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第19章

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「ったく、何でこんなことになるんだ !? 」
エネルギー弾を風で弾いて、風夜が言う。
「……ねぇ、どうにかならないの!? 」
「そう言われても……なっ! 」
接近し斬りかかってきた封魔の剣を受け流した飛影が距離をとる。
「何回か言ったとおり、魔矢を倒せば術は解ける!最も……」
「……道連れになるのは封魔に変わった、か……」
「……そうだ」
「だから、何でそんな冷静に話してるの!? 」
飛影と風夜に、舞はそう叫んだ。
「……動揺していたら、こっちがやられるぞ。操られていると言っても、能力はそのままだ。彼奴の場合、腕輪を外されたら力の制御が効かなくなるところまでな」
「……そうなったら厄介だ。その前に 、蹴りをつける」
「だから、待ってって……」
「待ってくれ! 」
舞の声に神蘭の声が重なる。
「何か……、他にないのか?封魔を助ける方法が……」
そう言った神蘭に飛影が鋭い視線を向け、彼女は言葉を止めた。
「この状況をつくったのはお前だぞ」
「……わかってる。だから」
「……神蘭」
それでも何か言おうとしていた神蘭の肩を月夜が掴み、首を横に振った。
「……俺も実際に術を受けていた身だ 。今、俺が受けたようなことがない限りは……」
「……そんな……」
がくりと力が抜けたように神蘭が膝を折る。
魔矢と封魔はそんな彼女を標的にしたようだった。
「「ちっ! 」」
それに気付いた飛影と風夜が走り出す 。
だが、その前に別の何かに気付いた魔矢が飛び退き、彼女がいた場所に光弾が着弾した。
舞が飛んで来た方向へ視線を向けると 、恐らく先程の封魔の攻撃で目を覚まし、様子を見に来たのだろう龍牙達の姿があった。
「おい!何だよ、この状況!! 」
「……封魔の奴、どうしたんだ? 」
龍牙と白夜が戸惑ったように聞いてくるが、説明に困ってしまう。
その時、魔矢が笑い始めた。
2
「……ふふふ、あはははは」
「……何がおかしい? 」
反応した光鳳が睨みつけるが、魔矢は笑みを浮かべたまま続けた。
「全員とはいかないけど、まあまあ役者は集まったみたいね。……そろそろこれも試してみましょうか」
言いながら封魔に近付いた魔矢が腕輪に手を掛ける。
「ふふ、自我がなくなり、私の〈人形〉になった今、どの位の力が使えるのかしらね」
「……人形?……おい、飛影! 」
魔矢の言葉で何か勘付いたらしい煌破が声を上げた。
「まさかとは思うけど、今の彼奴は… …」
「……想像の通りだ」
「……そうか」
「ちょっと私達は状況がよくわからないんだけど! 」
少し目を伏せた煌破に、光蘭が少し声を荒げた。
「……魔矢の人形、つまり術中にあるってことは、あいつは……」
「生きる屍。空っぽの身体ってことよ 」
舞達の代わりに話してくれるつもりだったのだろう煌破が少し言葉を切らせた時、魔矢が言う。
それを聞いた龍牙達は信じられないというように目を見開いた。
「嘘だろ……」
「何故、そんなことに……」
「その子のお陰で手に入ったのよ」
白鬼と蒼魔の呟きを聞いた魔矢が座り込んだままの神蘭を指す。
「神蘭の? 」
鈴麗が視線を向ける。
「そう……、彼女のお陰で、私はもっといい人形を手に出来たの」
「なら……」
「「駄目!! 」」
数人が攻撃態勢をとったのを見て、舞と神蘭の声が再び重なった。
「あの人を殺したら、封魔も……」
「……何っ!? 」
「ふふ、そうよ。私も倒せば、彼も道連れになる。かといって、何もしないでいればあなた達の方が危ないでしょうね」
その言葉に、舞は内心同意する。
(確かにあの制御を外されたら、こっちも危ない。でも、だからって魔矢を狙えば……)
そこまで考えながら辺りを見回し、花音で視線を止める。
(そういえば、先輩、ずっと何かを考えてるみたいだけど……)
「……あのさ……」
その時、ずっと考えていたことが纏まったのか、漸く口を開いた。
「……思い付いたことがあるの。私に任せてくれないかな」
そう言った花音の表情は緊張しているように見える。
「上手くいくかはわからないし、正直賭けになると思うけど……」
「……何もしないで諦めるよりは試すだけ試して、可能性にかける……か」
そこで風夜がふっと笑う。
「……わかった。やるだけやってみればいいさ」
「うん。……まだ、時間的には間に合うと思うんだ」
そう返すと、花音は舞達の方へ視線を動かしてきた。
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