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第17章

1
炎から逃れるように一歩引いた光輝を見て、舞は炎を放ったのだろう火焔へ視線を動かした。
「ちょっと、攻撃は……! 」
「……別に攻撃のつもりはないさ。足止めだ」
火焔が言ったのと同時に低い声と共に鈍い音が聞こえてくる。
「……いい加減にしろよ!もう目を覚ませ! 」
そう言ったのは夜天で、言葉と共に光輝のことを殴りつけたようだった。
ふらついたものの、直ぐに体勢を立て直した光輝が向けてきた表情に夜天が舌打ちする。
「……ちっ、流石に一発じゃ、目が覚めないか……! 」
そう言った夜天の目の色が紅く染まる 。
その状態は風夜で何度か見た事があったが、夜天では初めてだった。
「……来いよ。俺が相手になってやる 」
「……いいかもね。……友人同士で潰し合うのも面白いかも」
夜天の言葉にすっかり高みの見物になっていた綺羅が声を上げる。
「無抵抗の相手を甚振るのもいいけど 、少しはやり返してくれないとつまらないものね。……ってことで、ターゲット変更だよ」
言って、夜天を指した綺羅に、光輝も攻撃相手を彼に定めたようだった。
2
「……大丈夫ですか? 」
夜天が引き離すように動き、光輝からの距離が開いたこともあり、舞は花音の両親へと駆け寄った。
「……さっきも言ったけど、仕方ないんだよ。私達が光輝にしたことをかんがえればね」
「そうだとしても……」
さっきまでの光景を思い出せば、今でも花音が此処にいなくてよかったと思う。
「……君の言いたいこともわかる。だが……」
そこまで言った時、弾き合う音がして視線を動かせば、光輝を睨む夜天の姿があった。
「……まだこっちの力は使いなれていないが……」
紅く染まっている目の色が赤みを増したかと思うと、その背に一対の翼が現れる。
それと同時に何かが壊れた音がした。
それが、何なのか気になったが、舞からはそれが何なのか見えない。
次の瞬間、飛び上がった夜天が光輝を地面へと叩きつけ、押さえ込む。
そのまま夜天が話し掛ける声が聞こえてきた。
「……お前とこういう事をするのは【 あの時】以来か。……【あの時】は今とは逆で、お前が俺を押さえ付けていたんだっけか」
どの位の力で押さえ付けているのかはわからなかったが、下で逃れようと暴れている光輝は逃れられないようだった。
「……【あの時】、助けてもらったのは俺の方だったからな。……今度は俺が助けてやる番だ」
そう言った夜天が素早く光輝の腹に拳を打ち込むと、綺羅に向けて攻撃を仕掛ける。
「!! 」
今の状況を愉しんで見ているだけだった綺羅は、反応が遅れたらしく、それで吹っ飛ばされる。
それで綺羅の術も途切れたのか、まだ意識のあったらしい兵士達も一斉に倒れてるのがわかった。
3
「……此処までだな」
身を起こした綺羅に、飛影が接近し槍を突き付ける。
「…………だよ」
「……ん? 」
「!!飛影! 」
小さく何かを呟いた綺羅に、飛影が眉を顰める。
そこで何かに気付いた煌破の声に、彼が飛び退いたのと同時に、綺羅の足元から根や蔓のようなものが伸びてくる 。
それらは倒れている兵士達を捕らえ、更に舞達にも襲い掛かってきた。
「全員、あの風使いと同じ所へいきな 」
「……わわっ」
「きゃっ!? 」
舞と綾は真っ直ぐに向かってきたものを一度躱したものの、次の蔓に捕まりそうになる。
その時、ゴォッと音を立てて飛んできた炎によって、何とか逃れる。
助けてくれた火焔に礼を言おうとして根の一つが倒れている光輝を捕らえようとしているのが見えた。
「ちっ!! 」
「「光輝! ! 」」
今は光輝から離れてしまっていた夜天が、倒れていた花音の両親が光輝を助けようと動き出す。
「……っ! 」
それが花音と風夜の時と同じようなことになるんじゃないかと思えて、舞は思わず走り出した。
「あの馬鹿……」
「くそっ! 」
同じ光輝を思い出したのか、飛影と火焔が追い掛けてくる。
光輝の元へ着いたのは全員がほぼ同時 、其処へ槍のような根が向かってくる 。
その時、風の唸るような音と共に、舞達へと向かってきていた蔓と根が何かに弾かれる。
「……っ! 」
次いで聞こえてきた綺羅の息を飲む音に視線を動かすと、彼女の肩に矢が突き刺さっていた。
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