。
「神子ってことは、聖羅さんと同じ……」
「ええ。立場的には彼女と同じね。ただ、彼女達の持つ力はそれぞれが違うものだった。聖羅は対魔族、天華は対魔神族の為の力を持っていたの」
「だから、その天華って人が麗玲と戦った?」
「……そうよ。そして、戦いの果てに彼女は魔神族を封じ、命を落とした。麗玲の転生者がいるなら、天華の転生者がいても、おかしくはないのでしょうけど……」
「……そういえば、夢の中でもう一人《聖鈴》って名前が出てきたけど、その人は?」
星蓮の言葉に胸が騒ついたが、それには気付かない振りをして、もう一つの疑問を口にする。
「……そうね。……ここからはみんなのところで話しましょう。彼等にも知っといてほしいことがあるの」
そう言った星蓮の表情は真剣なものだった。