第22章
1
『……麗玲、此処で決着をつけよう』
『……そうね。私が勝って、魔神族が全ての世界を手にするか、あなたが勝ってそれを阻止できるか……、勝負よ 。といっても、勝つのは私でしょうけどね』
『私は負けない!これまで犠牲になった人達の為にも、世界の為にも、あなたは此処で倒す! 』
(この声は!? )
夢の中なのか、精神世界なのか、一人立ち尽くしていた舞は聞こえてきた声の方へ走り出す。
向かっている最中にも金属のぶつかり合う音が聞こえ、激しく力がぶつかっているのを感じる。
舞が着いた時には、傷を負った天華と麗玲が最後の力を振り絞るかのように放っている神聖なエネルギーと禍々しいエネルギーが激突し、押し合っていた。
(……もうすぐ決着がつく! )
その光景は舞にも覚えがあり、内心で呟く。
舞の記憶の通り、次第に天華の力が麗玲の力を上回っていく。
『うっ……くっ、このっ……!』
『私はっ……絶対にっ、負ける訳にはいかない!……はああああっ!! 』
天華の力が麗玲の力を完全に上回り、彼女の力を消し飛ばす。
『うぐっ……、あああああっ! 』
『これでっ……、終わりだ! 』
そして、麗玲の力を消した天華の力は更に威力を増し、麗玲の身体を捉えた 。
2
「……はぁっ、はあっ……」
息を切らせ、天華が倒れている麗玲へ近付いていく。
『……私の……、勝ちよ……』
『……そう……みたい……ね』
天華に答えた麗玲の身体が透け始める 。
『……何だか、凄く疲れたわ』
『あなた以外の魔神族は封印する』
『……倒す……じゃないのね』
『…………』
その時、天華は何も返さなかったが、舞はこの時天華にもうそんな力が残っていなかったことを覚えていた。
麗玲の身体が消え、天華一人が残される。
彼女はまだ少し乱れていた呼吸を整えていると、何かの術を発動させる。
(確かこの時使ったのは……)
少し考えて、この時発動させたのが、封印術だったことを思い出す。
それから少し経って、天華が術を使うのをやめ、大きく息をはく。
そして、何かを感じ取ったように、視線を動かす。
その先には、怪我だらけの飛影の姿があった。
3
『……飛影』
『……終わったのか』
『……ええ』
封印術の対象にしていなかったのか、怪我を負っている以外、何の変化もない飛影と天華が話をしているのを舞はじっと見る。
『これで終わったわ。犠牲もあったけど……、これでもう……』
呟くように言って、天華は表情を和らげる。
『さてと、報告に戻らないとね。……飛影はこれからどうするの? 』
『……俺か?……俺は……』
聞かれた飛影が目を閉じる。
その際、持っている槍を一瞬強く握り締めたのがわかったが、天華は気付いていないようで、更に彼に背を向けた 。
向けられた背に飛影は何かを迷うような素振りを見せてから、覚悟したような表情になる。
そして、右手で持っていた槍を構え直すと、背を向けている天華に向かって走り出した。
「危ない! 」
聞こえていないのはわかっているが、舞は叫んだ。
接近したことで気配に気付いたのか、天華が振り返る。
だが、その時には飛影の突き出した槍が彼女の身体を貫いていた。
『飛……影……? 』
信じられないというように天華の目が見開かれる。
『何で……、どうして……? 』
『…………すまない』
飛影のことを信じていたのだろう、天華は自分を攻撃してきた彼に問いかける。
倒れかかった天華を受け止めた飛影の表情は舞には見えないが、何の為かわからない謝罪の声は聞こえてくる。
(謝るくらいなら、どうして!? )
恐らく、天華は助からない。此処が前世の自分の最期の場所だ。
(どうして? )
舞の前で飛影が受け止めていた天華の身体を横たえる。
そこで二人分の足音が聞こえてきた。
4
『天華!飛影! ……!! 』
『二人共、無事……!? 』
走ってきたのは星蓮と莉鳳で、二人共倒れている天華を見て、軽く目を見開いた。
『おい!これは……!? 』
『俺が来た時には……。麗玲と相打ったみたいだ』
既に天華を貫いていた槍を消していた飛影が莉鳳に答える。
その横にいた星蓮がふらふらと天華へ近付いていく。
『嘘でしょ?あなたまでいなくなってどうするのよ! 』
そう声を掛けながらも治療を試みたのだろうか、彼女の手から光が隘れる。
だが、傷口から流れる血が止まることはなく、天華の目は閉じていった。
『天華! 』
『おい!しっかりしろ!……くそっ、どうにもできないのか!? 』
『っ!! 』
声を掛ける星蓮と莉鳳と違い、特に声を掛けずにいた飛影が不意に立ち上がる。
『待てよ!何処に行くんだ? 』
そのまま立ち去ろうとする飛影に気付いて、莉鳳が声を上げる。
だが、飛影はその彼を一瞥しただけでその場から去って行ってしまった。
5
「どう?思い出した? 」
気がつくと、舞は何もない空間に一人で立っていて、聞こえてきた声に我に返る。
そこには天華の姿があった。
「今のは?本当にあったこと? 」
天華は頷く。
「だから、前にあんなことを言ったの ? 」
「ええ」
「飛影のこと、信じていたから言ったんだよね? 」
「……そうね。……まさか、全て終わったと思った時に裏切られるとは思わなかったわ」
そう言うと、天華は肩を竦めた。
「結局、馬鹿だったのは私よ。……魔神族を……信じたのが間違いだった」
「…………」
「……舞」
「……何? 」
声を掛けてきた天華は、真剣な表情を向けてくる。
「あなたは私と同じ間違いを侵しては駄目よ。……もう一度、言うわ。飛影を、魔神族を信用したら駄目。いいわね? 」
念を押すように言う天華に、舞は頷いてしまった。
「……よかった。私と同じ思いをあなたにはしてほしくないから」
最後にそう言い、天華は姿を消す。
舞がいたのはやはり精神世界だったのか、その直後、眠りから覚めるように意識が浮上していくのを感じた。
『……麗玲、此処で決着をつけよう』
『……そうね。私が勝って、魔神族が全ての世界を手にするか、あなたが勝ってそれを阻止できるか……、勝負よ 。といっても、勝つのは私でしょうけどね』
『私は負けない!これまで犠牲になった人達の為にも、世界の為にも、あなたは此処で倒す! 』
(この声は!? )
夢の中なのか、精神世界なのか、一人立ち尽くしていた舞は聞こえてきた声の方へ走り出す。
向かっている最中にも金属のぶつかり合う音が聞こえ、激しく力がぶつかっているのを感じる。
舞が着いた時には、傷を負った天華と麗玲が最後の力を振り絞るかのように放っている神聖なエネルギーと禍々しいエネルギーが激突し、押し合っていた。
(……もうすぐ決着がつく! )
その光景は舞にも覚えがあり、内心で呟く。
舞の記憶の通り、次第に天華の力が麗玲の力を上回っていく。
『うっ……くっ、このっ……!』
『私はっ……絶対にっ、負ける訳にはいかない!……はああああっ!! 』
天華の力が麗玲の力を完全に上回り、彼女の力を消し飛ばす。
『うぐっ……、あああああっ! 』
『これでっ……、終わりだ! 』
そして、麗玲の力を消した天華の力は更に威力を増し、麗玲の身体を捉えた 。
2
「……はぁっ、はあっ……」
息を切らせ、天華が倒れている麗玲へ近付いていく。
『……私の……、勝ちよ……』
『……そう……みたい……ね』
天華に答えた麗玲の身体が透け始める 。
『……何だか、凄く疲れたわ』
『あなた以外の魔神族は封印する』
『……倒す……じゃないのね』
『…………』
その時、天華は何も返さなかったが、舞はこの時天華にもうそんな力が残っていなかったことを覚えていた。
麗玲の身体が消え、天華一人が残される。
彼女はまだ少し乱れていた呼吸を整えていると、何かの術を発動させる。
(確かこの時使ったのは……)
少し考えて、この時発動させたのが、封印術だったことを思い出す。
それから少し経って、天華が術を使うのをやめ、大きく息をはく。
そして、何かを感じ取ったように、視線を動かす。
その先には、怪我だらけの飛影の姿があった。
3
『……飛影』
『……終わったのか』
『……ええ』
封印術の対象にしていなかったのか、怪我を負っている以外、何の変化もない飛影と天華が話をしているのを舞はじっと見る。
『これで終わったわ。犠牲もあったけど……、これでもう……』
呟くように言って、天華は表情を和らげる。
『さてと、報告に戻らないとね。……飛影はこれからどうするの? 』
『……俺か?……俺は……』
聞かれた飛影が目を閉じる。
その際、持っている槍を一瞬強く握り締めたのがわかったが、天華は気付いていないようで、更に彼に背を向けた 。
向けられた背に飛影は何かを迷うような素振りを見せてから、覚悟したような表情になる。
そして、右手で持っていた槍を構え直すと、背を向けている天華に向かって走り出した。
「危ない! 」
聞こえていないのはわかっているが、舞は叫んだ。
接近したことで気配に気付いたのか、天華が振り返る。
だが、その時には飛影の突き出した槍が彼女の身体を貫いていた。
『飛……影……? 』
信じられないというように天華の目が見開かれる。
『何で……、どうして……? 』
『…………すまない』
飛影のことを信じていたのだろう、天華は自分を攻撃してきた彼に問いかける。
倒れかかった天華を受け止めた飛影の表情は舞には見えないが、何の為かわからない謝罪の声は聞こえてくる。
(謝るくらいなら、どうして!? )
恐らく、天華は助からない。此処が前世の自分の最期の場所だ。
(どうして? )
舞の前で飛影が受け止めていた天華の身体を横たえる。
そこで二人分の足音が聞こえてきた。
4
『天華!飛影! ……!! 』
『二人共、無事……!? 』
走ってきたのは星蓮と莉鳳で、二人共倒れている天華を見て、軽く目を見開いた。
『おい!これは……!? 』
『俺が来た時には……。麗玲と相打ったみたいだ』
既に天華を貫いていた槍を消していた飛影が莉鳳に答える。
その横にいた星蓮がふらふらと天華へ近付いていく。
『嘘でしょ?あなたまでいなくなってどうするのよ! 』
そう声を掛けながらも治療を試みたのだろうか、彼女の手から光が隘れる。
だが、傷口から流れる血が止まることはなく、天華の目は閉じていった。
『天華! 』
『おい!しっかりしろ!……くそっ、どうにもできないのか!? 』
『っ!! 』
声を掛ける星蓮と莉鳳と違い、特に声を掛けずにいた飛影が不意に立ち上がる。
『待てよ!何処に行くんだ? 』
そのまま立ち去ろうとする飛影に気付いて、莉鳳が声を上げる。
だが、飛影はその彼を一瞥しただけでその場から去って行ってしまった。
5
「どう?思い出した? 」
気がつくと、舞は何もない空間に一人で立っていて、聞こえてきた声に我に返る。
そこには天華の姿があった。
「今のは?本当にあったこと? 」
天華は頷く。
「だから、前にあんなことを言ったの ? 」
「ええ」
「飛影のこと、信じていたから言ったんだよね? 」
「……そうね。……まさか、全て終わったと思った時に裏切られるとは思わなかったわ」
そう言うと、天華は肩を竦めた。
「結局、馬鹿だったのは私よ。……魔神族を……信じたのが間違いだった」
「…………」
「……舞」
「……何? 」
声を掛けてきた天華は、真剣な表情を向けてくる。
「あなたは私と同じ間違いを侵しては駄目よ。……もう一度、言うわ。飛影を、魔神族を信用したら駄目。いいわね? 」
念を押すように言う天華に、舞は頷いてしまった。
「……よかった。私と同じ思いをあなたにはしてほしくないから」
最後にそう言い、天華は姿を消す。
舞がいたのはやはり精神世界だったのか、その直後、眠りから覚めるように意識が浮上していくのを感じた。