第2章
1
「麗香!待って!」
屋敷だけでなく、光の街すら出てしまった麗香に、街から少し離れた場所で追い付き、舞はその手を掴む。
「……離して!」
「落ち着いて!麗香!」
振り払おうとしてくる麗香に、そう声を掛ける。
「……だって、私……、私……」
「大丈夫。大丈夫だから……。……とにかく戻ろう」
少し混乱している彼女に舞は何とか街の中に戻らせようとする。
もし今魔神族が現れれば、戦う力のない自分達だけではまずいと思い、動こうとしない麗香に焦る。
「ね?話なら、街の中で……」
そう言った所で、一つの足音が近付いてくるのに気が付いた。
視線を向けるが、その方向には誰もいない。
(気のせい、だったのかな?)
内心で呟いてほっとする。
それでもあまりゆっくりしていてはどうなるかわからないと、麗香を再度促そうとした時、声が聞こえてきた。
「随分と無防備なんだな」
「「!!」」
咄嗟に麗香を背後に庇えば、喉元に剣を突き付けられる。
「……どけ、邪魔するな」
「……っ、嫌よ。麗香は渡さない」
「……そうか。……なら……」
封魔の紫眼が細められたと思った瞬間、腹に衝撃が走った。
「うっ……」
「舞!!」
腹を押さえて前に倒れる舞に、麗香が悲鳴を上げる。
「……さぁ、お前はこっちだ」
そんな舞を一瞥した封魔は、麗香に腕を伸ばしていた。
(麗香……!)
痛みで動けず見ているしかできない舞だったが、不意に封魔がその場を飛び退いたのに首を傾げる。
その瞬間、自分の横を何者かが駆け抜けていく。
その人物が封魔目掛けて大剣を振り下ろし、その直後、激しく金属がぶつかり合う音が響く。
見れば、そこには神蘭達と神界から来たと言っていた白羅の姿があった。
「ちっ!」
急な攻撃にも関わらず、対応した封魔が舌打ちして、白羅を思いっきり振り払う。
そこへ更に幾つかの足音が聞こえてきて、それが光輝や風牙、神蘭達のものだと気付いた舞はほっと安堵の息をつく。
それとは反対に、封魔の表情は苦々しいものになっていた。
2
「封魔……!」
駆け寄ってきた神蘭が舞と麗香を庇うように立ちながら声を上げる。
彼女の後ろからは飛影達もやってきて、舞達と封魔の間に入ってくる。
流石に魔神族に力を奪われたといっていた火焔達の姿はなかったものの、封魔一人に対しては十分過ぎる程の戦力だった。
「……ちっ、うじゃうじゃと……」
呟いた封魔が左手の腕輪に手を掛けたかと思うと、それを地に投げ捨てる。
それを見た瞬間、神蘭達の雰囲気がピリッと張り詰めた気がした。
封魔の様子を見ても目に見えた変化はないが、先程よりも神蘭達の警戒度は上がっている。
「な、何……?」
「……そうか。まだお前には分からないか」
舞の呟きが聞こえたのか、飛影が口を開く。
「……あいつ、どうやらさっきの腕輪で力を抑えていたらしい。見た目での変化はないが、力は格段に上がってる」
「……じゃあ……」
「数でこそこっちが上だが、油断は出来ないな」
飛影の言うとおり、下手に動くことが出来ないのか、睨み合いのような状態が続く。
「……何だ、来ないのか?……来ないなら、こっちから行くぞ」
そう言うと、封魔は剣を構え直し、地を蹴った。
3
「はあっ!」
飛影が言ったように力が上がっているせいか、剣圧も前に対峙した時より威力が増している。
それでも人数の差と連携できるかできないかという差があるからか、それ程危機的な状況にはならない。
「……っ……!」
段々と疲れが出てきたのか、吹っ飛ばされた封魔が体勢を整えて、着地する。
肩で息をしていた彼が一度顔を俯かせたが、次に顔を上げた時にはニヤリと笑った。
「くくくっ、はははっ」
そのまま笑い声を上げる封魔に、背中に冷たいものが走る。
「しまった!もう一時間経ってたのか……」
それを見た神蘭が呟く。
「ただ一人連れて行くのに、ここまで手こずるとはな。……だが、これで……」
そう言った封魔の手には、今までとは比べものにならないくらいの力が集まっていた。
「ちっ、おい、手伝え!」
それを見た白羅が手に力を集めつつ、声を上げる。
それに反応し、同じように力を集め始める神蘭、龍牙、白夜、鈴麗に五人掛かりでないと防げないのかと不安を感じた。
その時、舞の近くにいた風牙がふと何かに反応する。
その直後、ヒュンッという小さな音が聞こえ、溜めていた力を放とうとしていた封魔の手に縄状のものが巻き付いた。
「……そこまでだ」
次いで聞こえた声に視線を向けると、フードで顔を隠した人物を見つけた。
「何だよ、これからだろ」
「焦るのもわかるが、退け。……また次だ」
そう言い、その人物は一度拘束を解くと、今度は封魔が投げ捨てた腕輪を引き寄せた。
「とにかく、早くそれを付けて戻るぞ」
「……ちっ……」
舌打ちした封魔が放られた腕輪を受け止める。
「封魔!」
「……待て!」
声を上げて神蘭と龍牙が動こうとした時、その二人目掛けて何かが降って来る。
(光の矢……?)
それらは地面に接触すると消滅したが、確かにそのような形に見えた。
(今のって、光属性だよね)
舞が知っている限り、その属性を持つのは光輝だ。
そして、その彼と同じ属性を持っているのはもう一人。
(花音先輩……?)
そう思い辺りを見回したが、その姿を見つけることは出来なかった。
「麗香!待って!」
屋敷だけでなく、光の街すら出てしまった麗香に、街から少し離れた場所で追い付き、舞はその手を掴む。
「……離して!」
「落ち着いて!麗香!」
振り払おうとしてくる麗香に、そう声を掛ける。
「……だって、私……、私……」
「大丈夫。大丈夫だから……。……とにかく戻ろう」
少し混乱している彼女に舞は何とか街の中に戻らせようとする。
もし今魔神族が現れれば、戦う力のない自分達だけではまずいと思い、動こうとしない麗香に焦る。
「ね?話なら、街の中で……」
そう言った所で、一つの足音が近付いてくるのに気が付いた。
視線を向けるが、その方向には誰もいない。
(気のせい、だったのかな?)
内心で呟いてほっとする。
それでもあまりゆっくりしていてはどうなるかわからないと、麗香を再度促そうとした時、声が聞こえてきた。
「随分と無防備なんだな」
「「!!」」
咄嗟に麗香を背後に庇えば、喉元に剣を突き付けられる。
「……どけ、邪魔するな」
「……っ、嫌よ。麗香は渡さない」
「……そうか。……なら……」
封魔の紫眼が細められたと思った瞬間、腹に衝撃が走った。
「うっ……」
「舞!!」
腹を押さえて前に倒れる舞に、麗香が悲鳴を上げる。
「……さぁ、お前はこっちだ」
そんな舞を一瞥した封魔は、麗香に腕を伸ばしていた。
(麗香……!)
痛みで動けず見ているしかできない舞だったが、不意に封魔がその場を飛び退いたのに首を傾げる。
その瞬間、自分の横を何者かが駆け抜けていく。
その人物が封魔目掛けて大剣を振り下ろし、その直後、激しく金属がぶつかり合う音が響く。
見れば、そこには神蘭達と神界から来たと言っていた白羅の姿があった。
「ちっ!」
急な攻撃にも関わらず、対応した封魔が舌打ちして、白羅を思いっきり振り払う。
そこへ更に幾つかの足音が聞こえてきて、それが光輝や風牙、神蘭達のものだと気付いた舞はほっと安堵の息をつく。
それとは反対に、封魔の表情は苦々しいものになっていた。
2
「封魔……!」
駆け寄ってきた神蘭が舞と麗香を庇うように立ちながら声を上げる。
彼女の後ろからは飛影達もやってきて、舞達と封魔の間に入ってくる。
流石に魔神族に力を奪われたといっていた火焔達の姿はなかったものの、封魔一人に対しては十分過ぎる程の戦力だった。
「……ちっ、うじゃうじゃと……」
呟いた封魔が左手の腕輪に手を掛けたかと思うと、それを地に投げ捨てる。
それを見た瞬間、神蘭達の雰囲気がピリッと張り詰めた気がした。
封魔の様子を見ても目に見えた変化はないが、先程よりも神蘭達の警戒度は上がっている。
「な、何……?」
「……そうか。まだお前には分からないか」
舞の呟きが聞こえたのか、飛影が口を開く。
「……あいつ、どうやらさっきの腕輪で力を抑えていたらしい。見た目での変化はないが、力は格段に上がってる」
「……じゃあ……」
「数でこそこっちが上だが、油断は出来ないな」
飛影の言うとおり、下手に動くことが出来ないのか、睨み合いのような状態が続く。
「……何だ、来ないのか?……来ないなら、こっちから行くぞ」
そう言うと、封魔は剣を構え直し、地を蹴った。
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「はあっ!」
飛影が言ったように力が上がっているせいか、剣圧も前に対峙した時より威力が増している。
それでも人数の差と連携できるかできないかという差があるからか、それ程危機的な状況にはならない。
「……っ……!」
段々と疲れが出てきたのか、吹っ飛ばされた封魔が体勢を整えて、着地する。
肩で息をしていた彼が一度顔を俯かせたが、次に顔を上げた時にはニヤリと笑った。
「くくくっ、はははっ」
そのまま笑い声を上げる封魔に、背中に冷たいものが走る。
「しまった!もう一時間経ってたのか……」
それを見た神蘭が呟く。
「ただ一人連れて行くのに、ここまで手こずるとはな。……だが、これで……」
そう言った封魔の手には、今までとは比べものにならないくらいの力が集まっていた。
「ちっ、おい、手伝え!」
それを見た白羅が手に力を集めつつ、声を上げる。
それに反応し、同じように力を集め始める神蘭、龍牙、白夜、鈴麗に五人掛かりでないと防げないのかと不安を感じた。
その時、舞の近くにいた風牙がふと何かに反応する。
その直後、ヒュンッという小さな音が聞こえ、溜めていた力を放とうとしていた封魔の手に縄状のものが巻き付いた。
「……そこまでだ」
次いで聞こえた声に視線を向けると、フードで顔を隠した人物を見つけた。
「何だよ、これからだろ」
「焦るのもわかるが、退け。……また次だ」
そう言い、その人物は一度拘束を解くと、今度は封魔が投げ捨てた腕輪を引き寄せた。
「とにかく、早くそれを付けて戻るぞ」
「……ちっ……」
舌打ちした封魔が放られた腕輪を受け止める。
「封魔!」
「……待て!」
声を上げて神蘭と龍牙が動こうとした時、その二人目掛けて何かが降って来る。
(光の矢……?)
それらは地面に接触すると消滅したが、確かにそのような形に見えた。
(今のって、光属性だよね)
舞が知っている限り、その属性を持つのは光輝だ。
そして、その彼と同じ属性を持っているのはもう一人。
(花音先輩……?)
そう思い辺りを見回したが、その姿を見つけることは出来なかった。