第5章
1
軍を一時的に抜け、一人旅立った神蘭はある村の宿に泊まっていた。
部屋の窓からは、頂上の見えないくらい高い山が見える。
光龍から貰った地図で確認すれば目的地はその山の麓のようだった。
(よし!いよいよ、明日だ。……光鳳様と光蘭様の話だと、明日会う人は簡単にはいきそうにないけど、……此処まで来たからには認めてもらうしかない!)
そう思いながら、神蘭はベッドに横になる。
まだいつもと比べると、休むには早い時間だったが、朝早くから動くつもりだった為、早く休むことにしていた。
(私がやろうとしていること、間違ってなんかいないよね?これでいいんだよね?お父さん……)
内心で呟いて、目を閉じる。
完全に目を閉じる前に、もういなくなってしまった父が笑って頷いた気がした。
次の日、神蘭が目を覚ましたのはまだ陽も昇っていない時間だった。
「すみません。こんな早い時間に」
「いや。それより、あんたみたいな若い女がこんな時間から何処に行くっていうんだい?」
軽食を用意してくれた宿の主人がそう問いかけてくる。
「えっと、彼処の山の麓に会わなきゃいけない人がいるんです」
「……それって、聖波さんかい?」
「知ってるんですか?」
「ああ。……とはいっても、彼がずっと昔に闘神をしていたということと、闘神になろうとしている者がごく偶に訪れるということくらいだがね。だけど、今の闘神達になってそんなに経っていない筈だが、もう次の世代に変わるのかい?」
「……いえ、ただ私にはどうしても助けたい人と守りたいものがあるんです。その為には、早く強くならないといけないので」
宿の主人が今の軍の状況を知らないのだろうと判断して、神蘭は自身の目的だけを告げた。
「成る程。……だが、なかなか難しい人みたいだから、頑張るんだよ」
「はい」
主人の言葉に神蘭は頷いた。
2
宿を出て数時間、神蘭は宿から見えていた山の麓に着いていた。
(えっと……)
さっと辺りを見回し、一軒の家を見つける。
(あそこだ)
その家が目的地であることを確認し、気を引き締めると近付いていく。
「すみませーん」
扉を叩いて、声を張り上げる。
そのまま少し待ってみたが、誰も出てくる気配はない。
「……いないのかな?」
来たタイミングが悪かったのかと思っていると、ふと人の気配が近付いてくる。
その方向を見れば、一人の男性が歩いてきていた。
男性の方も神蘭に気付いたのか、視線を向けてくる。
その視線は鋭いもので、少し気遅れしそうになりながら、神蘭は口を開いた。
「あの、すみません。貴方が聖波さんですか?」
「…….ああ。……そうか、お前か、光鳳が言ってたのは」
呟くように言われ、目を見開く。
(連絡しておいてくれたのかな?)
そんな事を思っている間にも、聖波はじっと神蘭を見てくる。
そして彼は小さく溜息をつくと、
「不合格」
と呟いた。
「えっ?」
「だから、不合格。お前はまだ闘神になれるような器じゃない。出直してこい」
「っ!!」
話をすることもなく、そう返され背を向けられる。
「ま、待ってください!私は!」
「……光鳳から少しは事情を聴いている。だが、覚悟の強さだけでは闘神にはなれない。相応の力を付けたら、また来い」
「……それじゃ、駄目なんです!それじゃ……」
何とか食い下がろうと声を上げたが、聖波は聞く耳持たないようで家に入っていってしまった。
軍を一時的に抜け、一人旅立った神蘭はある村の宿に泊まっていた。
部屋の窓からは、頂上の見えないくらい高い山が見える。
光龍から貰った地図で確認すれば目的地はその山の麓のようだった。
(よし!いよいよ、明日だ。……光鳳様と光蘭様の話だと、明日会う人は簡単にはいきそうにないけど、……此処まで来たからには認めてもらうしかない!)
そう思いながら、神蘭はベッドに横になる。
まだいつもと比べると、休むには早い時間だったが、朝早くから動くつもりだった為、早く休むことにしていた。
(私がやろうとしていること、間違ってなんかいないよね?これでいいんだよね?お父さん……)
内心で呟いて、目を閉じる。
完全に目を閉じる前に、もういなくなってしまった父が笑って頷いた気がした。
次の日、神蘭が目を覚ましたのはまだ陽も昇っていない時間だった。
「すみません。こんな早い時間に」
「いや。それより、あんたみたいな若い女がこんな時間から何処に行くっていうんだい?」
軽食を用意してくれた宿の主人がそう問いかけてくる。
「えっと、彼処の山の麓に会わなきゃいけない人がいるんです」
「……それって、聖波さんかい?」
「知ってるんですか?」
「ああ。……とはいっても、彼がずっと昔に闘神をしていたということと、闘神になろうとしている者がごく偶に訪れるということくらいだがね。だけど、今の闘神達になってそんなに経っていない筈だが、もう次の世代に変わるのかい?」
「……いえ、ただ私にはどうしても助けたい人と守りたいものがあるんです。その為には、早く強くならないといけないので」
宿の主人が今の軍の状況を知らないのだろうと判断して、神蘭は自身の目的だけを告げた。
「成る程。……だが、なかなか難しい人みたいだから、頑張るんだよ」
「はい」
主人の言葉に神蘭は頷いた。
2
宿を出て数時間、神蘭は宿から見えていた山の麓に着いていた。
(えっと……)
さっと辺りを見回し、一軒の家を見つける。
(あそこだ)
その家が目的地であることを確認し、気を引き締めると近付いていく。
「すみませーん」
扉を叩いて、声を張り上げる。
そのまま少し待ってみたが、誰も出てくる気配はない。
「……いないのかな?」
来たタイミングが悪かったのかと思っていると、ふと人の気配が近付いてくる。
その方向を見れば、一人の男性が歩いてきていた。
男性の方も神蘭に気付いたのか、視線を向けてくる。
その視線は鋭いもので、少し気遅れしそうになりながら、神蘭は口を開いた。
「あの、すみません。貴方が聖波さんですか?」
「…….ああ。……そうか、お前か、光鳳が言ってたのは」
呟くように言われ、目を見開く。
(連絡しておいてくれたのかな?)
そんな事を思っている間にも、聖波はじっと神蘭を見てくる。
そして彼は小さく溜息をつくと、
「不合格」
と呟いた。
「えっ?」
「だから、不合格。お前はまだ闘神になれるような器じゃない。出直してこい」
「っ!!」
話をすることもなく、そう返され背を向けられる。
「ま、待ってください!私は!」
「……光鳳から少しは事情を聴いている。だが、覚悟の強さだけでは闘神にはなれない。相応の力を付けたら、また来い」
「……それじゃ、駄目なんです!それじゃ……」
何とか食い下がろうと声を上げたが、聖波は聞く耳持たないようで家に入っていってしまった。