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第4章

1
(とにかく一度、光蘭様か光鳳様に相談してみようかな)
神麗と話してから数日後、話だけでもしてみようと神蘭は二人のいる本部へと向かっていた。
その本部が見えてきた時、前からフードを被った二人が走ってくる。
(誰だろう?)
神蘭が不思議に思っている間にも二人は神蘭の横を駆け抜けていこうとして、何を思ったのか左右から彼女の腕を掴んでくる。
「えっ……、ちょっ……」
神蘭はそれに声を上げたが、腕は掴まれたままで、来たばかりの道を戻るしかなくなってしまった。
「「……ごめんなさい」」
少し離れた所で神蘭は漸く解放された後、二人の少女に頭を下げられていた。
「えっと……」
二人の少女は顔こそ似ていないが服装は同じようなものを着ていて、上層部の者なのか、身に着けているものは全て質の良さそうなものに見えた。
「あなた達は一体……?」
「私は聖羅。こっちは聖鈴よ」
名乗った一人にもう一人が笑みを浮かべて、頭を下げた。
「私は神蘭です。あの……お二人は何処に行こうとしていたんですか?」
名前を名乗ってもらった以上、自分も名乗らなければと神蘭は口を開いたが、何となく二人が只者ではない気がして、つい敬語になってしまった。
2
(本当にこの二人って何者なんだろう?)
あれから市場へと連れてこられ、何やら二人でも物色している姿を見ながら、神蘭はそんなことを思っていた。
その視線の先でも二人は楽しそうに品物を選んでいて、その様子を見ながら神蘭は溜め息をついた。
少しして買う物が決まったのか、聖羅と聖鈴が近付いてくる。
「もういいんですか?」
「ええ」
「それにそろそろタイムアップみたいだしね」
「?」
聖羅が言ったことに神蘭が首を傾げた時、「「聖羅様!聖鈴様!」」と叫ぶ男女の声が聞こえてきた。
その声に視線を向けると、慌てた様子で星夜と楓が此方へと走ってきていた。
「見つけましたよ!聖羅様!聖鈴様!」
「お願いですから、勝手に出歩かないでください!」
近くに来てからすぐにそう声を上げた二人に、神蘭は思わず今まで一緒にいた二人の少女を見た。
「えへへ」
「ごめんなさいね」
「えっと……」
バツの悪そうな聖羅達から楓達に視線を移す。
「このお二人は神界の神子だ」
「普通ならこんな風に出歩いていい方ではないんですけどね」
楓が苦笑いしながら、神子と言われた二人を見る。
「とにかく、そろそろ戻ってもらいますよ」
「わかってるって」
星夜に言われ苦笑した聖羅が買ったばかりの物を差し出してきた。
「えっ?」
「本当はもう一ヶ所行くところがあったんだけど、確かに戻らないといけないみたいだしね。悪いけど、此れを届けてくれる?」
「それはいいですけど、何処に?」
「神麗さんって人なんだけど、知ってる?」
「はい」
「よかった。……それなら、此れを渡してほしいんだけど」
「あ、ついでに伝言もお願い。……例の件、宜しくお願いしますってね」
そう言うと、聖羅と聖鈴は楓と星夜に連れられていってしまった。

「そう……、神子二人にあったのね」
聖羅、聖鈴から預かった物を持ち神蘭が神麗の元を訪れると、彼女はそう呟いた。
「あの、もしかしてあの二人が?」
「……ええ。あの二人がこの前言った私の依頼者よ。あの二人も上層部にいるんだけど、……あんなやり方には反対みたいでね。これ以上手を加えられて、完全に自我をなくしてしまう前にって頼まれていたんだけど」
「やっぱり、難しいですか?」
「今の状況ではね」
神蘭の問いに神麗は難しい表情をしてそう返してきた。
「前も言ってたみたいに、闘神がいないと……ですか?……あのそれなら過去の闘神じゃ、駄目なんですか?光鳳様とか……」
「彼等は無理よ。……彼等は自身の意思で退位したり、戦闘の怪我が元でやめた者達、再びその地位に就くことはできないわ。今みたいに単なる指導役や、修行する者の師匠にはなれるけれどね」
「…………」
神麗の言葉に、神蘭は少し考えこんだ。
「まぁ、でも経験があるのは本当のことだから、話を聞いてみるだけでもいいかもね」
「……そうですね。そうしてみます」
神麗にはそう返したが、神蘭には既にある決意が固まりつつあった。
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