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第5章

1
何が起きたのかよく理解しないまま、ゆっくりと身体を起こす。
「神蘭、大丈夫?」
そこに聞こえてきた鈴麗の声。彼女が駆け寄ってくる姿と、その後ろから此方へと来る龍牙、白夜、白鬼を信じられない思いで神蘭は見た。
「四人共、どうしてここに?」
「光鳳様達から話を聞いて、追い掛けてきたのよ」
「ここには聖波って人から話を聞いてきたんだ」
鈴麗と龍牙がそう言った時、白夜と白鬼が警戒するように身構える?
その二人の視線の先を見れば、先程神蘭の上から吹っ飛ばされた獣が体勢を立て直していた。
「っと、話はここまでだな。続きはあいつを倒してからだ」
「神蘭はまだ戦える?もし無理なら……」
「……ううん。大丈夫」
そう返して、キッと獣を睨み付ける。
今までの疲れやダメージは確かに残ってはいたが、もう負ける気はしなかった。
「……早く片付けて、聖波さんの所へ戻ろう」
「「「ああ」」」
「ええ」
四人が頷いたのを確認して、神蘭は獣に向かって地を蹴った。
「はああっ!」
五人で連携して出来た隙をついて、神蘭は背後に回り込み、思いっきり剣を振るう。
「ギャアアア」
斬りつけたことで獣は痛みに声を上げ、地面に倒れこむと苦しむ様にもがきだす。
「今だ!」
それを好機と感じたのか、龍牙の声と共に倒れている獣に向かって幾つもの光弾が放たれる。
それらは全て獣へと命中し、爆発を起こす。
おさまった時には、その姿は消えてなくなっていた。
(今度こそ、やったのかな?)
先程と同じ失敗はしないように、慎重に気配を探る。
今度こそ自分達以外の気配を感じることはない。
他の四人を確認するように見て、彼等も大丈夫だと頷いたことで、神蘭は今度こそ顔を綻ばせると、薬草を採る為にその場所へと駆け寄った。
2
「ありがとうございました」
薬草を受け取った男性が頭を下げて去って行く。
それを見送った後、聖波が後ろにいた神蘭達を振り返った。
「何か言いたそうだな」
「……知ってたんですね?」
「何をだ?」
あくまでも惚ける様子の聖波に、神蘭は強い視線を向けた。
「私が頂上に着いた時、巨大な獣に襲われました。あなたは出発前、何も言わなかったけど、彼処が住処になっていたことを知ってたんですね?」
そう言った神蘭に、聖波はニヤリと笑った。
「ああ。知ってたさ」
「じゃあ、どうして教えなかったんですか?私達だって、神蘭に追い付いたと思ったら、やられそうになってて焦ったんですよ!」
鈴麗の言葉に聖波は「ふん」と鼻を鳴らした。
「あの程度に手こずったり、慌ててどうする?あの位、封魔や蒼魔達は一人で倒したぞ」
「って、あいつらも試したのか?」
「ああ。中でも封魔と蒼魔が二体とも瞬殺だったぞ」
そう言ってくくっと笑った聖波に、やはり少し引っ掛かりを覚えた。
「あんた、まさか……」
同じ様に違和感を感じたのか、龍牙が口を開いた。
「あの獣達を、彼処に住まわせたのはあんただな」
「……どうして、そう思う?」
「今、あんたが言っただろ?封魔達は一人で倒したって。……あいつらが此処に来たのが同じくらいだとしたら、そんなに都合よく獣が現れるとは思えない」
「となれば、彼処に行くよう仕向けるあんたが何かしら手を加えていると考えるのが普通だろ?」
続けて言った白夜に、聖波はふっと笑うと、自分の懐から紙のようなものを取り出し、無造作に放り投げた。
「「「「「!!」」」」」
その紙は次第に形を変えていき、神蘭達が倒した獣になる。
「そう。こいつらは、俺が作り出していた式神。……これで俺の所に来た奴等の力量を確かめていたって訳さ」
そう認めた聖波は、神蘭の方を見た。
「……お前は正直言って、実力的にやはり封魔達に及ばない。……そんな奴に闘神はつとまらないと思う」
「……」
「……だが、覚悟は見せてもらった」
そこまで言って、少し表情を和らげる。
「……いいだろう。状況も状況だ。やるだけやってみようじゃないか」
聖波の言葉に神蘭は笑みを浮かべ、鈴麗達と顔を見合わせた。
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