第2章
1
「……音……、花音!」
「!!」
近くから大声で呼ばれ、ぼんやりとしていた花音は我に返る。
目の前には星夢がいて、少し離れたところからは雷牙と刹那も此方を見ていた。
「大丈夫?やっぱり、何処か怪我したんじゃないの?」
「……ううん。平気だよ」
心配そうに見てくる星夢にそう返しながら、舞のことを思う。
自分に騙され、傷付いたように見えた彼女。
(もう、嫌われちゃったかな?)
そんなことを思いながら、感情を高ぶらせ、思わぬ力を発揮した舞の姿を思い出していた。
『……!!』
舞が花音達の方へと向けた手から、膨大な力が放たれる。
『っ……、花音!』
『っ……!!二人共、下がれ!!』
迫って来る力に立ち竦んでいた花音は風夜に抱え込まれ、更に二人の前に立った封魔が結界を張る。
その直後、舞の放ったエネルギーがぶつかり、結界に衝撃が走った。
『くっ……!』
封魔が僅かに呻くのが聞こえた時、花音達の近くの空間が歪み、そこから三本の腕が伸ばされてきて中へと引き摺りこまれる。
気付いた時には、花音は星夢、風夜は雷牙、封魔は白鬼に腕を掴まれた状態で、洞窟の中にいた。
(どうして、舞ちゃんが……、あんな力を……)
「それにしても、便利だな。刹那の能力」
「確かにまともに受けたらやばそうな時とか、かなり役に立つな」
再び考えに浸っていた花音の耳に、雷牙と白鬼の声が聞こえてくる。
「便利とか役に立つって、お前らなぁ……」
「でも、ちょっとやばそうだったじゃない。ね、花音」
「……えっ、あ、うん」
「って、また考え事してたの?」
「あははっ……」
星夢に苦笑して、声が聞こえてこない二人を探す。
「そういえば、風夜と封魔さんは?」
「……ああ。それならこっちだ」
そう言うと、白鬼は洞窟の奥の方へと歩き出し、花音達は後を追って歩き出した。
2
白鬼の後をついていくと、前にも来たことがある巨大な水晶が見えてくる。
その前に風夜と封魔の姿もあり、何かを話しているようだった。
「……やっぱりここだったか」
声を掛けた白鬼に二人が振り返る。
その二人へと近付いた白鬼は彼等ではなく、その水晶を見上げた。
「……ずっと、この中にいたんだな。……数百年も、時を止めたままでこんなところに……」
何処か懐かしそうに言っているのを聞いて、何がいるのかと花音は目を凝らす。
そして見えたのは、六人の男女だった。
「……ひ、人がっ……!」
「な、何なのよ、これ!?」
目を閉じ、眠っているようにも見える姿に、花音と星夢は声を上げる。
「……こいつらは、俺の嘗ての仲間だ」
「この中にいるのがか?」
「ああ。……神蘭達の一代前の闘神達だ」
「……じゃあ、前に神蘭さんが言ってた生死不明の人達がこの人達?」
「……ああ。こいつらはこの中で時を止められ、それでも生きている」
「だから、お前が墓前を訪れることがなかったのか」
「……死んでいないのに、どうして墓参りに行く必要がある」
何かを納得したように呟いた白鬼に封魔はそう返した。
「……お前は知ってたんだな。……何故、黙ってた?みんなにきちんと話していれば、お前だって」
「無理だ」
白鬼の言葉を遮り、封魔が言う。
「無理って……」
「敵は確かに魔神族だ。……だが」
封魔がそこで僅かに視線を鋭くする。
「……奴等は神族の中に入り込んでいる。……軍の中にもな。そいつらにそれを知られる訳にはいかなかった。そして、こいつらを助ける方法を見つけるまでは、下手に動けなかった」
「……お前が魔神族側についたのとも関係あるのか?」
「ああ。奴等は自分達の上層部の復活にこいつらを使おうとした。それを止めさせるのに出された条件が……」
「……あの麗香って奴か」
口を挟んだ風夜に封魔は頷いた。
「……とりあえず、奴を連れてきたことで、目的は一つ果たした。……次は、麗玲の完全覚醒の前に、覚醒させないといけない奴がいる」
「まさか、天華様の転生者か?」
白鬼が言う。
「ああ。……先程の一件で、確信も持てた」
「!!それって……!」
「……力を受けてはっきりした。間違いない。花音の後輩だといっていたあの女だ」
その言葉に花音は目を見開いた。
「舞ちゃんが!?」
「それでどうするんだ?」
風夜が封魔を見る。
「……おそらく、既に力は覚醒しかかっている。あとはそれを完全なものにする為、きっかけをやればいい」
「きっかけって、具体的にはどうするんだよ?」
「……それはこれから考える」
そう言って、封魔は黙り込んでしまった。
「……音……、花音!」
「!!」
近くから大声で呼ばれ、ぼんやりとしていた花音は我に返る。
目の前には星夢がいて、少し離れたところからは雷牙と刹那も此方を見ていた。
「大丈夫?やっぱり、何処か怪我したんじゃないの?」
「……ううん。平気だよ」
心配そうに見てくる星夢にそう返しながら、舞のことを思う。
自分に騙され、傷付いたように見えた彼女。
(もう、嫌われちゃったかな?)
そんなことを思いながら、感情を高ぶらせ、思わぬ力を発揮した舞の姿を思い出していた。
『……!!』
舞が花音達の方へと向けた手から、膨大な力が放たれる。
『っ……、花音!』
『っ……!!二人共、下がれ!!』
迫って来る力に立ち竦んでいた花音は風夜に抱え込まれ、更に二人の前に立った封魔が結界を張る。
その直後、舞の放ったエネルギーがぶつかり、結界に衝撃が走った。
『くっ……!』
封魔が僅かに呻くのが聞こえた時、花音達の近くの空間が歪み、そこから三本の腕が伸ばされてきて中へと引き摺りこまれる。
気付いた時には、花音は星夢、風夜は雷牙、封魔は白鬼に腕を掴まれた状態で、洞窟の中にいた。
(どうして、舞ちゃんが……、あんな力を……)
「それにしても、便利だな。刹那の能力」
「確かにまともに受けたらやばそうな時とか、かなり役に立つな」
再び考えに浸っていた花音の耳に、雷牙と白鬼の声が聞こえてくる。
「便利とか役に立つって、お前らなぁ……」
「でも、ちょっとやばそうだったじゃない。ね、花音」
「……えっ、あ、うん」
「って、また考え事してたの?」
「あははっ……」
星夢に苦笑して、声が聞こえてこない二人を探す。
「そういえば、風夜と封魔さんは?」
「……ああ。それならこっちだ」
そう言うと、白鬼は洞窟の奥の方へと歩き出し、花音達は後を追って歩き出した。
2
白鬼の後をついていくと、前にも来たことがある巨大な水晶が見えてくる。
その前に風夜と封魔の姿もあり、何かを話しているようだった。
「……やっぱりここだったか」
声を掛けた白鬼に二人が振り返る。
その二人へと近付いた白鬼は彼等ではなく、その水晶を見上げた。
「……ずっと、この中にいたんだな。……数百年も、時を止めたままでこんなところに……」
何処か懐かしそうに言っているのを聞いて、何がいるのかと花音は目を凝らす。
そして見えたのは、六人の男女だった。
「……ひ、人がっ……!」
「な、何なのよ、これ!?」
目を閉じ、眠っているようにも見える姿に、花音と星夢は声を上げる。
「……こいつらは、俺の嘗ての仲間だ」
「この中にいるのがか?」
「ああ。……神蘭達の一代前の闘神達だ」
「……じゃあ、前に神蘭さんが言ってた生死不明の人達がこの人達?」
「……ああ。こいつらはこの中で時を止められ、それでも生きている」
「だから、お前が墓前を訪れることがなかったのか」
「……死んでいないのに、どうして墓参りに行く必要がある」
何かを納得したように呟いた白鬼に封魔はそう返した。
「……お前は知ってたんだな。……何故、黙ってた?みんなにきちんと話していれば、お前だって」
「無理だ」
白鬼の言葉を遮り、封魔が言う。
「無理って……」
「敵は確かに魔神族だ。……だが」
封魔がそこで僅かに視線を鋭くする。
「……奴等は神族の中に入り込んでいる。……軍の中にもな。そいつらにそれを知られる訳にはいかなかった。そして、こいつらを助ける方法を見つけるまでは、下手に動けなかった」
「……お前が魔神族側についたのとも関係あるのか?」
「ああ。奴等は自分達の上層部の復活にこいつらを使おうとした。それを止めさせるのに出された条件が……」
「……あの麗香って奴か」
口を挟んだ風夜に封魔は頷いた。
「……とりあえず、奴を連れてきたことで、目的は一つ果たした。……次は、麗玲の完全覚醒の前に、覚醒させないといけない奴がいる」
「まさか、天華様の転生者か?」
白鬼が言う。
「ああ。……先程の一件で、確信も持てた」
「!!それって……!」
「……力を受けてはっきりした。間違いない。花音の後輩だといっていたあの女だ」
その言葉に花音は目を見開いた。
「舞ちゃんが!?」
「それでどうするんだ?」
風夜が封魔を見る。
「……おそらく、既に力は覚醒しかかっている。あとはそれを完全なものにする為、きっかけをやればいい」
「きっかけって、具体的にはどうするんだよ?」
「……それはこれから考える」
そう言って、封魔は黙り込んでしまった。