1
聖波と共に中央区へ戻ってきた神蘭達は、神界本部へと来ていた。
「戻ってきたのか！？それに聖波様も 」
そこに丁度通りかかったらしい光鳳が神蘭達に気付いて近付いてくる。
「久し振りだな、光鳳。……状況は？ 」
「……正直、あまり良くはないです。魔神族へ寝返る者は後をたたないし、封魔に粛正されるのを怖れて、普通に辞めていく奴もいる。軍の士気も落ちて、悪い方向へ向かっていってるのが現状です」
そう言う光鳳は少し苛ついているようにも、疲れているようにも見えた。
「あの……、ところで封魔の様子は？ 」
「……駄目だな。すっかり総長達の言いなりというか、自我を無くした人形だよ。神子様達からの抑制もなくなってからは余計にな」
「……神子様達は封魔を道具扱いすることをよしとはしていないのか」
問い掛けた神蘭に答えた光鳳の言葉に聖波が呟く。
「というより、総長と副総長が研究員達としたことで、それを承認したのは大臣達らしいです」
「調べたのか？」
「まぁ、気になったし納得もいかなかったので……。そのせいで、もっと気になることが出来てしまいましたが」
「それに関しては、また時間がある時に聞こう。……他に動きは？」
「はい。……魔神族との戦いの現状を上層部も重くみているようで、近々神子様達も動くと」
「魔神族が相手だから、……中心になるのは天華様か」
神蘭達が口を挟めないまま、聖波と光鳳の話が進んでいく中、『神子』という単語が聞こえてくる。
それで思い出したのは一度だけ会ったことがある聖羅と聖鈴の二人だった。
2
神蘭達が軍本部についてから数日後、総長と副総長に集められた神蘭達の前には六人の少女がいた。
その中に一度だけ会ったことのある聖羅と聖鈴の姿もあることから、彼女達が神子だと予測がつく。
予想通り、彼女達が神子だと紹介され 、これから魔神族との闘いが本格化していくこと、魔神族との決戦に備えて神子達も戦いに参加していくこと。
中でも対魔神族ということで、天華という名の神子を中心にするということが伝えられた。
3
「いよいよ神子達も参戦してくるって訳か」
「……魔神族がそこまで手強い相手っていうことなのかな」
龍牙が言った後、少し不安そうに鈴麗が言う。
「確かにそうかもしれないが……、でも、神子様達っていうのはそれぞれ専門は違うが、闘神以上の力を持ってるんだろ。なら、そう心配いらないんじゃないか」
「それはそうかもしれないけど、……ねぇ、神蘭はどう思う？」
「えっ？」
不意に話を振られて、ぼんやりとしていた神蘭は我に返った。
「な、何？」
「聞いてなかったのかよ？」
白夜に言われて、神蘭は誤魔化すように苦笑いする。
「ごめん。少し考えごとしてた」
「もう…….」
「仕方ないんじゃないか。此処に戻ってきてからは、また封魔のことが気になってるんだろ」
呆れたように呟いた鈴麗に対し、フォローするように白鬼が言う。
「そうなの？」
「う、うん。まぁ……」
それだけが全てではなかったのだが、否定しないで頷く。
神子が戦いに加わるということで、戦況は変わる筈なのに、何故か今まで感じたことがないくらいの胸騒ぎを感じる。
その時、感じていた嫌な予感が当たったのは数週間後のことだった。