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第17章

1
舞達がいなくなった後も、花音を中心に力が溢れ出している。
其処へと入った天奏はそれを見て、眉を顰めた。
其処に立っている者はなく、綺羅、白羅、凰呀が倒れている。
(……光鈴の力にやられた訳ね)
そう思いながら、倒れている三人へと近付いていくと、まだ意識があったのか倒れたまま視線だけで見上げてきた 。
「……天……奏……様? 」
「……此処は退きなさい」
「……どうして……? 」
「このまま生命を吸い取られ続ければ 、死ぬのはあなた達の方よ。それでもいいのなら、此処にいても構わないけれど」
そう返し見下ろせば、三人は少し迷う素振りは見せたものの、状況は悪いと判断したのか姿を消す。
それを確認すると、天奏は花音の方へ視線を移した。
(さてと……、そろそろ止めないとあの子も危ないわね)
そう思いながら、少し思案する。
(……どうするのがいいかしら? )
考えていると、花音の近くで倒れている風夜が僅かに動いた気がした。
気のせいではないかと注意して様子を伺えば、やはり僅かに動く。
(……ここは彼に任せた方がいいかもしれないわね)
内心で呟くと、天奏は一度距離を置き 、また後で様子を見に来ることにした 。
2
「……っ……! 」
ふと誰かに名を呼ばれた気がして、花音は視線を下げる。
すると、此方を見上げている金色の瞳と目が合った。
「…………何……やってるんだ?……そんなに……力を放出していたら、身体がもたないぞ」
掛けられる声は優しく、仕方ない奴だというように細められる目を見て、花音は我に返る。
それでも、暴走している力は抑えることは出来なかった。
「……あ……うっ……」
力が上手く扱えなくてパニックになりそうになるが、そんな時、身体を抱き締められた。
「……風……夜……? 」
「……ったく、世話がやけるな」
いつの間にか立ち上がっていた風夜の目が金から紅に変わる。
その直後感じたのは強い魔力と風夜の元々の力である風と共に、自分の周囲を取り巻いていた力が巻き上げられ、消し飛ばされるような感覚だった。
花音の意識があったのはそこまでで、力の放出で身体の限界がきていたのか徐々に意識が遠ざかっていった。
3
「……うっ……、んん……」
髪を触られているような感覚に花音はぼんやりと目を開けた。
見下ろしてくる金の瞳を見た瞬間、花音はバッと身を起こし、それに合わせて立ち上がった風夜の身体を見る。
(……傷が……ない?)
蔓に貫かれていたところは見ていたし 、痕跡は残っているが、風夜の身体にその傷は見当たらない。
治した覚えもなく、不思議に思っていると、その視線に気付いたのか風夜は苦笑した。
「何だか不思議そうな顔をしてるな。お前が治してくれたんじゃないのか? 」
「うーん」
言われて思い出してみるが、やはり覚えはない。
「……やっぱり、治した覚えはないんだよね」
「そうなのか? 」
「……うん」
風夜に頷いて返した時、カツンと足音が聞こえてきた。
「……いいえ。確かに治したのはあなたよ。そもそもあんな怪我を僅か数分で治せるのは、光鈴の力を持つあなたくらいでしょうしね」
そこに聞こえてきたのは天奏の声だった。
「お前は!? 」
「天奏……」
近付いてくる天奏に、花音は風夜の背後に回される。
「……警戒は必要ないわ。人払いはしてあるし、私はあなた達を逃がしにきたの」
「……何? 」
その言葉に風夜は眉を顰めた。
「とは言っても、一度は、私の手の内に入ってもらうわ。……綺羅の術中にいる光輝はまだ戻せないのだけどね」
「……何故、逃がす?目的は何だ? 」
「……それは此処では話せないわ」
そう言うと、天奏はついてこいというように踵を返した。
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