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第16章

1
「もう一度、花音の家に行ってみない ? 」
そう言った星夢に舞はきょとんとする 。
「先輩の家に?……でも、この間行った時には何もわからなかったんですよ ? 」
「この間はね。今度は話を聞ける筈よ 」
そう確信しているような星夢に、舞は近くにいた聖奈や綾と視線を交わし合う。
その間にも星夢は刹那を呼んでくると行ってしまった為、誰と行くのか決めておくことにした。
「どうぞ」
結局顔見知りのメンバーがいいだろうと、風夜、綾、刹那と再び花音の家を訪れると、今度は花音の両親の姿があった。
「話っていうのは、花音と光輝のことかな? 」
舞達が切りだす前に、そう話し始める 。
「はい。あの……」
説明しようと口を開くと、首を横に振って遮られる。
「聞かなくても君達が言おうとしていることはわかるよ。……花音には会ってないけど、光輝にはあったからね」
「「「「!! 」」」」
それを聞いて、舞達が目を見開いたのは仕方ないことだった。
「……光輝に会ったってどういうことですか? 」
花音と光輝は今、麗玲のいる神界にいる。
それなのに何処で会ったのかと問い掛けてみると、花音の両親は困ったような表情をした。
「……恥ずかしいことだが、我々は昨日まで牢に囚われていてね。そこで光輝に会ったのさ」
「その話、わかることだけでもいいからもう少し聞かせてもらえませんか」
父親の言ったことに舞はそう返す。
此処で幾つか疑問に思っていたことはわかる気がした。
2
魔界へと戻ってきてから、舞は花音の両親から聞いてきたことを思い出していた。
麗玲が【藤岡麗香】として突然訪れたこと。
花音や光輝に会わせると意識を奪われ 、それから数日間、牢に囚われていたこと。
『花音には会わなかったけど、光輝が言いかけたことから考えると、何かあったみたいなの』
『我々が人質にとられたことで、もしあの子に何かあったら……』
そう言い、自分達を連れて行ってほしいと伝えてきた二人を断ったのは風夜だった。
『いや、二人は此処にいてください』
『どうして!?私達も二人を……』
『……足手纏いはいらないと言ってるんだ! 』
声を上げた母親に、風夜は口調を強める。
『俺達は一度負けてる。神界の闘神達も歯が立たなかった。そんな相手に能力も暫く使っていないあんた達がついてきて、何が出来るっていうんだ? 』
厳しい口調で続ける風夜に、二人は黙り込む。
『……風夜が言うように、今回は任せてくれませんか?二人を無事に助ける方法なら、私が必ず見つけます』
『もし、二人に何かあれば、花音は凄く悲しむ。……向こうに協力する理由があなた達を人質にとられていたからだとしたら、これ以上二人に何かあることを花音は望まない筈だ』
風夜より柔らかい口調で星夢と刹那も言う。
両親である二人の気持ちもわからなくはなかったが、舞としては風夜達と同じ意見だった。
3
トンッ
考え事をしていた舞は窓に何かがぶつかる音に気付いて、近付くと外を見た 。
暗い所為もあるかもしれないが、誰の姿もない。
だが、今、外へ出なければいけない気がした。
「こんな時間に何処行くんだ? 」
城から出て行こうとした舞は、聞こえてきた飛影の声に視線を向ける。
「飛影こそ、何処行ってたの? 」
彼が城の外から入ってきたことに気付いて、そう問い返す。
「……ちょっと気になる気配があったからな。少し見て回ってきたんだよ」
「何かあった? 」
「いや……、それでお前はこんな時間に何処行くんだ? 」
再度聞かれて、舞は少し考える。
正直に答えれば、飛影はついてこようとするだろう。
「……さ、散歩だよ!少ししたら戻ってくるから! 」
「あ、おい! 」
彼がついてきては何も起こらなくなってしまうかもしれないと、言い返しながら走り出す。
そのまま城から離れると、不意に周りの空気が少し変わった気がした。
3
「これは……」
「久しぶりね」
急に雰囲気が変わったことに戸惑っていると、前から一人の少女が歩いてくる。
「天……奏……? 」
「ええ」
足を止めた彼女に、舞は身構える。
「……そう身構えないで。……今回は情報を持ってきただけよ」
そう言われたが、すぐに警戒を解くことは出来ない。
自分の中の〈天華〉の記憶では彼女は裏切者なのだ。
そう思っていると、天奏は溜息をついた。
「……まぁ、いいわ。そのまま聞いて 」
そう言い、天奏は話し始めた。
「……光鈴……いや、あなた達にとっては花音ね。……彼女、麗玲に利用されるわよ」
「えっ?どういうこと? 」
「……魔神族に治癒の力を持つ者はいない。だから、麗玲はずっとその力を欲していた。……でも、光鈴がその誘いにのることはなかった。だから、逆に邪魔になって数百年前は始末した」
それは知っていると頷く。
「……転生して花音となったけど、光鈴の頃と比べても彼女は堕としやすかった。一応、軍属だった光鈴に比べて周りも抑えやすかったしね。……それで、此処からが本題よ」
真剣な表情で言う天奏に、舞も表情を引き締める。
何故か今の彼女は敵だと思えず、話を聞かなければいけない気がした。
『三日後、神界へ来なさい』
『三日後?どうして? 』
天奏の言葉に聞き返す。
『麗玲が十人衆をつれて、別世界を侵攻するからよ。勿論、全員をつれていくことはしないで、何人かは残すだろうけど、間違いなく手薄になる。……その間に二人を連れ出すのよ』
『二人を?』
『そうしなければ、光鈴の命の保障は出来ないわ。……いい?チャンスはその時だけ。これ以上、不利な状況になりたくなければ、二人を助けに来るのよ』
そう言い放つと、天奏は姿を消した。
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