第17章
1
「せ、先輩……? 」
風夜が防いでくれたお陰で何でもなかったが、攻撃されたことに舞は戸惑いの声を上げる。
「何で?どうして? 」
「狼狽えるな」
そこへ飛んできた飛影の厳しい声に身体を震わせ、彼を見る。
「前に言った筈だぞ。人の意思を奪い 、操る力を持っているって」
「あ……! 」
それを聞いて、前に神界まで来た時、凍矢が同じように操られて攻撃してきたことを思い出し、同時にその時はどう対処したのかも思い出した。
「でも、あの時は綾先輩が〈光麗〉の力を使って何とかなったけど、今は… …」
彼女は別行動で一緒にはいない。
呼びに行くにもそうさせてもらえるかわからないし、向こうも戦闘中かもしれない。
「そうだ。今此処に〈光麗〉はいない 。それなら……もっとシンプルな方法をとるしかないだろ」
言いながら、飛影は手元に槍を出現させる。
「……術者が倒せば、術の効果は消える。つまり、綺羅を倒せば花音は元に戻るってことだ」
「ふふ、でもそう簡単にいくかなぁ? 」
綺羅が言うのと同時に、再び花音の攻撃が来る。
「っ……!! 」
それを再度防いだ風夜が舞達に視線を寄越す。
「花音は俺が引き受ける。その間に奴を」
「……ああ」
「……わかった」
飛影と火焔は頷くと、綺羅へと向かっていく。
「先輩を引き受けるって、どうするつもり? 」
まさか攻撃するつもりじゃないかとそう問い掛ける。
「…………」
それに答えることなく、ただ花音へ視線を向ける風夜に、舞は話すことを諦めて、綺羅に向かおうとする。
「……攻撃なんてするつもりはないさ 。……もう二度も傷付けたからな。… …三度目はない」
「えっ? 」
その時、小さな声で聞こえた言葉をもう一度聞き返そうとしたが、その前に花音を引き付ける為、風夜が動いてしまった為、聞き返すことは出来なかった。
2
「あははははは」
「このっ、ちょこまかと! 」
身体が小さく素早い為、なかなか攻撃が当たらない綺羅に飛影が苛ついているのがわかる。
もし攻撃が当たり傷を負わせることが出来ても、綺羅の持っている珠が光る度に回復されてしまっていた。
「っ!あれ、花音の力か! 」
「そう。いいでしょ?これがあれば怪我なんてすぐに治っちゃうんだよ」
火焔にそう自慢気に言ってから、綺羅がもう一つの球を取り出す。
「そうそう、これも麗玲様から渡されていたの、忘れてたよ」
そう言った綺羅が珠を翳した瞬間、部屋の中の筈なのに、何処からか伸びてきた蔓や根が舞達の動きを封じた。
「ちっ! 」
「っ……! 」
何とか逃れようともがいたが、外すことが出来ない。
「ほら、今の内だよ! 」
綺羅の声に花音が再び舞達を攻撃しようとする。
(やばい……)
今の花音は綺羅の術に完全に嵌ってしまっていて、舞達の声は届かない。
再び複数の珠が光り出し、矢が創り出される。
「今度こそ、終わりだよ! 」
「……やめろ!! 」
綺羅の声と共に、何かを切る音と風夜の声が聞こえる。
それでも放たれた矢に、舞は目を閉じた。
3
「ぐっ……! 」
何時になっても来ない痛みと聞こえた呻き声に目を開ける。
そして、目の前で見えた光景に目を見開いた。
「風夜!! 」
ぼろぼろになり膝をついている風夜に火焔が悲痛な声を上げる。
「何……、一人だけで受けちゃったの ?……まぁ、いいか。それなら、一人ずつやっちゃおうかな。じゃあ、次はぁ……」
綺羅がチラリと舞を見る。
「やっぱり、神子からだよねぇ。ほら 、やっちゃって! 」
その言葉に花音が再び弓を構える。
だが、放たれたる前にその間に風夜が割り込み、そこに何本もの矢が放たれた。
「……ぐ……ぅっ……」
矢を受けた風夜だったが、今度は膝をつくこともなく立ったままだったが、それでも先程よりは傷が増えている。
痛みに表情を歪めてはいたが、それでも一歩前に踏み出した風夜に、花音が後退りしたのがわかった。
「……花音」
「…………あっ……」
呼び掛けた声に、花音の目が揺れた気がした。
「……俺の声が聞こえるか? 」
舞が気付いたように風夜も気付いたのか、花音に向けた声は優しい。
「……もう戻ってこい。お前に誰かを傷付けるなんて向いてないだろ」
「……っ……」
「お前の両親は無事だ。光輝は必ず助ける。街のことは俺達も元に戻すのに協力する。……だから……」
声を掛けながら、近付いていった風夜が花音の腕を引く。
そのまま抱き込んで、何を言ったのかはわからなかったが、花音の瞳に光が戻ったのがわかった。
4
「……あれ?……私……」
「……戻ったみたいだな……」
きょとんとした花音に、そう返した風夜が膝をつく。
「風夜……!? 」
「……大丈夫だ。……全部、擦り傷みたいなものだ」
「でも……」
「……まぁ、これで……、貸しはなしだな」
「貸し? 」
「……俺は前に二回もお前を傷付けたからな」
そんなことを話している二人を見ていると、それまで舞達を拘束していた蔓が消えたのがわかった。
「せ……」
自由になったことで花音に駆け寄ろうとして、舞は感じた殺気に足を止めた 。
視線を向けると、それまで浮かべていた笑みを消して無表情になっている綺羅がいた。
「……一度だけじゃなく二度も……、私の邪魔をしたね。……せっかく楽しんでたのに。……まぁ、いいや。私の玩具じゃなくなったんなら、もういらない」
「……っ……」
言葉と共に綺羅が向けた視線に、舞は思わず身震いする。
「……いらないものはもう消えちゃえ 」
再び綺羅の持っている珠が光り、現れた蔓が集まり、先端の尖った槍のようになった。
「消えちゃえ! 」
「先輩!! 」
「ちっ! 」
「……駄目だ。間に合わない! 」
言葉と共に花音に向けて放たれる。
舞、飛影、火焔が割って入り、防ぐにしても間に合いそうにない。
「先ぱ……」
自分でもどうすればいいのかわからなかったのだろう立ち竦んでいた花音を近くにいた風夜が突き飛ばす。
その直後、防ぐことも回避することも出来なかったその身体を蔓の槍が貫いた。
「せ、先輩……? 」
風夜が防いでくれたお陰で何でもなかったが、攻撃されたことに舞は戸惑いの声を上げる。
「何で?どうして? 」
「狼狽えるな」
そこへ飛んできた飛影の厳しい声に身体を震わせ、彼を見る。
「前に言った筈だぞ。人の意思を奪い 、操る力を持っているって」
「あ……! 」
それを聞いて、前に神界まで来た時、凍矢が同じように操られて攻撃してきたことを思い出し、同時にその時はどう対処したのかも思い出した。
「でも、あの時は綾先輩が〈光麗〉の力を使って何とかなったけど、今は… …」
彼女は別行動で一緒にはいない。
呼びに行くにもそうさせてもらえるかわからないし、向こうも戦闘中かもしれない。
「そうだ。今此処に〈光麗〉はいない 。それなら……もっとシンプルな方法をとるしかないだろ」
言いながら、飛影は手元に槍を出現させる。
「……術者が倒せば、術の効果は消える。つまり、綺羅を倒せば花音は元に戻るってことだ」
「ふふ、でもそう簡単にいくかなぁ? 」
綺羅が言うのと同時に、再び花音の攻撃が来る。
「っ……!! 」
それを再度防いだ風夜が舞達に視線を寄越す。
「花音は俺が引き受ける。その間に奴を」
「……ああ」
「……わかった」
飛影と火焔は頷くと、綺羅へと向かっていく。
「先輩を引き受けるって、どうするつもり? 」
まさか攻撃するつもりじゃないかとそう問い掛ける。
「…………」
それに答えることなく、ただ花音へ視線を向ける風夜に、舞は話すことを諦めて、綺羅に向かおうとする。
「……攻撃なんてするつもりはないさ 。……もう二度も傷付けたからな。… …三度目はない」
「えっ? 」
その時、小さな声で聞こえた言葉をもう一度聞き返そうとしたが、その前に花音を引き付ける為、風夜が動いてしまった為、聞き返すことは出来なかった。
2
「あははははは」
「このっ、ちょこまかと! 」
身体が小さく素早い為、なかなか攻撃が当たらない綺羅に飛影が苛ついているのがわかる。
もし攻撃が当たり傷を負わせることが出来ても、綺羅の持っている珠が光る度に回復されてしまっていた。
「っ!あれ、花音の力か! 」
「そう。いいでしょ?これがあれば怪我なんてすぐに治っちゃうんだよ」
火焔にそう自慢気に言ってから、綺羅がもう一つの球を取り出す。
「そうそう、これも麗玲様から渡されていたの、忘れてたよ」
そう言った綺羅が珠を翳した瞬間、部屋の中の筈なのに、何処からか伸びてきた蔓や根が舞達の動きを封じた。
「ちっ! 」
「っ……! 」
何とか逃れようともがいたが、外すことが出来ない。
「ほら、今の内だよ! 」
綺羅の声に花音が再び舞達を攻撃しようとする。
(やばい……)
今の花音は綺羅の術に完全に嵌ってしまっていて、舞達の声は届かない。
再び複数の珠が光り出し、矢が創り出される。
「今度こそ、終わりだよ! 」
「……やめろ!! 」
綺羅の声と共に、何かを切る音と風夜の声が聞こえる。
それでも放たれた矢に、舞は目を閉じた。
3
「ぐっ……! 」
何時になっても来ない痛みと聞こえた呻き声に目を開ける。
そして、目の前で見えた光景に目を見開いた。
「風夜!! 」
ぼろぼろになり膝をついている風夜に火焔が悲痛な声を上げる。
「何……、一人だけで受けちゃったの ?……まぁ、いいか。それなら、一人ずつやっちゃおうかな。じゃあ、次はぁ……」
綺羅がチラリと舞を見る。
「やっぱり、神子からだよねぇ。ほら 、やっちゃって! 」
その言葉に花音が再び弓を構える。
だが、放たれたる前にその間に風夜が割り込み、そこに何本もの矢が放たれた。
「……ぐ……ぅっ……」
矢を受けた風夜だったが、今度は膝をつくこともなく立ったままだったが、それでも先程よりは傷が増えている。
痛みに表情を歪めてはいたが、それでも一歩前に踏み出した風夜に、花音が後退りしたのがわかった。
「……花音」
「…………あっ……」
呼び掛けた声に、花音の目が揺れた気がした。
「……俺の声が聞こえるか? 」
舞が気付いたように風夜も気付いたのか、花音に向けた声は優しい。
「……もう戻ってこい。お前に誰かを傷付けるなんて向いてないだろ」
「……っ……」
「お前の両親は無事だ。光輝は必ず助ける。街のことは俺達も元に戻すのに協力する。……だから……」
声を掛けながら、近付いていった風夜が花音の腕を引く。
そのまま抱き込んで、何を言ったのかはわからなかったが、花音の瞳に光が戻ったのがわかった。
4
「……あれ?……私……」
「……戻ったみたいだな……」
きょとんとした花音に、そう返した風夜が膝をつく。
「風夜……!? 」
「……大丈夫だ。……全部、擦り傷みたいなものだ」
「でも……」
「……まぁ、これで……、貸しはなしだな」
「貸し? 」
「……俺は前に二回もお前を傷付けたからな」
そんなことを話している二人を見ていると、それまで舞達を拘束していた蔓が消えたのがわかった。
「せ……」
自由になったことで花音に駆け寄ろうとして、舞は感じた殺気に足を止めた 。
視線を向けると、それまで浮かべていた笑みを消して無表情になっている綺羅がいた。
「……一度だけじゃなく二度も……、私の邪魔をしたね。……せっかく楽しんでたのに。……まぁ、いいや。私の玩具じゃなくなったんなら、もういらない」
「……っ……」
言葉と共に綺羅が向けた視線に、舞は思わず身震いする。
「……いらないものはもう消えちゃえ 」
再び綺羅の持っている珠が光り、現れた蔓が集まり、先端の尖った槍のようになった。
「消えちゃえ! 」
「先輩!! 」
「ちっ! 」
「……駄目だ。間に合わない! 」
言葉と共に花音に向けて放たれる。
舞、飛影、火焔が割って入り、防ぐにしても間に合いそうにない。
「先ぱ……」
自分でもどうすればいいのかわからなかったのだろう立ち竦んでいた花音を近くにいた風夜が突き飛ばす。
その直後、防ぐことも回避することも出来なかったその身体を蔓の槍が貫いた。