第23章
1
「聞こえなくなったよ」
舞が言うと、風夜が術を解く。
結界が消え、飛影達が身を起こし始めるが、もう舞に攻撃してくる様子はない。
その時、すぐ近くから何かが落ちるような音と誰かの呻き声が聞こえてきた 。
見ると、地面には横笛状の物が落ちていて、その近くでは龍牙と白夜に拘束されている凰呀の姿がある。
その横に鈴麗の姿もあり、笛を拾い上げる。
彼女が持っているそれが反応のあった二つ目の魔宝具だとわかった。
「くそっ!離せ! 」
「大人しくしろ! 」
逃れようと暴れる凰呀の拘束が逆に強まるのを見ていた舞に、鈴麗が近付いてくる。
「見付けた時、これを持っていたのだけど……」
「……間違いない。これだよ」
そう返して、舞は横笛を受け取る。
手に力を集中させると、魔宝具であるそれは二つに割れた。
2
「……っ……! 」
魔宝具が壊されたのを見てから、凰呀が崩れるように座り込む。
「……ふ……くくっ……」
「!!……何を笑ってる!? 」
肩を震わせている凰呀を白夜が見下ろす。
「全く、せっかく再びチャンスを得たというのにな。……このまま、終われるか……」
「「!! 」」
凰呀が呟いたかと思うと、両脇にいた龍牙と白夜が何かに気付いて大きく飛び退く。
その直後、二人のいた場所に其々小さな雷が落ちた。
自由を取り戻した凰呀の手には黄色い珠が握られている。
「まだ終わってたまるか!何の成果も出さずに、やられてたまるか! 」
叫んだと同時に大量の電流が放たれる 。
それはまだ立つまでには回復していなかったらしい飛影と煌破へと向かったが、その二人の前に一つの影が飛び出す。
「あああああっ! 」
二人の前で両手を広げ、それを受けたのは玲莉だった。
「はははははっ!裏切り者共だけでも道連れにして……っ! 」
電流を強めようとした凰呀の手に矢が当たり、珠を弾く。
それを受け止めたのは風夜で、すぐに誰かに投げ渡した。
「雷牙! 」
名を呼ばれ反応した雷牙が珠を取るのと同時に、風夜は今度は凰呀の身体を魔力の鎖で縛り上げ拘束した。
「今度こそ、ここまでだな」
「っ……! 」
そう言うと、風夜は舞達の方に視線を向けてきた。
「さて、どうする?このまま俺がやってもいいけど……」
それを聞いて、舞は一度飛影達の方を見る。
彼等は意識のない玲莉を気にしているようで、凰呀のことなど気にかけていないようだった。
「……私が……」
「……俺がやる」
そう言った雷牙が近付いてくる。
「俺にやらせてくれ。……こいつには借りがある」
「……わかった」
彼の言う借りが何なのか想像ついたのだろう、風夜が場所を開けた。
3
「……なぁ、覚えてるか? 」
「あ? 」
「お前が俺の両親を消し飛ばした時のことだ」
「……ああ。そういえば、お前、あの役立たず共の息子だったな。……役立たずの子は、やはり役立たずの裏切り者か」
状況がわかっていないのか、煽るようなことを言う凰呀に雷牙は冷笑を浮かべた。
「俺が役立たずの裏切り者なら、お前は馬鹿だな。……俺の力を三度も好きに使ってくれたみたいだしな」
言いながら、空に向かって手を翳す。
「……そんなに俺の力で人を甚振るのが好きなら……」
雷牙の手が向く先ーー空にはいつの間にか黒い雲が現れている。
「一度くらい、その身でも受けてみるといい! 」
言った瞬間、巨大な雷が凰呀に向かって落ちる。
当たる直前で風夜が拘束を解いたが、凰呀に逃げる時間はなかった。
「……うわぁ! 」
彼を消し飛ばしただけでなく、その場所を大きく抉っているのを見て、舞は思わず声を上げてしまった。
「……まぁ、因果応報ってやつだな」
近くで白夜が肩を竦める。
それでもその威力はとんでもないものだと顔を引き攣らせ、舞は視線を逸らす。
その先では、花音が玲莉に治療しているのが見えた。
4
「先輩……」
近付いていき声を掛ける。
「どうですか? 」
「……大丈夫。ちゃんと治せたと思うよ」
「…………」
治療している間にも意識が戻っていたのだろう玲莉は大人しくしながらも、信じられないというような表情をしていた。
「……どうして? 」
「……どうしてって……」
困った表情の花音に代わって、飛影と煌破が口を開く。
「……こういう奴なんだよ」
「前世の……、光鈴の頃からな」
「はぁ……」
曖昧に頷いて、玲莉が次に見てきたのは舞だった。
舞が天華だったことを知っている為か
、彼女の表情が強張る。
それがわかり、舞は苦笑いする。
「……何もしないよ」
「……えっ? 」
「敵意のない相手を攻撃して倒すなんてしないよ。……まだ、あなたがどんな人かわからないしね」
「…………」
今度は玲莉が困惑した表情になる。
「ただ様子は見させてもらうよ。さっきは魔宝具の影響もあって、攻撃しちゃったけど、……分かり合える可能性がある相手とまで戦いたくないから」
言って背を向ける。
「「……ありがとう」」
立ち去ろうとしたところで、玲莉に猶予を与えたことへか、飛影と煌破の礼を言う声が聞こえた。
「聞こえなくなったよ」
舞が言うと、風夜が術を解く。
結界が消え、飛影達が身を起こし始めるが、もう舞に攻撃してくる様子はない。
その時、すぐ近くから何かが落ちるような音と誰かの呻き声が聞こえてきた 。
見ると、地面には横笛状の物が落ちていて、その近くでは龍牙と白夜に拘束されている凰呀の姿がある。
その横に鈴麗の姿もあり、笛を拾い上げる。
彼女が持っているそれが反応のあった二つ目の魔宝具だとわかった。
「くそっ!離せ! 」
「大人しくしろ! 」
逃れようと暴れる凰呀の拘束が逆に強まるのを見ていた舞に、鈴麗が近付いてくる。
「見付けた時、これを持っていたのだけど……」
「……間違いない。これだよ」
そう返して、舞は横笛を受け取る。
手に力を集中させると、魔宝具であるそれは二つに割れた。
2
「……っ……! 」
魔宝具が壊されたのを見てから、凰呀が崩れるように座り込む。
「……ふ……くくっ……」
「!!……何を笑ってる!? 」
肩を震わせている凰呀を白夜が見下ろす。
「全く、せっかく再びチャンスを得たというのにな。……このまま、終われるか……」
「「!! 」」
凰呀が呟いたかと思うと、両脇にいた龍牙と白夜が何かに気付いて大きく飛び退く。
その直後、二人のいた場所に其々小さな雷が落ちた。
自由を取り戻した凰呀の手には黄色い珠が握られている。
「まだ終わってたまるか!何の成果も出さずに、やられてたまるか! 」
叫んだと同時に大量の電流が放たれる 。
それはまだ立つまでには回復していなかったらしい飛影と煌破へと向かったが、その二人の前に一つの影が飛び出す。
「あああああっ! 」
二人の前で両手を広げ、それを受けたのは玲莉だった。
「はははははっ!裏切り者共だけでも道連れにして……っ! 」
電流を強めようとした凰呀の手に矢が当たり、珠を弾く。
それを受け止めたのは風夜で、すぐに誰かに投げ渡した。
「雷牙! 」
名を呼ばれ反応した雷牙が珠を取るのと同時に、風夜は今度は凰呀の身体を魔力の鎖で縛り上げ拘束した。
「今度こそ、ここまでだな」
「っ……! 」
そう言うと、風夜は舞達の方に視線を向けてきた。
「さて、どうする?このまま俺がやってもいいけど……」
それを聞いて、舞は一度飛影達の方を見る。
彼等は意識のない玲莉を気にしているようで、凰呀のことなど気にかけていないようだった。
「……私が……」
「……俺がやる」
そう言った雷牙が近付いてくる。
「俺にやらせてくれ。……こいつには借りがある」
「……わかった」
彼の言う借りが何なのか想像ついたのだろう、風夜が場所を開けた。
3
「……なぁ、覚えてるか? 」
「あ? 」
「お前が俺の両親を消し飛ばした時のことだ」
「……ああ。そういえば、お前、あの役立たず共の息子だったな。……役立たずの子は、やはり役立たずの裏切り者か」
状況がわかっていないのか、煽るようなことを言う凰呀に雷牙は冷笑を浮かべた。
「俺が役立たずの裏切り者なら、お前は馬鹿だな。……俺の力を三度も好きに使ってくれたみたいだしな」
言いながら、空に向かって手を翳す。
「……そんなに俺の力で人を甚振るのが好きなら……」
雷牙の手が向く先ーー空にはいつの間にか黒い雲が現れている。
「一度くらい、その身でも受けてみるといい! 」
言った瞬間、巨大な雷が凰呀に向かって落ちる。
当たる直前で風夜が拘束を解いたが、凰呀に逃げる時間はなかった。
「……うわぁ! 」
彼を消し飛ばしただけでなく、その場所を大きく抉っているのを見て、舞は思わず声を上げてしまった。
「……まぁ、因果応報ってやつだな」
近くで白夜が肩を竦める。
それでもその威力はとんでもないものだと顔を引き攣らせ、舞は視線を逸らす。
その先では、花音が玲莉に治療しているのが見えた。
4
「先輩……」
近付いていき声を掛ける。
「どうですか? 」
「……大丈夫。ちゃんと治せたと思うよ」
「…………」
治療している間にも意識が戻っていたのだろう玲莉は大人しくしながらも、信じられないというような表情をしていた。
「……どうして? 」
「……どうしてって……」
困った表情の花音に代わって、飛影と煌破が口を開く。
「……こういう奴なんだよ」
「前世の……、光鈴の頃からな」
「はぁ……」
曖昧に頷いて、玲莉が次に見てきたのは舞だった。
舞が天華だったことを知っている為か
、彼女の表情が強張る。
それがわかり、舞は苦笑いする。
「……何もしないよ」
「……えっ? 」
「敵意のない相手を攻撃して倒すなんてしないよ。……まだ、あなたがどんな人かわからないしね」
「…………」
今度は玲莉が困惑した表情になる。
「ただ様子は見させてもらうよ。さっきは魔宝具の影響もあって、攻撃しちゃったけど、……分かり合える可能性がある相手とまで戦いたくないから」
言って背を向ける。
「「……ありがとう」」
立ち去ろうとしたところで、玲莉に猶予を与えたことへか、飛影と煌破の礼を言う声が聞こえた。